一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。

秀典

23 忘れ去られた遺跡

 その遺跡は蔦は草に覆われて、発見は困難だったが、何とかそれを見つけ出した。 


「此処が遺跡か? ちょっと不気味だけど、何の遺跡何だこれ?」


「噂だと天使が如何のとか聞いた事があるけど、ハッキリした事はよく分からないな」


「天使様の遺跡なのね? う~ん、でも天使なんて本当に居るのかしらね? 本当に居るなら一度会ってみたいわ」


「ん、お前等知らないのか? 天使って今王国に居るんだぜ。俺がこの国に来たのはそれが原因だって聞いたし、何処かその辺歩いてるんじゃないのか?」


「ああ、そういえば一時期天使が如何とか騒いでたなぁ。眉唾だと思ったんだけど、あれ本当の話だったのか」


「へ~、じゃあこれが終わったら、ちょっと会いに行ってみようかしら。何だかワクワクするわね」


「止めといた方が良いぜ、あいつ等顔は良いんだが、性格は破綻しているからな。遠くから見る分には害が無くて良いかもしれんが、もし美人の姉ちゃんに手を出したら、男の方に殺されるぞ」


「二人いるのか? 王国に居るのなら、その内会えるかもしれないな。 …………さてと、じゃあ入ってみようか」


 僕達は足を進ませ、遺跡の中に入ってみた。
 中は意外と明るく、日の光が入って来ている。


「遺跡っていうより、教会だよな。こんな所じゃキメラは出ないんじゃないのか? やっぱり此処じゃないんじゃないか?」


「もう少し調べてみよう。もしかしたら何かあるかもしれないよ。何も無いならそれで良いし、もう一度来るなんて二度手間はしたくないからね」


「あのさ、今更だけど何を探しているの? 私、貴方達が出掛ける事しか聞いてないのよね。今回はどんな仕事なの?」


「ああ、此処には調査をしに来たんだよ。二人を追い掛けていた青色の奴、彼奴が何処から来たのかの調査だ。他にも何匹かの目撃があるようだし、結構重要な任務なんだよ」  


「へ~、でもこんな所から、あの大きなのが出て来れないんじゃないの? ほら、どうやったってあの入り口から出て来られないでしょ?」


 確かに、この入り口は二メートルもないし、青色の奴が出るには、入り口を壊さないと出ては来れないな。
 一応ここから出てから成長した、なんて事もあるのかも知れないが…………


「まあ一度調べてみようよ。せっかく来たんだしさ」


 僕達は遺跡内部を調べてみると、直ぐにアツシが地下への入り口を発見した。 


「おい、こっちから下へ降りれるみたいだぜ。ちょっと行ってみるか?」


「そうだな。ここには何も無さそうだし、行ってみようか」


 洞窟の様に長く伸びた通路は、途中で二本に分岐し、一本は今までよりも少し雑に作られている気がする。


「どっちに行くの? まあこっちの方が怪しいんだけれど」


 アスメライが見たのは、少し雑な方の通路だった。
 僕もそっちが怪しいと思う。
 だからまず、怪しくない方を潰してみようか。


「先にこっちに行ってみようか。道をを潰して行けば、安心して進めるからね」


「ふ~ん、分かったわ。じゃあ進んでみましょうか」


 通路が終わり、大きな広場の上部に出た。
 そこには下に続くロープが伸びている。
 ロープをキメラが設置出来きる訳はないし、これは調査隊の人が使った物だろう。


 でもあのトカゲって壁とか登るんだろうか?
 あの青色もロープを使えば上がれるかもしれないし、よく分からないな。
 外れだとは思うんだけど、完全に零とは言い切れないか?


「やっぱりこっちは無いかな? 降りるのも登るのも大変そうだし、行くなら後回しにしたいな」


「俺もこんな所を降りたくないな。手を滑らせたら死にそうだし、こっちじゃないって事にしとこうぜ」


「後回しにして、此処を登って帰る体力無くなったりしてね」


「…………此処を行けと? …………たぶんこっちじゃないと思うけど…………」 


「決めるのはイバスでしょ。貴方この隊のリーダーじゃないの、早く決めてよ」


 何時僕がリーダーになったんだろうか?
 別にそういうのをやってた積もりは無かったんだけどな。


「僕は別にリーダーやってる訳じゃないし、アスメライが決めても良いよ」


「じゃあ降りて」


「マジで? マジで行くのか?! 絶対何にもないって、此処は諦めて別の道を進もうぜ!」


「命令よ、行きなさい。リーダーに逆らったら…………」


 アスメライの瞳がキラりと煌く。
 杖を此方に向けて、魔法を唱え始めている。
 逆らったら不味い気がする。


「おいアツシ、逆らったらヤバイ事になりそうだ。此処は言うことを聞いておこうじゃないか」


「ま、まあリーダーの言うことは聞かなきゃな…………」


 僕達はロープで下に降りて行く。
 ロープの耐久度が分からないし、一人ずつ降りて行く。
 まずは僕からだ。


「大丈夫みたいだ。降りてきていいよ」


「そうか、じゃあ次は俺が行くぜ。アスメライはゆっくり降りて来てくれよ」


 アツシは滑る様にロープを降りて来る。
 さっき怖いとか言ってたのは嘘だったのか?


「ふう、ちょっと怖かったが何とかなったぜ。よしイバス、あれを見ろよ」


「は?」


「あの女のあんな姿はもう二度と見れないぞ。今の内に焼き付けておこうぜ」


 アツシの指さす方向、上に目をやると、アスメライが降りて来る姿が見える。
 何というか、モロ見え?
 僕は直ぐに目を逸らす。
 あれは罠だ、見たらきっと後悔するだろう。
 物理的に。


 だがアツシはそのまま見続け、そして…………
 上から何かが降って来る音がする。
 ガッコオオオオンっと、それがそれがアツシの額に直撃した。 


「グッはああああああ!」


「あ、ゴメン、ちょっと手が滑ったわ。でも仕方がないわよね、女の子をエッチな目で見ているんだから」


「な、何で分かったんだ。そんなに大きな声を出した覚えはないぞ!」


「ふん、あんた達のやる事なんて全部お見通しよ! 分かったならチャキチャキ働きなさい!」


 風の魔法も使えると言ってたから、声を拾ったとかそんな感じなのか?
 じゃあ僕が見てたのもバレて居たり?


「あんたも見てたわよね?」


「い、いや、見てないよ。ホントダヨ、ホント」


「やっぱりこんな嘘つきにお姉ちゃんを任せていられないわ! 説教してあげる。二人共そこに座りなさい!」


「イバス、この雰囲気は何度か味わった事がある。これは駄目なやつだ。逆らったら駄目なやつだ。ここは大人しく言う事を聞かないと、恐ろしい目に合うぞ」


 これ以上恐ろしい目に合うというのか…………僕は大人しく地面に座り、アスメライの説教を聞いた。


「イバス、あんたレーレにも手を出したらしいわよね? お姉ちゃんだけに飽き足らず、まさかレーレまで! いい、あんた達、これからキッチリ教育してやるわ! 私が来たからには真面な男にしてあげる! エッチな事なんて一切考えられなくしてあげるから覚悟しなさい!」


 僕は、ボーっとしながらそれを聞き流し、嵐が過ぎ去るのを待ち続けた


「…………分かったらもう二度としない事ね! 次はこの程度じゃ済まさないわよ! 分かったなら返事をしなさい!」


「「はい、もうしません!」」


 一時間程待ち続け、アスメライが満足すると、僕達は近くにあった道を進みだす。
 というかこの遺跡デカくない?
 戻った方が良くない? 絶対もう一つの道だったって!



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