一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。

秀典

10 戦うメンバーを集めようか

 命令から三日目。
 もうそろそろ行かないと、イモータル様に怒られそうだ。
 少し本気を出してメンバーを集めますかね。
 さて、戦うメンバーは如何しようか。
 今日は本番だから、ある程度ダメージが与えられる人物が良いですね。
 前に戦った事のあるルルムムとかが居たらいいのですが。


 ふむ、まずは会いに行ってみましょうか。
 きっとアツシの所で嫌がらせでもしてるんじゃないですかね?


 俺はまず、アツシの部屋に行ってみる事にした。 


 アツシの部屋が見える位置。
 この辺りに居たりして…………
 隠れるなら、あの木の影とかかな?


 半信半疑で、そこを覗いて見ると、本当にルルムムが隠れていた。
 何時邪魔してやろうかとタイミングを見計らっている様だ。
 俺の事には気づいていないみたいだが…………


「あの~、ルルムムさん、何をされたか知りませんが、もうそろそろアツシを許してあげたらどうですか?」


 ルルムムはいきなり話しかけられ、少し驚いて此方を見た。
 そのまま俺をぶん殴り、その手で俺の口を押さえつけられてしまった。


「静かにしなさい、彼奴にバレるでしょうが。もしバレたなら、もう一回ぶん殴るわよ。それと、私はあの馬鹿男からストリーを護っているだけだから」


 わざわざこんなにも苦労して邪魔してる所を見ると、案外にアツシのことが気になってたり?
 いや、それは無いか。
 心底汚物を見る様な目をしているし。


 俺が目を覚まさせてあげても良いのですが、またサミーナの様な事になっても困りますね。
 ルルムムのことはアツシに任せるとしましょうか。
 それは良いとして、この手を放してもらわないことには要件を伝える事が出来ないですね。
 ここは仕方がない、手を放してもらえるように、何かしてみましょうか。


 俺は口を押えられた掌を、ペロリと舐めてみた。


「何すんの! この変態がッ!」


 ルルムムの盛大なビンタが、俺の横っ面へと叩きつけられた。
 物凄く痛い…………


「失敬な、俺はただ手を放してもらいたかっただけですよ。手を放してもらわないと喋れないじゃないですか。今日は重要な要件があるのですよ。グラビトンが治せる薬が出来たかもしれないから、また手伝って欲しいのです。グラビトンは堅いですからね。打撃を得意としている貴方がいてくれると助かります」


「別に良いけれど、条件があるわ。私が居ない間にも、アツシがストリーに何するか分からないし、アツシを一緒に連れて行って頂戴」


 アツシか。
 先日の戦いでは全く役に立たなかったですが、離れているだけなら邪魔にもならないでしょう。  連れて行くのは問題ないですね。


「じゃあそうしましょうか。アツシは参加ということで」


「黙っていれば何勝手に決めてるんだよ! 俺はもうあんな所には行かないぞ!」


 窓からアツシが顔を出している。
 まああれだけ怒鳴ってれば気づきますよねぇ。
 でもこれで説得手間が省けた。


「おや、聞いていたんですか。じゃあ話は早いですね、それじゃあ今から準備してください。ちょっと急ぎますから」


「だから行かないって言ってるだろうが! 俺があんなものを真面に相手出来る訳がないだろ!」


「別に戦わなくても敵が来ないか見張ってるだけでもいいんですよ? 出来ない事をしろとは言っていないですからね」 


「なぁ~にぃアツシィ、もしかしてビビってるのかしら~? 高々見張りも出来ないなんて、どんだけ弱っちいのかしら。ストリーに鍛えられてたみたいだけど、ぜ~んぶ無駄だったわね。じゃあ邪魔しないように、家でガクガク震えてるといいわよ。 フフフ…………」


「はあ? 言いやがったなこの野郎! そ、そのぐらいやってやらぁ! 俺だって見張りぐらい出来るんだからな! 一緒に行ってやるから俺の活躍を見てろよ!」


「じゃあ決まりですね。時間は昼を過ぎた頃で良いでしょう。習合場所は、また外門の前に来てください。あとは武器も忘れずに持ってきてくださいね。じゃあ俺は他の戦力を探して来ますので、仲良く二人で準備してくださいね」


「こんな奴と仲良くなんて出来ないわよ!」


「そりゃあ俺のセリフだ!」


 喧嘩しそうな二人は放って置いて、俺はこの場を去って行く。
 後二人は如何しようか?
 サミーナ達は確かに強いが、グラビトンとは相性が悪すぎる。
 弟のブールでも呼んでみるかなぁ。
 一応弟とはテレパシーで繋がれるが、一度二人で会わないと使うことが出来ない。
 繋げっ放しにする事も出来るのだが、俺達にもプライベートというものがある。
 だから普段はテレパシーを繋げてはいない。


 という訳で、ブールの元へと向かうことになった。
 何処に居るのか何故分かるのかと言うと、仕事の特性上テレパシーというものは便利で、何時でも連絡が取れる様に互いの行動は把握しているからだ。


「よう弟、ちょっと頼みがあるのだけど、またグラビトンと戦ってくれないか? 念願の薬が出来たみたいで、俺に任務が回って来たんだ」


「ふ~ん、行っても良いけど、誰か女の子紹介してくれよ。俺最近振られて、今フリーなんだよ。もう誰でも良いからさ、ほら、サミーナちゃんだっけ? あの子でもいいよ」


 サミーナの事を知られていたのか。
 まあ広場であんな事があったら、情報も出回るか?
 しかしサミーナは、もうラグリウスとくっ付けた所だ。


「サミーナはもう別の男とくっ付いたよ。 …………ああそうだ、お前ルルムムを口説いてみないか? お前だったら彼女の目を覚まさせる事が出来るかもしれないぞ」


「ルルムムとだって? …………じゃあそれで良いぜ。彼女は結構可愛いし、試してみる事にするよ。それじゃあ集合場所は何処だ?」


 俺はブールに集合場所を教え、最後の一人を探した。
 前に一緒に戦ったアンダースは、今は王国から出てキメラ退治に出ている。
 誰か丁度いい奴はいないだろうか?


 まだ集合時間には時間がある。
 フラフラと町中を探し回るが、中々良い奴は見つからなかった。


「まあいいか、アツシは戦力外ですが、三人でも何とかなるでしょう。それじゃあ集合場所へ…………」


 ん? あれは確かアーモンと言ったか。
 実力の程は分からないが、勇者として各地を回っていたのならそこそこ実力もあるんじゃないですかね?
 ちょっと声を掛けてみましょうか。


「あの~、アーモンさんでしたよね? 貴方も王国に身を置いているのなら、ちょっと頼みを聞いてくれないでしょうか?」


「悪いが今ちょっと忙しいんだ。はっ、アンリさんが何処かへ行ってしまう! ちょっと急いでるんだ。また今度にしてくれないか」


 アーモンはそう言い、べノムを尾行している。
 噂は聞いた事がある。
 変身したべノム隊長の事を追いかける変態が居るってことを。
 このアーモンがそうだったのか。
 たぶんもう二度とやらないんじゃないかと思うのですが。


 ん? 待てよ。
 確かべノムが変身したアンリって人物にはモデルが居たはずだ。
 確か角のパン屋の…………


「まあ待ってください、アーモンさん。貴方は知らないかもしれませんが、本物のアンリちゃんのことを教えてあげましょう。もし作戦を手伝ってくれるなら、情報を提供してもいいですよ」


「な、何だと! 本物のアンリさんってどういうことだ! 勿体ぶらないで教えてくれ! 早くしないとアンリさんが行っちゃうだろ!」


「知りたいのなら、任務を手伝ってください。この情報を知れば、貴方は今より幸せになれるかもしれません。いや、絶対になれるでしょう。どうします、これを断れば二度と手に入らない情報かもしれませんよ?」


「なッ…………くぅ、それは本当に役立つ情報なんだろうな! うああ、行ってしまったじゃないか! し、仕方ない、もし嘘だったら後でどうなるか分かってるだろうな! その依頼、受けてやる」


「では昼に外門の前に集合してくださいね。そこでお待ちしております」






 外門には俺、アツシ、ルルムム、ブールと、このアーモンが外門に集まった。



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