一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。

秀典

13 俺達に恋の相談をされても、成功する未来が見えない。

 一週間が経ち、俺達が居なくなる事はクラスの皆に知らされている。 だからと言って殆どの皆はあまり悲しまない。 それはそうだろう、たった一週間でそこまで仲良くなった奴はあんまりいない。 多少悲しんでくれたのはれんと五人の不良ぐらいだったが、その恋が神妙そうにやって来て、俺の机をバンと叩いた。


「アツシ、話があるの!! ちょっと付き合って頂戴!!」


 放課後、俺は恋に屋上に続く階段へと呼び出された、当然屋上は入れない様に閉められている。 勝手に生徒達が入る事は出来ない様になっている。 俺が呼び出されたのだが、横にはストリーも居る、先ほどの付き合ってに反応したのだろう。 まあ俺と恋がそうなる事はまず無い。 恋のタイプは知っている、顔が良い男が好きで、俺なんて眼中に無い。


「アツシ、最近メイ君と仲が良いよね? お願いがあるの!! メイ君と私のこいを実らせてくれないかな!! 私メイ君と付き合いたいの!!」


 これはあれか? 噂に聞く恋愛の相談ってやつか? だが彼奴、別の世界の女に会いに行くって言ってたし、れんとは付き合わないと思うんだけど?


「うん無理、あいつ好きな奴いるし。 それで彼奴も引っ越すらしいぞ。」


「そんなの関係ないわ!! 時間が無いならその日までに落とせば良いだけじゃないの!! 私、そういう燃えるこいがしたいの!!」


 積極的だなぁ、しかし女の為に世界まで捨てる奴を、どうやって説得しろってんだ? いや、案外こっちで彼女が出来るとしたら考えも替わるんだろうか?


「一応聞いといてやるけど、たぶん無理じゃ無いかな? たった二週間ぐらいで何とか出来るとは思えないんだけどな。」


 そんな俺の答えを聞くと、恋はサッとストリーを見つめだす。


「ストリーさんなら分かりますよね? お願いします、私に力を貸してください!!」


「う・・・・・わ、分かった、その頼みは受けよう。 私も女だ、お前の気持ちは分からなくもない。 安心して私に任せるが良い!!」


 あまりこういう話は得意じゃないと思ったのだが、頼られたのが嬉しかったのか? 確か向うだと俺以外に付き合った事も無かったはずだが?


「本当ですね!! 私ストリーさんに相談して良かったです。 じゃあ二人で方法を考えましょう、私達はちょっと女同士の相談があるので、アツシさんは帰って良いですよ。」


 こっちの常識が皆無なストリーに任せたら、絶対におかしな事になる。 ここは俺も付いて行く方がいいだろう。 ストリーだけじゃ心配なので、とても心配なのでついて行く事にした。 


「いや待て、俺も行くから!! 俺も付き合うから!!」


 俺達が向かったのは小さな喫茶店だった。 実は此処、れんの実家だったりする。 カウンターに居るマスターは恋のパパさんだ。 にこやかな笑顔を浮かべ、暇そうにコップとかを拭いている。 此処で話しをするなら当然パパさんにも話を聞かれるだろうが、恋はパパさんに話を聞かれても気にしない様だ。 俺達は恋の案内で一番奥のテーブル席に座り、恋がカウンターに居るパパさんに注文をした。


「パパ、パフェ2つお願い!! それとアツシにコーヒーを一つね。」


 パパさんが頷き、それを作り始める。 それを見て満足した恋が話しを始めた。


「あのねストリーさん、私メイ君の事本気なの。 だから何か作戦を考えて欲しいんだけど。 何か良い方法とかあるかしら?」


「方法、方法か、だったら一つあるぞ。 私達の国での最終手段がな。 ただしあまり良い方お方とは言えないのだが。」


 最終手段んんん? どう考えても嫌な予感しかしない。 だが一応聞いてみようと俺は耳を傾ける。


「ふ~ん、どんな方法なの?」


「まず相手を呼び出して。」


「うん、呼び出すのね?」


「うむ、それから相手の男を縛り上げる。」


 そこでもうアウトだろ!! しかしながらストリーの話はまだ続く、もうちょっとだけ聞いてみよう。


「? 縛り上げるのね?」


「そしたら動けなくなった男を押し倒して、子供でも孕んでしまえばいい。 もう相手は逃げられはしない。」


「なる程、その手は使えるわね!!」


「おおおい、何納得してるんだよ。 こっちの国でやったら完全に犯罪だからな。 良いか絶対駄目だからな!!」


 普通に犯罪だ、女がやったとしても強姦になるぞ。 まあ相手が納得し・・・・・違う、俺達未成年だから、そもそもそんな事をやったら駄目なのだよ。 まあ俺はあれだ、向うの法律じゃオッケーだし? 子供を作ったとしても何の問題も無いんだけどな。


 そんな話をしていると、テーブルの上にガンっとコーヒーが置かれる。 そんな置かれ方をしたので机の上はビチャビチャになってる。 俺の股間にも結構飛んできたんだけど・・・・・


「お客さん? あまり恋ちゃんに変な事教えないでくださいね?」


 パパさんは、スッ―と目を細めて結構怖い。 顔を見る限りはかなり怒っている、まあ娘がそんな話を聞かされていたら、そりゃあ怒るわな。


「恋ちゃんは純真ですから、お友達さんは変な事を教えたら駄目ですよ? ”分かりましたよね?”」


「今のは冗談ですから、本気にしないでください!!」


 パパさんは俺の方に顔を向けている、他の二人にはその顔は見えないが、見たらきっとビックリするだろう。 あの不良達よりよっぽど怖いぞ。


「もうパパったら、友達と話してるんだから邪魔しないでよ!! 向う行ってて!!」


「分かってるよー、恋ちゃん。 じゃあごゆっくりどうぞ。」


 恋のパパはニッコリと微笑み、パフェを二つ置いて、カウンターに引っ込んで行く。 ただ俺を見る目は怖い、恋に近づく男は許せないのか、彼氏が出来たら邪魔しそうな雰囲気だ。 もしかしたら前の彼氏達は、このパパさんにやられたのかもしれない。


 俺は結構零れたコーヒーを口に運ぶ。 美味い!! とか思えたらパパさんの事を見直せたかもしれないのだが、これはとてつもなく苦い!! 俺の口の中ではそのコーヒーの苦みが溢れている。 例えるならコーヒー豆をそのまま噛んでる様な味だ!! このパパさんは、男友達でも許せないのか? 恋にバレない様に口からコーヒーをカップに戻し、もう少し話を続けて行った。



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