一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。

秀典

11 未成年が何処か遠くの国で結婚出来たとしたら、それってこの国でどう判断されるんだろう?

 次の日、俺とストリーは普通に学校に通っている。 1-Cの教室の中、俺の机というか横にあるストリーの周りに、昨日の不良達が集まって来ていた。


 復讐にでも来たんだろうか? 傷も治ってるのにめんどくさい事だ。 ストリーが負ける訳はないんだが、一応何時でも行動できる様にある程度気を張っておく。 教室で暴れる訳にも行かないのだが、それも相手の行動しだいだろう。


 俺達が教室に入ると、リーダー格の一人が合図を出した。


「来たぞ!!」


 相手はやる気満々だ、かなり気合の入った顔をして此方を見つめている。 そのままゆっくり近づいて行くと、男達が大声で挨拶をし始めた。 


「お早う御座います姉さん!! 俺達、姉さんの強さに惚れました、是非俺達を舎弟にしてくれませんか!!」


 あんた達の方が年上だろ? っと突っ込みたい所だが、俺の事は完全に無視して、ストリーの事を姉さんと慕う不良達。 ビッシッと直角に腰が曲げられ、お辞儀をしている。 危険が無いのは分かったんだが、無いなら無いでこの状態は周りに如何見えてるのだろうか? 絶対不良の頭だとか思われてるんじゃないだろうか。 ちょっと注意してやろう。


「おおい、ちょっとこんな所でおかしな事を話さないでください。 ストリーが周りから変な目で見られたら如何するんですか。 話があるのなら放課後にしてくれませんか。」


「ああん、何だおめぇは? ・・・・・ああ昨日の奴か、俺達と姉さんとの鉄の絆作りをじゃますんじゃねぇよ!! お前ちょっと来い、こっちで気合入れてやる!!」


 その不良っぽい男の一人は、俺の胸倉に手を掴んだ瞬間、ストリーの拳がその男に炸裂した。 一応昨日よりは手加減をしているらしい、何処にも怪我も無いし。


「な、何するんですか姉さん、俺達の邪魔をしようって奴にちょっと気合入れてやろうと下だけじゃないですかぁ。 そんなに怒らないでくださいよぉ。」


 この男達と何時絆が出来たのだろう? あのお辞儀したらもう絆って物が出来るんだろうか?
それとも昨日殴ったから? しかし今時こんな不良がいるなんて珍しいな、もう絶滅したものだと思っていたんだけど。


「貴様こそ私の邪魔をしているぞ。 その男、アツシは私の夫だ、夫婦の会話の邪魔をするな!!」


「「「「「ええええええええええええええええええええ!!」」」」」


 不良達だけじゃなくクラスに居た全員が驚いている。 これはもう隠し通せないかもしれない。 う~む、どうしよこれ。 そして先ほどの不良の一人が床に手を突いてDOGEZAされている。


「すいませんっした兄貴!! 知らなかった事とはいえ、姉さんの男に手を出すとは、ほんとすいませんっした!!」


「いや、もういいから!! マジでもういいから!! もう帰って、お願い!!」


「うっす、失礼しました!!」


 今度は俺が兄貴になってしまった、ストリーの男だからか? 俺の言葉に不良達が教室から去って行く。 しかし代わりにクラスの皆が集まって来る。 怖がられないのは良かったけど、俺達の関係に質問が飛んで来る。


「アツシさん、本当にストリーさんと付き合ってるんですか? 何時から付き合ってるんですか? 出会いは、もうキスしたんですか? それともまさか・・・・・」


「ストリーさんに付き合ってる人が居たなんて!! 俺ショックです、今からでも俺に乗り換えてください、幸せにしますんで!!」


「お姉さま、そんな男なんて放っておいて、女同士の絶え間ない世界へいきましょう!!」


「うわ~んストリーさんが汚される、あんなのに汚されるよ~!!」


 もう正直五月蠅いし、何だか妙な奴も混じっているが、兎に角まず騒ぎを納めないと。


「いや、俺達はそんな関係じゃ・・・・・」


「そうだ、私達はそんな関係じゃない。 私達はちゃんとした夫婦だ、私達の国でもう結婚もしている。」


「「「「「ええええええええええええええええええええええ!!」」」」」


 先ほどより大きな怒号混じりの声が上がった。 だが此処で助けが入った、担任の咲子ちゃんが授業をする為にやって来た。


「静かに!! もう授業を開始しますので、皆さん席についてください!!」


 渋々皆は席へと着くと、咲子ちゃんの授業が始まった。 何だか授業中もチラチラ見られてる気がする。 たぶん気のせいじゃないだろうが。


 そんな授業も終わって行き、俺達は騒がれない様に授業が始まるまで逃げだした。 しかしそれをしても噂は学校中に広がって行き。 今日の最後の授業が終わった時に、職員室に呼び出されてしまった。


 職員室の中には結構な教師達が集まっている、取り合えず担任の咲子ちゃんが、俺達の事を聞いて来た。


「はぁ、貴方達の噂は聞いているけど、これは何処まで本当なのかしら? 同棲しているとか子供が居るとか、結婚なんて馬鹿な噂まであるけど。 本当の所はどうなのかしら?」


 さて何処まで喋ろうか? その内辞める事も伝えなきゃいけないし、いっそ本当の事を言ってやろうか? 辞めさせられるならそれでも良いし、どっちでも問題はないんだよなぁ。


「実は俺達、もう結婚してるんです。 外国で結婚したからこっちの年齢とかは関係なくて、本当に夫婦なんですよ。」


「・・・・・待ってよ、待てね? つまり外国で結婚したから二人はもう夫婦になってると? えっ? それって16歳でも結婚出来ちゃう国なの? その国で本当に結婚しているの?」


「あ、はい。 親にももう会わせましたし、向うの親にも会いました。 もう完全に結婚してますね。」


「ま、まさかもう子供もいるとか?!」


「いや、そこまではまだやってないです。 まあその内作らないといけない状態なんですけれど。」


「こ、国際結婚・・・・・で、でも日本じゃ結婚出来る歳じゃないし、いや、でも向うで結婚してたら出来るのかしら? 皆さん誰か知ってる人はいませんですか? 私の知識じゃサッパリ分からないんですけど。  後で親にも確認を取らせてもらいますけど、その様子だと本当なんでしょうね・・・・・」


 俺達の話を聞いていた他の教師達も首を横に振っている。 英語の教師ジョナサンさんも結婚はしていないから知らない様だ。


 一応先生がネットで調べ、少しだけ分かった。 結婚した国の法律で決まるらしいのだが、日本の未成年がどうとかは良く分からなかった。 もしかしたらそんな事例はないのかもしれない。 こっちで言う所の、未成年が何処か法律が無い部族の女と結婚しましたって感じだろうか。 勿論書類なんて物は無いし、証拠を出せって言われても困る。


「あ、それと俺達、後20日ぐらいしたら向うで暮らすんで、出来れば大目に見てくれませんか? もうちょっとこっちの空気を感じときたいって思ってるんで。」


「・・・・・それは、学校をやめて向うに引っ越すって事で良いのよね? あなた達本当に後悔しないのね?」


「後悔なんてしてないですよ、俺達はもう夫婦になってるんですから。」


「うむ、今更別れるなんて事はしないぞ、もう私達は一つと言っていいからな。」


「・・・・・」


 全員が沈黙している、たぶん日本で俺くらいだろう、未成年で結婚した奴なんて。


「はぁ、もう良いわ、でも学校の中で不純な事はしないで頂戴ね。 他の先生方もそれで宜しいでしょうか?」


 他の先生達は答えなかったが、この学校の校長先生がそれに答えた。


「う~む、結婚するしないではなく、もう結婚していて、学校をやめるとも決まってるのなら、他に如何言った物か分かりませんな。 退学だと言った所で意味もないし、外国に行く前の思い出作りにしてもらうしかないでしょうな。 先ほども言われた様に、校内では不純な事はしないようにお願いします。 勉学に勤しむ他の生徒に影響したら困りますからな。」


「はい。」「了解しました教官殿。」




 俺達はそれに同意し、学校生活が続いて行く。 取り合えず俺達の事は、学校内で公然の秘密となった。



「一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く