一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。

秀典

13 まおうぐんのにちじょう リア校長逃げる

 題 僕の学校の校長先生。


 学校の校長先生は、ちょっとからかっただけなのに、物凄く怒り出します。
 一度僕がそんなんだから結婚出来ないんだよとか言ったら、グーを握りしめて本気で殴りかかって来ました。
 物凄く怖かったです。


 でも僕は校長先生の事は嫌いじゃありません。
 たまにジュースを驕ってくれたり、頭を撫でてくれたりして優しい所もあるからです。
 校長先生は、誰も居なかったらこの子でも良いかしら、なんて不思議な事も言ってきます。
 僕は何かされちゃうんでしょうか? 


「…………校長、なんですかこれ?」


 ルクレチアさんが呆れている。


「ただの作文でしょ、気にする事ないわよ。ほら、適当に書いちゃうことってあるじゃない。たぶんそれよ。ただの冗談よ、冗談…………」


「もし子供達に手なんて出したらただじゃおきませんからね。いいですか、変な気を起こさないでくださいよ。貴方が結婚出来なくても、絶対にだめですからね!」


「もう、分かってるわよそんなこと。私だって冗談で言っただけじゃないの。でも向うから来るのならそれはそれでありかしら?」


「今何か言いましたか! 分かってるんですか? 生徒に手なんて出したら、校長でも首になるんですからね」


 首になった所で痛くも痒くも無いのだけれど。
 …………まあ本当にただの冗談だったんだけどね。


「だから冗談だって。そんな事にならないように、明日男とデートがあるんだから。私だって付き合える男ぐらい居るんだからね。だから明日は休むわ」


「は? 何言ってるんですか。明日の予定はビッシリと詰まってるんですよ? 無理に決まってるでしょう。余計な事は考えず、早く仕事してください!」


「え~! 何でよ、少しづつで良いって言ってたじゃないの! 私は前の校長と違ってちゃんとやってるわよ!」


「本ッッ当に、少ししかやって無いですよね! 一日五枚ぐらいしか出来て無いじゃありませんか! そんなんだから増える方が多くなるんですよ! 前の校長よりはましかと思いましたが、殆ど変わらないじゃないですか!」


 私だって頑張ってるんだけどなぁ。
 ちゃんと書類を見て、それにあった事を色々と考えてたんだけど。
 まあそのおかげで一日に五枚ぐらいが限界なんだけどね。


「分かってるわよ。今日は頑張ってやっとっくから、だから明日はお休みでいいわよね?」


「分かってくれれば良いのですよ。ちょっとお茶を入れて来ますので、ちゃんとやっといてくださいね」


「いってらっしゃーい」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 ガチャ


 ルクレチアはお茶を入れ、校長室の扉を開いた。


「校長、お茶を…………居ない!」


 ゥウウウウウウウウウウウウウウ ピーガーーーー


 学校中に緊急警報が鳴り響く。
 音を大きくする魔法を使っているらしい。


「全先生と全校生徒次ぐ! 校長が逃げました! 捕まえた者にはプラス十点の加点と、賞金一万を進呈します! 捕まえた人のクラスには更に五点の加点と、賞金を更に金二千を差し上げます! 授業は後回しでいいです! 至急校長を捕まえなさい!」


 ガタッ ガタッ ガタガタガタガタガタガガタ


 誰かが……いや、殆どの生徒が立ち上がり、急ぎ教室を飛び出して行く。
 安月給の教師達までもが血眼になって走り出した。


「校長は何処おおおおお! 一万も有ったら、美味しい物が食べれるんですよお! 私の食費の為に掴まってくださいよおおおお!」


「十点、十点もあったら彼奴に勝てる! 校長は何処だ! 何処に居る!」


「丁度欲しい物があったんだ、これを捕まえれば買う事が出来るんだ! 校長を捕まえろー!」


「駄目だ体育館には居ない。他を探せ!」


「トイレ、居ない。音楽室も居ない。何処へ行った校長! 家賃の足しにしてくれる!」


 学校中が騒がしくなっている。


「随分と楽しい事になってるなぁ。さて、そろそろ…………」


 私は学校の屋上に登り、そして私は宣言した。


「さあ私は此処よ~! 捕まえるものなら捕まえてごらんなさい! 最初に捕まえた人にはキスのプレゼントしてあげるわよ!」


「居たぞ! 屋上だ! 逃がすな、捕まえろ!」


「キスなんて要らないわ! お金を頂戴!」


「キスだと! 校長のキスは俺が貰う!」


 私は野獣と化した生徒を躱し、学校の中を逃げ回った。
 しかし圧倒的な数により私は追い詰められてしまう。
 体育館の壇上の上、私はそこに登っている。
 周りには殆どの教師や生徒が体育館に集まっている。


「さあ観念しなさい! もう逃げられないですよ!」


「さあ、俺にキスを、キスを!」


 結構盛り上がってるわね。
 そろそろ頃合いだわ。
 私は生徒達に向かってビシィっと指をさした。


「皆、私の企画したゲームは如何だった? 結構面白かったでしょ? でも流石にこれだけの人数が一斉に登ってきたら怪我をしてしまうわ! だからここからはジャンケンよ! もちろん賞品はあげるわ!」


「何だよ、校長が企画したイベントなのかよ! でも賞品さえ貰えればまあ良いけどよ」


「まだチャンスはある、此処で逆転するぞ!」


「じゃあ行くわよ、ジャンケン…………ぽん!」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 ジャンケン大会は無事に終了し、優勝した生徒に賞品が渡された。
 女の子だったからキスは拒否されてしまったけど。
 中々面白かったんじゃないだろうか。


「全く、机の上にこのイベントをしてくれと書いてあったのは驚きましたよ。こんな事をするのなら事前に知らせてくれればよかったのに。私の事を信用していないのですか?」 


「いや~、もしかしたらルクレチアさんもお金欲しいかなーって思ったんだけど、次やる時には知らせるわ。でもこれで一つ解決したわね」


「こんな大げさな事をしなくても、もう少し何かあったんじゃないのですか? 賞金までかけてしまって、学校の運営に支障が出ても知りませんよ?」


「確かにお金を出したのは痛かったわね。次回からはお金はなしの方向で行きましょうか。ま、でも楽しかったし良いわよね」


 私はその書類を手に取った。
 そこにはこう書かれていた。


 勉強ばかりで息が詰まってしまいます、何か面白いことないですか? 


 たったそれだけの文章だったけど、私はそれに全力で答えた。
 まあこんなことばかりしてるから全然仕事が進まないんだけどね。






 じゃあ次の書類を片付けちゃいますか。








         END

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