一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
29 その先にあるものは?
土竜を倒し、奥へと進もうとしたいのだが…………
「イバス、この杖どうしてくれるのよ。当然弁償してくれるんでしょうね? こんな黒焦げにしたからには、もう少しいい杖を買って貰わないとねぇ」
「いやいや、新人兵士に何期待してるんだ。まだ僕は給料も貰っていないんだから…………お願いします勘弁してください」
僕は、アツシと雑談していた時に、教えられた物を使ってみる事にした。
地面に膝を突き、両手で地面に手をつけ、頭を下に下げる。
何とも変わったポーズ、名を土下座と言うらしい。
この珍妙な格好は、相手の怒りを和らげる効果があるとアツシに聞いている。
「ふん、何をしているのか知らないけど、弁償はして貰うわ。あんまり高い物は勘弁してあげるけど、同じ以上の物は買って貰うわよ。変な物を買わない様に私も付いて行くから、次の休みの日は空けておきなさい」
「アスメライちゃん、ちょっと待って、それってデートじゃないかしら? 二人っきりで行くのは駄目よね?」
「ち、違うわよ、デートじゃないし、お姉ちゃんも……一緒に来たら良いじゃないの」
「ええ、勿論一緒に行くわ。例え妹とはいえ、イバスさんと二人っきりなんて許さないからね」
「私も行きます、お二人に先を越される訳にはいきません。私はイバス様と添い遂げるのですから!」
バチバチと、女達の火花が見える気がする。
こんな中で僕一人なんて、一時間も耐えきれないぞ。
「…………アツシも来てくれるよな? 僕の援護が有ったおかげで勝てただろ。頼むよ、一緒に来てくれ。あんな中にずっと居たら僕の胃がどうにかなりそうなんだ!」
「残念だが、俺もその日は用が有ってな。ストリーとの約束をすっぽかしたら、俺の方が死ねるんだ。諦めて四人で楽しんで来い」
楽しむって? このギスギス感をか?
何でこう唐突にモテ期が来たんだろう……嬉しい感情より、得物にされた兎の気分だ。
本当に刺されるんじゃないかと、ちょっとした恐怖があるぞ。
これもアツシが刺されるなんて言うから。
…………いや、よそう。
過ぎた事はもういい、今後の対応を考えないと。
「そ、その事は後にしよう。今は任務中だし、さあ奥に進んでみよう…………」
僕は先端が焼けた杖をアスメライに拾い渡し、土竜を踏み進み洞窟の奥へと進む。
この大きな土竜があるためか、光が入らず、この先はかなり暗くなっている。
この土竜、もし逃げる様な事になったら、凄く邪魔になりそうだ。
本当はもっと先に逃げたいが、先に処理した方が良いかもしれない。
「この土竜、先になんとかしよう。いちいち登っていたら、大変だよ」
「まあそうだな。何が有るか分からないし、逃げ道は欲しいよな。この腕でも切り落とせば通れるんじゃないか?」
女性三人が言い争ってる中、僕達二人は、頑張って土竜の腕を切り落とし、人が一人通れるぐらいの道を確保した。
腕が有った所の断面が結構グロイけど、逃げ遅れて死ぬより良いだろう。
アスメライが魔法で洞窟を光らせると、パッっと周囲が明るくなった。
もし敵が居たのなら、何かあったかと警戒するだろう。
だからと言って、暗い中で戦うよりは随分とマシだ。
敵の攻撃が見えなければ、躱しようがないからだ。
「あの、三人とも、喧嘩してないでそろそろ行きましょうか…………」
「ふん、分かってるわよ」
「私達、喧嘩なんてしていませんよ? さあ行きましょうかイバスさん」
「イバス様、どうかされました? 顔色が悪いですよ? そうだわ、私が手当てしてあげましょうか?」
「いや、大丈夫です。特に悪い所はないんで」
さっきまで言い争っていたのが嘘の様だ。
…………女性って怖い。
明るくなった洞窟を進んで行くと、少しずつ地下へと降りて行っている気がする。
真っ直ぐと伸びた道には、まだ敵の姿はない。
「心配しすぎだったか? 敵も居ないし平和なもんだ。ここから敵が来てるなら、この洞窟を崩してしまえば良いんじゃないか?」
「まだ決まった訳じゃないし、この先がどうなってるのか見ときたいんだよね。もし行き止まりだったなら、他の場所かもしれないだろ?」
「お前本当は、後ろの女達から逃げたいだけなんじゃないだろうな? 仕事してれば考えなくても済むとか思ってんだろ? 現実逃避しても無駄だぞ。その時はドンドン迫って来ているんだからな」
「ううう、だって、僕にあれをどうしろっていうんだ。バチバチ火花が散ってるじゃないか。今はそっとしておいた方が良いんだ」
「分かった分かった、もう良いよ。ここの女の恐ろしさは、嫌という程理解している。俺も何度酷い目に合った事か…………」
「エルメスさん一人だったら、そこそこ嬉しかったんだけど、これはちょっとキツイ。今はそんな事は後回しにして、あの光の先へ向かおうよ!」
「お、出口か? まあゆっくり行こうぜ。今は平和な時間をかみしめようじゃないか」
「平和、平和かぁ…………そうだな、一応平和だな。敵も居ないし」
今は前だけ向いて歩きたい。
僕が気付いていないと思っているのか、後ろでは物凄い顔をして睨み合っている。
何で知っているかというと、気になって鏡越しにちょっと見てみたからだ。
「おし、着いたぞ。外は…………」
う、日光が眩しい。
そう思ったが、此処には日光なんて見当たらなかった。
物凄く広い地下の空間、そこの上の部分に出た僕達は、その光景に唖然とした。
崖の下には大小様々なキメラ達が入り乱れる、キメラのパラダイスだったのだ。
そのサイズはひたすら大きく、それは昔いたと言われている、恐竜というもののサイズだろう。
それが十匹、ニ十匹、もしかしたらもっといるかもしれない。
僕達はどう考えても、下のキメラ達と戦えるレベルではない。
直ぐに後を向き、脱兎のごとく逃げ出した。
「三人共逃げるよ、こんな所に居たら死ねる。直ぐ王国に帰るよ!」
「はぁ? 何言ってるの、ちょっと退きなさい、私が見て来るわ」
僕の忠告も聞かず、アスメライが先に進んで行く。
「あんまり行かない方が良いと思うけど…………」
「俺もそう思う…………まあ見たいのなら止めないが、刺激したら駄目だぞ」
「何を言ってるのか分かりませんが、イバス様、私達が見てまいりますわ。少々お待ちください」
三人がその光景を見ると、僕達の様に走り、逃げて来る。
「な、何ですかあれは。あんな広場があるなんて困ったわ。イバスさん、まずは国に報告しましょう。この洞窟を崩しても、何時か出て来るかもしれません。兎に角国に戻りましょう!」
「あんなの如何にもならないわよ! 早く逃げましょう、こんな所には居られないわ!」
「………………」
レーレさんは、獣の本能なのか体を震わせている。
相手の力に恐怖しているのだろう。
僕達は無言のままに、王国へと帰った。
「イバス、この杖どうしてくれるのよ。当然弁償してくれるんでしょうね? こんな黒焦げにしたからには、もう少しいい杖を買って貰わないとねぇ」
「いやいや、新人兵士に何期待してるんだ。まだ僕は給料も貰っていないんだから…………お願いします勘弁してください」
僕は、アツシと雑談していた時に、教えられた物を使ってみる事にした。
地面に膝を突き、両手で地面に手をつけ、頭を下に下げる。
何とも変わったポーズ、名を土下座と言うらしい。
この珍妙な格好は、相手の怒りを和らげる効果があるとアツシに聞いている。
「ふん、何をしているのか知らないけど、弁償はして貰うわ。あんまり高い物は勘弁してあげるけど、同じ以上の物は買って貰うわよ。変な物を買わない様に私も付いて行くから、次の休みの日は空けておきなさい」
「アスメライちゃん、ちょっと待って、それってデートじゃないかしら? 二人っきりで行くのは駄目よね?」
「ち、違うわよ、デートじゃないし、お姉ちゃんも……一緒に来たら良いじゃないの」
「ええ、勿論一緒に行くわ。例え妹とはいえ、イバスさんと二人っきりなんて許さないからね」
「私も行きます、お二人に先を越される訳にはいきません。私はイバス様と添い遂げるのですから!」
バチバチと、女達の火花が見える気がする。
こんな中で僕一人なんて、一時間も耐えきれないぞ。
「…………アツシも来てくれるよな? 僕の援護が有ったおかげで勝てただろ。頼むよ、一緒に来てくれ。あんな中にずっと居たら僕の胃がどうにかなりそうなんだ!」
「残念だが、俺もその日は用が有ってな。ストリーとの約束をすっぽかしたら、俺の方が死ねるんだ。諦めて四人で楽しんで来い」
楽しむって? このギスギス感をか?
何でこう唐突にモテ期が来たんだろう……嬉しい感情より、得物にされた兎の気分だ。
本当に刺されるんじゃないかと、ちょっとした恐怖があるぞ。
これもアツシが刺されるなんて言うから。
…………いや、よそう。
過ぎた事はもういい、今後の対応を考えないと。
「そ、その事は後にしよう。今は任務中だし、さあ奥に進んでみよう…………」
僕は先端が焼けた杖をアスメライに拾い渡し、土竜を踏み進み洞窟の奥へと進む。
この大きな土竜があるためか、光が入らず、この先はかなり暗くなっている。
この土竜、もし逃げる様な事になったら、凄く邪魔になりそうだ。
本当はもっと先に逃げたいが、先に処理した方が良いかもしれない。
「この土竜、先になんとかしよう。いちいち登っていたら、大変だよ」
「まあそうだな。何が有るか分からないし、逃げ道は欲しいよな。この腕でも切り落とせば通れるんじゃないか?」
女性三人が言い争ってる中、僕達二人は、頑張って土竜の腕を切り落とし、人が一人通れるぐらいの道を確保した。
腕が有った所の断面が結構グロイけど、逃げ遅れて死ぬより良いだろう。
アスメライが魔法で洞窟を光らせると、パッっと周囲が明るくなった。
もし敵が居たのなら、何かあったかと警戒するだろう。
だからと言って、暗い中で戦うよりは随分とマシだ。
敵の攻撃が見えなければ、躱しようがないからだ。
「あの、三人とも、喧嘩してないでそろそろ行きましょうか…………」
「ふん、分かってるわよ」
「私達、喧嘩なんてしていませんよ? さあ行きましょうかイバスさん」
「イバス様、どうかされました? 顔色が悪いですよ? そうだわ、私が手当てしてあげましょうか?」
「いや、大丈夫です。特に悪い所はないんで」
さっきまで言い争っていたのが嘘の様だ。
…………女性って怖い。
明るくなった洞窟を進んで行くと、少しずつ地下へと降りて行っている気がする。
真っ直ぐと伸びた道には、まだ敵の姿はない。
「心配しすぎだったか? 敵も居ないし平和なもんだ。ここから敵が来てるなら、この洞窟を崩してしまえば良いんじゃないか?」
「まだ決まった訳じゃないし、この先がどうなってるのか見ときたいんだよね。もし行き止まりだったなら、他の場所かもしれないだろ?」
「お前本当は、後ろの女達から逃げたいだけなんじゃないだろうな? 仕事してれば考えなくても済むとか思ってんだろ? 現実逃避しても無駄だぞ。その時はドンドン迫って来ているんだからな」
「ううう、だって、僕にあれをどうしろっていうんだ。バチバチ火花が散ってるじゃないか。今はそっとしておいた方が良いんだ」
「分かった分かった、もう良いよ。ここの女の恐ろしさは、嫌という程理解している。俺も何度酷い目に合った事か…………」
「エルメスさん一人だったら、そこそこ嬉しかったんだけど、これはちょっとキツイ。今はそんな事は後回しにして、あの光の先へ向かおうよ!」
「お、出口か? まあゆっくり行こうぜ。今は平和な時間をかみしめようじゃないか」
「平和、平和かぁ…………そうだな、一応平和だな。敵も居ないし」
今は前だけ向いて歩きたい。
僕が気付いていないと思っているのか、後ろでは物凄い顔をして睨み合っている。
何で知っているかというと、気になって鏡越しにちょっと見てみたからだ。
「おし、着いたぞ。外は…………」
う、日光が眩しい。
そう思ったが、此処には日光なんて見当たらなかった。
物凄く広い地下の空間、そこの上の部分に出た僕達は、その光景に唖然とした。
崖の下には大小様々なキメラ達が入り乱れる、キメラのパラダイスだったのだ。
そのサイズはひたすら大きく、それは昔いたと言われている、恐竜というもののサイズだろう。
それが十匹、ニ十匹、もしかしたらもっといるかもしれない。
僕達はどう考えても、下のキメラ達と戦えるレベルではない。
直ぐに後を向き、脱兎のごとく逃げ出した。
「三人共逃げるよ、こんな所に居たら死ねる。直ぐ王国に帰るよ!」
「はぁ? 何言ってるの、ちょっと退きなさい、私が見て来るわ」
僕の忠告も聞かず、アスメライが先に進んで行く。
「あんまり行かない方が良いと思うけど…………」
「俺もそう思う…………まあ見たいのなら止めないが、刺激したら駄目だぞ」
「何を言ってるのか分かりませんが、イバス様、私達が見てまいりますわ。少々お待ちください」
三人がその光景を見ると、僕達の様に走り、逃げて来る。
「な、何ですかあれは。あんな広場があるなんて困ったわ。イバスさん、まずは国に報告しましょう。この洞窟を崩しても、何時か出て来るかもしれません。兎に角国に戻りましょう!」
「あんなの如何にもならないわよ! 早く逃げましょう、こんな所には居られないわ!」
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