一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
31 王と成る者 ブリガンテの動乱編(END)
ジュリアンはアツシと別れ、これからの事を考えていた。
やはり弟子になっても無駄だった。 例えそれでマリーヌ様に勝てたとしても、王国との力の差は圧倒的だ。 友好国とはいえこれ程力の差があるとなると言いなりや、下手をすると奴隷の様に扱われてしまいかねない。 そうなれば俺が王になる意味が無い。
あれ以上の力を求める為には、やはり此方も人の体を捨てるしかないか? だが如何する、この国にはその様な技術は無いし、王国側に頼むのも無理がある。 向う側の誰かを取り込む・・・・・いや無理だ、殆ど人の行き来がないから行った者は全員チェックされる。 スパイを送ろうにもこれでは手が出せないではないか。
待て、ではこちら側は如何だ? それ程の力の差を見せられて、マリーヌ様が何も手を打っていない筈はないだろう。
「父上ならあるいは? 行ってみる価値はあるか・・・・・」
あわよくばと期待を込めて城へと向かった。
父上は城の自室で作業をしている。 俺の事には気づいて居ない様だ、軽く世間話でもするように話を切り出す。
「父上、お仕事は順調で御座いますか?」
「おおジュリアンか、悪いのだが今は邪魔をしないでくれ。 この仕事を急いで終わらせなければならんのだよ。」
「急ぎではありません、むしろ今は暇なのですよ。 ですから少しお手伝いをしようと思いましてね、如何でしょう? 私の手は要りませんか?」
「いや、それは助かるが、この書類は機密扱いでな。 ふむぅ、だがお前ならば信用しても良いだろう。 まずはこの書類に目を通し、おかしなところがあれば報告を頼む。」
「分かりました父上、しかし王国の力というものは凄まじいものがありますね、王位戦でその力を見せたアツシという男、その男はマリーヌ様と互角だったようですが、どうやらその男すらもただの雑兵だということですよ?」
「な、何!! ワシも見ておったが、あれ程の手練れがただの雑兵だというのか!! その話は確かなんだろうな?!」
「実は先ほど会う機会がありまして、アツシという男に会って来ました。 アツシの妻をストリーと言いますが、その女と手合わせしたのです。 私は当初侮っておりました、ですがその女の力は本物で、もしかしたらマリーヌ様とも引けを取らないかもしれません。 それ程の者達がただの雑兵ならば、ブリガンテとは圧倒的な力の差があると思われます。」
「・・・・・やはりマリーヌ様の行いは正解だった様だ、ジュリアン、まずは扉を閉めてくれ。 それと、これから話す事は内密で頼むぞ。」
「はい父上、勿論機密を言いふらしたりいたしません。」
言われた通りに扉を閉めて、その話というものを聞いてみた。 少しばかりの期待を抱いて。
「うむ・・・・・実はな、ワシは知らなかったのだが、このブリガンテでも密かにキメラの研究を行っていたらしいのだ。 病院の地下を改装し、その研究を進めていたらしいのだが、それがちと不味い事になってな。 王国の者にバレて怒らせてしまったのだよ。」
「何と!!」
これほど容易く情報が入るとは、笑いが堪えられないではないか・・・・・
「それだけならばまだ良かったのだが、地下に居た実験体が暴走してな、施設の大半を壊され無くなってしまったのだよ。」
「まさかそれで諦める訳ではありませんよね? 王国に対抗する為にはどうしても必要な力ですよ。 少し危険ではありますが、城にでも研究施設を作り続けさせるべきです。 城につくりあさえすれば滅多な事ではバレたりしないでしょう!!」
「うむ、外の者にはバレぬかもしれんが、内の者にバレるかもしれん。 もしもマリーヌ様が人体実験までしていたとバレて見ろ、この政権がどうなるか分からないぞ?」
「人体実験までしていたのですか!! それは・・・・・」
とても都合が良いじゃないか。
「お前の懸念は分からんでもない、もう一度言っておくが、この話は外へ漏らすなよ? もしバラしたら、お前とてどうなるか分からぬからな。」
「・・・・・はい、父上、それは分かっておりますが、私に良い考えがあります。 作れる場所が無いのであれば、我が屋敷を使ってもらいましょう。 それならば誰が居るのかも把握出来ますし、見つかったとしてもそう広がる事もありませんよ。」
「し、しかしなジュリアン、屋敷にそんな物を作れば妻が怯えるではないか。 それに、悲鳴が響く中で眠りたくはないぞ?」
「別に屋敷の中でなくても良いのです。 庭の一部に地下室でも作れば良いではありませんか。 それならば叫び声も聞こえないでしょう。 それで父上、この計画私に任せては頂けませんか? まだ若輩ながら、私もこの国の役に立ちたいのです!!」
「うむ、お前の気持ちは分かったが、流石にワシの独断だけで決められる話ではない。 マリーヌ様と、妻の意見も聞かなければな・・・・・」
父上が熱心に説得をされ、俺はこの計画に加担する事が出来た。 流石に全てを任されるとは行かなかったが、その一旦を担い、力を得る一歩を踏み出した。
フフフ・・・・・この研究が完成する時、俺は王へと君臨するだろう。 ブリガンテが王国を超える日は近いぞ。
ジュリアンの計画はそう上手く行かなかった。 キメラを作り出すのに七年、そしてキメラ化を成功するのに役四年を要した。 その後、彼はマリーヌ王を倒し、王としての訓練を受ける事になる。 民からは慕われ、魔物の数を減らした善行なる王と呼ばれて行く事になった。
やはり弟子になっても無駄だった。 例えそれでマリーヌ様に勝てたとしても、王国との力の差は圧倒的だ。 友好国とはいえこれ程力の差があるとなると言いなりや、下手をすると奴隷の様に扱われてしまいかねない。 そうなれば俺が王になる意味が無い。
あれ以上の力を求める為には、やはり此方も人の体を捨てるしかないか? だが如何する、この国にはその様な技術は無いし、王国側に頼むのも無理がある。 向う側の誰かを取り込む・・・・・いや無理だ、殆ど人の行き来がないから行った者は全員チェックされる。 スパイを送ろうにもこれでは手が出せないではないか。
待て、ではこちら側は如何だ? それ程の力の差を見せられて、マリーヌ様が何も手を打っていない筈はないだろう。
「父上ならあるいは? 行ってみる価値はあるか・・・・・」
あわよくばと期待を込めて城へと向かった。
父上は城の自室で作業をしている。 俺の事には気づいて居ない様だ、軽く世間話でもするように話を切り出す。
「父上、お仕事は順調で御座いますか?」
「おおジュリアンか、悪いのだが今は邪魔をしないでくれ。 この仕事を急いで終わらせなければならんのだよ。」
「急ぎではありません、むしろ今は暇なのですよ。 ですから少しお手伝いをしようと思いましてね、如何でしょう? 私の手は要りませんか?」
「いや、それは助かるが、この書類は機密扱いでな。 ふむぅ、だがお前ならば信用しても良いだろう。 まずはこの書類に目を通し、おかしなところがあれば報告を頼む。」
「分かりました父上、しかし王国の力というものは凄まじいものがありますね、王位戦でその力を見せたアツシという男、その男はマリーヌ様と互角だったようですが、どうやらその男すらもただの雑兵だということですよ?」
「な、何!! ワシも見ておったが、あれ程の手練れがただの雑兵だというのか!! その話は確かなんだろうな?!」
「実は先ほど会う機会がありまして、アツシという男に会って来ました。 アツシの妻をストリーと言いますが、その女と手合わせしたのです。 私は当初侮っておりました、ですがその女の力は本物で、もしかしたらマリーヌ様とも引けを取らないかもしれません。 それ程の者達がただの雑兵ならば、ブリガンテとは圧倒的な力の差があると思われます。」
「・・・・・やはりマリーヌ様の行いは正解だった様だ、ジュリアン、まずは扉を閉めてくれ。 それと、これから話す事は内密で頼むぞ。」
「はい父上、勿論機密を言いふらしたりいたしません。」
言われた通りに扉を閉めて、その話というものを聞いてみた。 少しばかりの期待を抱いて。
「うむ・・・・・実はな、ワシは知らなかったのだが、このブリガンテでも密かにキメラの研究を行っていたらしいのだ。 病院の地下を改装し、その研究を進めていたらしいのだが、それがちと不味い事になってな。 王国の者にバレて怒らせてしまったのだよ。」
「何と!!」
これほど容易く情報が入るとは、笑いが堪えられないではないか・・・・・
「それだけならばまだ良かったのだが、地下に居た実験体が暴走してな、施設の大半を壊され無くなってしまったのだよ。」
「まさかそれで諦める訳ではありませんよね? 王国に対抗する為にはどうしても必要な力ですよ。 少し危険ではありますが、城にでも研究施設を作り続けさせるべきです。 城につくりあさえすれば滅多な事ではバレたりしないでしょう!!」
「うむ、外の者にはバレぬかもしれんが、内の者にバレるかもしれん。 もしもマリーヌ様が人体実験までしていたとバレて見ろ、この政権がどうなるか分からないぞ?」
「人体実験までしていたのですか!! それは・・・・・」
とても都合が良いじゃないか。
「お前の懸念は分からんでもない、もう一度言っておくが、この話は外へ漏らすなよ? もしバラしたら、お前とてどうなるか分からぬからな。」
「・・・・・はい、父上、それは分かっておりますが、私に良い考えがあります。 作れる場所が無いのであれば、我が屋敷を使ってもらいましょう。 それならば誰が居るのかも把握出来ますし、見つかったとしてもそう広がる事もありませんよ。」
「し、しかしなジュリアン、屋敷にそんな物を作れば妻が怯えるではないか。 それに、悲鳴が響く中で眠りたくはないぞ?」
「別に屋敷の中でなくても良いのです。 庭の一部に地下室でも作れば良いではありませんか。 それならば叫び声も聞こえないでしょう。 それで父上、この計画私に任せては頂けませんか? まだ若輩ながら、私もこの国の役に立ちたいのです!!」
「うむ、お前の気持ちは分かったが、流石にワシの独断だけで決められる話ではない。 マリーヌ様と、妻の意見も聞かなければな・・・・・」
父上が熱心に説得をされ、俺はこの計画に加担する事が出来た。 流石に全てを任されるとは行かなかったが、その一旦を担い、力を得る一歩を踏み出した。
フフフ・・・・・この研究が完成する時、俺は王へと君臨するだろう。 ブリガンテが王国を超える日は近いぞ。
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