一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
13 鋼鉄の重い物体
どうしましょう、グラビトンの体を持ち上げようとするが、その重さは四人で運べる様な重さじゃない。
武器である大剣も握ったまま放さない。
この大剣壱本でも、此処に居る誰よりも重いのだ。
例え持ち上げられても、何メートルも運べないだろう。
まあそもそも…………
「戦いは終わったよ、さあ答えを聞かせてくれよルムちゃん」
ルルムムの手を握り、ジッと瞳を見つめているブール。
此方の事など全く気にしていないらしい。
「う、あの、も、もう少し時間ください。わ、私、貴方の事をあんまり知らないし…………」
「そっか、じゃあ明日二人で遊びにい出掛けようか。きっと俺の事も知れると思うよ」
「遊びに……ですか? でも私、まだ付き合うって言ってないです。貴方と二人でなんて…………」
「デートじゃないよ、ただ遊びに行くだけだよ。心配だったら友達も連れてきても良いからさ。じゃあ俺、中央広場で待ってるから、明日の昼に来てくれよ。ルムちゃんが来るまで待ってるからさ」
「わ、私まだ行くって言ってない。い、行きませんからね!」
「うん、勿論来なくても良いさ、俺が勝手に待ってるだけだから。でも、来てくれるとすっごい嬉しいな」
「い、行かないですからね!」
あの二人がこれから如何なるのかは知りませんが、此方にももう一人厄介な男が一人。
「さあ、戦いは終わったぞ! アンリさんの恥ずかしい秘密とは一体なんだ! 早く教えてくれないか!」
「いや、俺が言ったのは、本物のアンリさんの事を教えてあげると言ったんですよ。誰も恥ずかしい秘密とか言ってないですから、勝手に勘違いしないでください」
この人は男のケツを追い回すあっち系の人。
完全な女であるパン屋の娘の事を知ったらどうなるだろうか?
この人がそれでも男に行くのか、少しだけ興味はある。
「貴方がアンリさんって言って追いかけてるのはべノム隊長でしょう? でもですね、あの姿のモデルになった人物が居るんですよ。しかもべノム隊長の様に、男ではなくて、完全な女性ですよ」
「ほ、本当なのか! いやいや、姿だけ同じだとしても、それは完全に別人じゃないか。だ、だが、一応聞いておこうじゃあないか。その人は何処に居る!」
血走った眼で、顔を近づけてくるアーモン。
俺が狙われている様でちょと怖い…………
「もしかしたら行った事があるかもしれませんけど。べノムの家の近くにパン屋があったでしょう? そこでその子が働いてるんですよ。貴方がたまに見かけてたのは彼女なんじゃないですかね?」
「うおおおおおおおおおおおおお! 今直ぐ行きますよ、アンリさん! 待っていてください! うおおおおおおおおおおおおお!」
「ちょっと待って! 手伝ってから行ってくださいよ! お~い…………」
アーモンは外門の方へと走って行く。
俺達を置いて一人で。
三人ではどうにもならないのだけれど。
「じゃあ行こうか、ルムちゃん」
「う、うん」
ブールはルルムムの手を握り、そのまま二人で歩いて行く。
残されたのは俺と、倒れているグラビトンだけです。
俺一人では運ぶ事も出来ませんし、かと言って、この巨人をこのまま放置しておく訳にも行かない。
暴走していたら、また大暴れしそうだ。
「さてと…………」
取り合えず俺は、グラビトンから十メートル程離れてみた。
これぐらい離れていれば逃げられると思う。
未だに動く気配はない。
あの三人が応援を呼んでくれると信じたいが。
…………まあ、信じるだけ無駄でしょうね。
一応少しだけ待ってみるが、やはり誰もやって来ない。
「此処に居ても仕方が無いし、戻りますかね。応援を呼んでくるまで、倒れて居てくれれば良いのですが」
任務失敗の言い訳を考えつつ、俺は外門に向かおうとするが。
その方角からアツシの声が聞こえる。
「お~いバール、応援を連れてきてやったぞ! 俺だって役に立つんだからなぁ!」
アツシが武装した兵士達を十人程連れて来た。
アツシはグラビトンが倒れる前に逃げたんでしたね。
手が有るのはありがたい。
運ぶのを手伝って貰いましょう。
「丁度良い所へ来てくれました。俺一人じゃ運べなかったんですよ。さあ皆でこの巨人を運びましょう! これならアツシでも出来ますよね!」
アツシは横たわった巨人を見渡している。
これを運ぶのかと言った表情をしているが、此処に来たからには逃がしませんよ!
「あ、ゴメン、俺用事が出来たんだった。ちょっと急がなきゃならないんだった。後は任せたぜバール!」
アツシが逃げる事を予測していた俺は、アツシの襟元を掴み、その行動を阻止した!
「放せ! 俺にはこんな力仕事は向いていないんだ! 他に誰か呼んでくるから放してくれ!」
「それは一度挑戦してからですね。十二人で運べないのなら、もっと誰か呼んで来てもらいます。ほら、アツシも持ってくださいよ」
アツシはしぶしぶながらグラビトンの体を掴んだ。
他の人達もそれぞれに体を掴み、持ち上げられる体制を作っている。
「こんなの手伝わせるんだ、今度飯でもおごってくれよ!」
「あーはいはい、分かりましたよ。いよし、じゃあ皆さんいきますよ。せーのぉッ!」
十二人掛かりで、やっとの事で持ち上がったが、この人数でもかなり辛い。
「ぐおおおおおおお、重いいいいいいいいいい! おいバール! こんなの持って町まで行けねーぞ! 何か荷台でも持って来た方が良いんじゃないか!」
「た、確かに、これじゃあ何時間掛かるか分かりませんね。一度下へおろしますよ、ゆっくりですよ!」
グラビトンが地面に降ろされる。
このままではいつまで経っても終われないので、俺は荷台付きの馬車を持ってくる事にした。
俺は急ぎ馬車を運び、全員でグラビトンを馬車に乗せると、馬車の荷台がギシギシと軋む音がする。
相当馬車に不可が掛かっている。
あまり負担が掛からない様に、ゆっくりと馬車を進ませて、王国内まで進ませた。
そのまま研究所まで運び込むと、俺はイモータル様へと報告しに行った。
「イモータル様、グラビトンの捕獲完了しました」
「ご苦労様でしたバール、それでグラビトンの容態はどうですか?」
「はい、薬の影響があるのか、それとも時間が経ちすぎているのか、グラビトンは未だに目覚めていません。もしかしたらこのまま目覚めないのかもしれません。後は研究所に任せるしかないでしょう」
「…………分かりましたバール、また何かありましたら直ぐに呼びます。今日は休み疲れを癒しなさい」
「はい、それでは失礼します」
俺はイモータル様の部屋から退出すると、自宅に帰った。
今日は大剣を受け止めたり、重い物を持ち上げたりと何かと筋肉を酷使したから、ベットに横たわり、ぐっすりと眠りに付いた。
武器である大剣も握ったまま放さない。
この大剣壱本でも、此処に居る誰よりも重いのだ。
例え持ち上げられても、何メートルも運べないだろう。
まあそもそも…………
「戦いは終わったよ、さあ答えを聞かせてくれよルムちゃん」
ルルムムの手を握り、ジッと瞳を見つめているブール。
此方の事など全く気にしていないらしい。
「う、あの、も、もう少し時間ください。わ、私、貴方の事をあんまり知らないし…………」
「そっか、じゃあ明日二人で遊びにい出掛けようか。きっと俺の事も知れると思うよ」
「遊びに……ですか? でも私、まだ付き合うって言ってないです。貴方と二人でなんて…………」
「デートじゃないよ、ただ遊びに行くだけだよ。心配だったら友達も連れてきても良いからさ。じゃあ俺、中央広場で待ってるから、明日の昼に来てくれよ。ルムちゃんが来るまで待ってるからさ」
「わ、私まだ行くって言ってない。い、行きませんからね!」
「うん、勿論来なくても良いさ、俺が勝手に待ってるだけだから。でも、来てくれるとすっごい嬉しいな」
「い、行かないですからね!」
あの二人がこれから如何なるのかは知りませんが、此方にももう一人厄介な男が一人。
「さあ、戦いは終わったぞ! アンリさんの恥ずかしい秘密とは一体なんだ! 早く教えてくれないか!」
「いや、俺が言ったのは、本物のアンリさんの事を教えてあげると言ったんですよ。誰も恥ずかしい秘密とか言ってないですから、勝手に勘違いしないでください」
この人は男のケツを追い回すあっち系の人。
完全な女であるパン屋の娘の事を知ったらどうなるだろうか?
この人がそれでも男に行くのか、少しだけ興味はある。
「貴方がアンリさんって言って追いかけてるのはべノム隊長でしょう? でもですね、あの姿のモデルになった人物が居るんですよ。しかもべノム隊長の様に、男ではなくて、完全な女性ですよ」
「ほ、本当なのか! いやいや、姿だけ同じだとしても、それは完全に別人じゃないか。だ、だが、一応聞いておこうじゃあないか。その人は何処に居る!」
血走った眼で、顔を近づけてくるアーモン。
俺が狙われている様でちょと怖い…………
「もしかしたら行った事があるかもしれませんけど。べノムの家の近くにパン屋があったでしょう? そこでその子が働いてるんですよ。貴方がたまに見かけてたのは彼女なんじゃないですかね?」
「うおおおおおおおおおおおおお! 今直ぐ行きますよ、アンリさん! 待っていてください! うおおおおおおおおおおおおお!」
「ちょっと待って! 手伝ってから行ってくださいよ! お~い…………」
アーモンは外門の方へと走って行く。
俺達を置いて一人で。
三人ではどうにもならないのだけれど。
「じゃあ行こうか、ルムちゃん」
「う、うん」
ブールはルルムムの手を握り、そのまま二人で歩いて行く。
残されたのは俺と、倒れているグラビトンだけです。
俺一人では運ぶ事も出来ませんし、かと言って、この巨人をこのまま放置しておく訳にも行かない。
暴走していたら、また大暴れしそうだ。
「さてと…………」
取り合えず俺は、グラビトンから十メートル程離れてみた。
これぐらい離れていれば逃げられると思う。
未だに動く気配はない。
あの三人が応援を呼んでくれると信じたいが。
…………まあ、信じるだけ無駄でしょうね。
一応少しだけ待ってみるが、やはり誰もやって来ない。
「此処に居ても仕方が無いし、戻りますかね。応援を呼んでくるまで、倒れて居てくれれば良いのですが」
任務失敗の言い訳を考えつつ、俺は外門に向かおうとするが。
その方角からアツシの声が聞こえる。
「お~いバール、応援を連れてきてやったぞ! 俺だって役に立つんだからなぁ!」
アツシが武装した兵士達を十人程連れて来た。
アツシはグラビトンが倒れる前に逃げたんでしたね。
手が有るのはありがたい。
運ぶのを手伝って貰いましょう。
「丁度良い所へ来てくれました。俺一人じゃ運べなかったんですよ。さあ皆でこの巨人を運びましょう! これならアツシでも出来ますよね!」
アツシは横たわった巨人を見渡している。
これを運ぶのかと言った表情をしているが、此処に来たからには逃がしませんよ!
「あ、ゴメン、俺用事が出来たんだった。ちょっと急がなきゃならないんだった。後は任せたぜバール!」
アツシが逃げる事を予測していた俺は、アツシの襟元を掴み、その行動を阻止した!
「放せ! 俺にはこんな力仕事は向いていないんだ! 他に誰か呼んでくるから放してくれ!」
「それは一度挑戦してからですね。十二人で運べないのなら、もっと誰か呼んで来てもらいます。ほら、アツシも持ってくださいよ」
アツシはしぶしぶながらグラビトンの体を掴んだ。
他の人達もそれぞれに体を掴み、持ち上げられる体制を作っている。
「こんなの手伝わせるんだ、今度飯でもおごってくれよ!」
「あーはいはい、分かりましたよ。いよし、じゃあ皆さんいきますよ。せーのぉッ!」
十二人掛かりで、やっとの事で持ち上がったが、この人数でもかなり辛い。
「ぐおおおおおおお、重いいいいいいいいいい! おいバール! こんなの持って町まで行けねーぞ! 何か荷台でも持って来た方が良いんじゃないか!」
「た、確かに、これじゃあ何時間掛かるか分かりませんね。一度下へおろしますよ、ゆっくりですよ!」
グラビトンが地面に降ろされる。
このままではいつまで経っても終われないので、俺は荷台付きの馬車を持ってくる事にした。
俺は急ぎ馬車を運び、全員でグラビトンを馬車に乗せると、馬車の荷台がギシギシと軋む音がする。
相当馬車に不可が掛かっている。
あまり負担が掛からない様に、ゆっくりと馬車を進ませて、王国内まで進ませた。
そのまま研究所まで運び込むと、俺はイモータル様へと報告しに行った。
「イモータル様、グラビトンの捕獲完了しました」
「ご苦労様でしたバール、それでグラビトンの容態はどうですか?」
「はい、薬の影響があるのか、それとも時間が経ちすぎているのか、グラビトンは未だに目覚めていません。もしかしたらこのまま目覚めないのかもしれません。後は研究所に任せるしかないでしょう」
「…………分かりましたバール、また何かありましたら直ぐに呼びます。今日は休み疲れを癒しなさい」
「はい、それでは失礼します」
俺はイモータル様の部屋から退出すると、自宅に帰った。
今日は大剣を受け止めたり、重い物を持ち上げたりと何かと筋肉を酷使したから、ベットに横たわり、ぐっすりと眠りに付いた。
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