一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
10 輝け校長先生
適当に挨拶した事がルクレチアさんの怒りにふれ、物凄く怒られた。
私の方が立場が上だと思うんだけど・…………
教師達との自己紹介を終え、ルクレチアさんに学校の中を案内さた。
魔法を使えるという以外は殆ど普通の学校と同じらしい。
違うのは音楽室や水練の為のプールまである事だろうか。
この国はそれなりに教育に力を入れている様だ。
私は校長室まで案内された。
この中には、あの校長の私物は殆ど撤去されて、立派な椅子と机ぐらいしか置いていない。
あとはまあよく分からない資料とかが棚の中に詰め込まれている。
「此処が校長室です、貴方の部屋ですよ。多少の私物は持ってきても良いですが、余り変な物まで持って来ないでくださいね」
「分かりました。たぶん服ぐらいしか持って来ないから大丈夫ですよ」
「そうですか。それではこれから書類整理と行きましょうか。ではこれを」
机の上に山の様に積まれた書類、とても一日で終わる量じゃない。
「ちょっと多くありませんかこれ…………」
「前校長が一切手を付けなかったものですから、物凄い量が溜ってるんですよ。今日中にやれとは言いませんから、少しずつでも片付けてくださいね」
「あ~、はい」
あの校長…………私も叩いておけばよかったわね。
今度会ったらぶん殴ってやろうかしら。
「よっと」
私は机に付いている椅子に座る。
お、結構良い椅子ね。
随分座り心地が良いわ。
これならずっと座っていられるわね。
「さてと…………え~と、なになに? テストで順番を公表するのは可愛そうなので、即刻中止してください。 えっ、なにこれ? 何かの苦情? こんなのが重要書類なの?」
「重要ですよ。子供達の親からの要望ですから。まあ無理な物もかなり有るので、出来ない物は破棄していいですよ。それじゃあ私は別の用があるので、後はお任せしますね」
「はいは~い。 いってらっしゃ~い」
ルクレチアがジロリと睨んで来ている。
このぐらい許して欲しいわ。
「え~と次は…………演劇の主役になれないから主役を増やして欲しい。 …………こんなのばっかりね。次は……はぁ……私の息子を一位にしてくださいって、そんなの自分でやらなきゃ意味ないでしょうが! 却下よ却下。あ~やっぱり受けるんじゃなかったわ~。一年もこんな事やってられないわね」
チラリと外を見ると、サボってる子供達を見つけた。
二人組の男の子の様ね。
歳は十二、いや、もう少し上かしら?
気分転換にちょっと行ってみようかしら。
…………まだ二つしか見て無いけどね。
私はその子達の後ろから声を掛けた。
一人は青色の髪の子、もう一人は黒色の髪の子だった。
「ねぇ、何してるの?」
「うわ! 誰だよお前、俺達に何か用かよ!」
「僕知ってる。このおば、ふぎゃ」
私は何か不穏な事を言おうとした奴を殴った。
「お姉さんは此処の校長になったグレモリアよ。よろしくね二人共」
「殴ったな! 体罰は駄目なんだよ! 親に言いつけてやる!」
「あらそうなの? 校長なんて何時止めても良いから、言いたいなら言いなさい。もしそんな事になったら貴方達がサボってたことも言いふらしてあげるわよ」
「う、分かったよ。今回だけ許してやるから、もうあっち行ってくれよ。どうせ僕達勉強なんて出来ないんだからいいだろ」
「俺達毎回最下位なんだ。勉強したって無駄なんだよ。校長が変わったって何も変わらないんだよ!」
私はあの却下した書類の事を思い出した。
主役になれない、順位を無くして欲しい、あれはこんな子達の為の言葉なんだろう。
順位が見えれば目標が持てて頑張れる人もいる。
でもその一方で、こうやって挫折してしまう子も出ているんだろう。
全員そうだったなら対処も簡単に出来るんだけど、この人によってはって言う物が、物凄く面倒臭い。
一人を助けたら一人が脱落するという堂々巡り、これを解消する方法なんて…………
「貴方達の名前を教えなさい。私が、ほんの少しだけ頑張れる様にしてあげるわ!」
「お姉ちゃんには出来ないよ。だっていっつも親が反対するんだもん、どんな事をしたって無理だよ」
「大人なんて皆僕達を馬鹿にしてるんだ。落ちこぼれ、落ちこぼれってさ」
「いいから名前を教えなさい! 早くしないと引っぱたくわよ!」
「う……俺はランツ。此奴はレイコットだよ」
青髪がランツ、黒髪がレイコットね。
「見ていなさいランツ、レイコット。私がこの学校を変えてあげるわ! もし変えられたら、貴方達ももう少しだけ頑張ってみるのよ」
「そんな事言って、出来なかったらどうするんだよ!」
「そうだよ、出来なかったら、姉ちゃんに酷い事してやるからな!」
「へぇ、良いわよ。それじゃあ約束だからね。じゃあ私行くから、二人共楽しみに待ってなさいね」
そう言うと私は校長室に戻った。
そこには私を待っているルクレチアさんが居たのである。
見られていたかしら?
「何処へ行っていたんですか校長先生、まだ仕事は進んでいない様ですが?」
「い、いやちょっとトイレに……ごめんなさいね」
やるなら早い方が良いわよね。
良し、ルクレチアさんに言ってみましょう。
「あの、ルクレチアさん、私この学校を変える事にしたから手伝ってください。もし手伝ってくれなくっても、勝手にやっちゃいますから。止めても無駄ですよ」
「いいえ無理です。学校と言うものは、法やしがらみに縛られて、あまり変な事は出来ない様になってるんです。もし何か変えてしまったら、親たちが黙っていませんよ」
「ふ~ん、でも私には関係無いわ。校長になったのも命令だし、首になるならそれでも良いもの。だから、それまでは徹底的にやってやるわよ! 貴方は如何するの? 私に付いて来る? それとも逃げ出すかしら?」
「今までにも、学校を変えようとした人は居たのですよ。その尽くが挫折し止めてしまいましたけどね。良いでしょう、お付き合いして差し上げます。 …………それで、何か手でもあるのですか?」
「そうね…………」
私はルクレチアにそれを説明した。
動かない順位を動かすには、それはこうだ。
まずは一位、これを不動にはさせない。
一位を取った人には、次回マイナス三十点を付ける。
そうなれば毎回一位は取る事は出来ない。
次は最下位からの加点、最下位からその上十人はプラス十点。
その上十人はプラス五点。
これで順位は毎回変わる事になる。
動かなかった順位が一つでも変われば、ほんの少しやる気がでるかもしれない。
まあ壱位を取った人はちょっと損をするけど、何か良い特典でも有れば、それでも目指してくれるはずよね?
私はそれを伝え終わると、早速実行に移す。
もちろん抵抗勢力は存在した。
自分達の順位を必死に守ろうとする親たちの勢力が。
ま、そんなものは私には関係無いし、五月蠅いから退学ね、って言ったら黙ったけどね。
よし次は何を変えてやろうかしら。 私は次の書類を見た。
え~と、これは生徒からかしら?
僕は恋をしています、あの子と一緒のクラスになりたいです。
って。 なる程、大丈夫よ!
この恋のキューピット、グレモリアに任せておきなさい!
私の方が立場が上だと思うんだけど・…………
教師達との自己紹介を終え、ルクレチアさんに学校の中を案内さた。
魔法を使えるという以外は殆ど普通の学校と同じらしい。
違うのは音楽室や水練の為のプールまである事だろうか。
この国はそれなりに教育に力を入れている様だ。
私は校長室まで案内された。
この中には、あの校長の私物は殆ど撤去されて、立派な椅子と机ぐらいしか置いていない。
あとはまあよく分からない資料とかが棚の中に詰め込まれている。
「此処が校長室です、貴方の部屋ですよ。多少の私物は持ってきても良いですが、余り変な物まで持って来ないでくださいね」
「分かりました。たぶん服ぐらいしか持って来ないから大丈夫ですよ」
「そうですか。それではこれから書類整理と行きましょうか。ではこれを」
机の上に山の様に積まれた書類、とても一日で終わる量じゃない。
「ちょっと多くありませんかこれ…………」
「前校長が一切手を付けなかったものですから、物凄い量が溜ってるんですよ。今日中にやれとは言いませんから、少しずつでも片付けてくださいね」
「あ~、はい」
あの校長…………私も叩いておけばよかったわね。
今度会ったらぶん殴ってやろうかしら。
「よっと」
私は机に付いている椅子に座る。
お、結構良い椅子ね。
随分座り心地が良いわ。
これならずっと座っていられるわね。
「さてと…………え~と、なになに? テストで順番を公表するのは可愛そうなので、即刻中止してください。 えっ、なにこれ? 何かの苦情? こんなのが重要書類なの?」
「重要ですよ。子供達の親からの要望ですから。まあ無理な物もかなり有るので、出来ない物は破棄していいですよ。それじゃあ私は別の用があるので、後はお任せしますね」
「はいは~い。 いってらっしゃ~い」
ルクレチアがジロリと睨んで来ている。
このぐらい許して欲しいわ。
「え~と次は…………演劇の主役になれないから主役を増やして欲しい。 …………こんなのばっかりね。次は……はぁ……私の息子を一位にしてくださいって、そんなの自分でやらなきゃ意味ないでしょうが! 却下よ却下。あ~やっぱり受けるんじゃなかったわ~。一年もこんな事やってられないわね」
チラリと外を見ると、サボってる子供達を見つけた。
二人組の男の子の様ね。
歳は十二、いや、もう少し上かしら?
気分転換にちょっと行ってみようかしら。
…………まだ二つしか見て無いけどね。
私はその子達の後ろから声を掛けた。
一人は青色の髪の子、もう一人は黒色の髪の子だった。
「ねぇ、何してるの?」
「うわ! 誰だよお前、俺達に何か用かよ!」
「僕知ってる。このおば、ふぎゃ」
私は何か不穏な事を言おうとした奴を殴った。
「お姉さんは此処の校長になったグレモリアよ。よろしくね二人共」
「殴ったな! 体罰は駄目なんだよ! 親に言いつけてやる!」
「あらそうなの? 校長なんて何時止めても良いから、言いたいなら言いなさい。もしそんな事になったら貴方達がサボってたことも言いふらしてあげるわよ」
「う、分かったよ。今回だけ許してやるから、もうあっち行ってくれよ。どうせ僕達勉強なんて出来ないんだからいいだろ」
「俺達毎回最下位なんだ。勉強したって無駄なんだよ。校長が変わったって何も変わらないんだよ!」
私はあの却下した書類の事を思い出した。
主役になれない、順位を無くして欲しい、あれはこんな子達の為の言葉なんだろう。
順位が見えれば目標が持てて頑張れる人もいる。
でもその一方で、こうやって挫折してしまう子も出ているんだろう。
全員そうだったなら対処も簡単に出来るんだけど、この人によってはって言う物が、物凄く面倒臭い。
一人を助けたら一人が脱落するという堂々巡り、これを解消する方法なんて…………
「貴方達の名前を教えなさい。私が、ほんの少しだけ頑張れる様にしてあげるわ!」
「お姉ちゃんには出来ないよ。だっていっつも親が反対するんだもん、どんな事をしたって無理だよ」
「大人なんて皆僕達を馬鹿にしてるんだ。落ちこぼれ、落ちこぼれってさ」
「いいから名前を教えなさい! 早くしないと引っぱたくわよ!」
「う……俺はランツ。此奴はレイコットだよ」
青髪がランツ、黒髪がレイコットね。
「見ていなさいランツ、レイコット。私がこの学校を変えてあげるわ! もし変えられたら、貴方達ももう少しだけ頑張ってみるのよ」
「そんな事言って、出来なかったらどうするんだよ!」
「そうだよ、出来なかったら、姉ちゃんに酷い事してやるからな!」
「へぇ、良いわよ。それじゃあ約束だからね。じゃあ私行くから、二人共楽しみに待ってなさいね」
そう言うと私は校長室に戻った。
そこには私を待っているルクレチアさんが居たのである。
見られていたかしら?
「何処へ行っていたんですか校長先生、まだ仕事は進んでいない様ですが?」
「い、いやちょっとトイレに……ごめんなさいね」
やるなら早い方が良いわよね。
良し、ルクレチアさんに言ってみましょう。
「あの、ルクレチアさん、私この学校を変える事にしたから手伝ってください。もし手伝ってくれなくっても、勝手にやっちゃいますから。止めても無駄ですよ」
「いいえ無理です。学校と言うものは、法やしがらみに縛られて、あまり変な事は出来ない様になってるんです。もし何か変えてしまったら、親たちが黙っていませんよ」
「ふ~ん、でも私には関係無いわ。校長になったのも命令だし、首になるならそれでも良いもの。だから、それまでは徹底的にやってやるわよ! 貴方は如何するの? 私に付いて来る? それとも逃げ出すかしら?」
「今までにも、学校を変えようとした人は居たのですよ。その尽くが挫折し止めてしまいましたけどね。良いでしょう、お付き合いして差し上げます。 …………それで、何か手でもあるのですか?」
「そうね…………」
私はルクレチアにそれを説明した。
動かない順位を動かすには、それはこうだ。
まずは一位、これを不動にはさせない。
一位を取った人には、次回マイナス三十点を付ける。
そうなれば毎回一位は取る事は出来ない。
次は最下位からの加点、最下位からその上十人はプラス十点。
その上十人はプラス五点。
これで順位は毎回変わる事になる。
動かなかった順位が一つでも変われば、ほんの少しやる気がでるかもしれない。
まあ壱位を取った人はちょっと損をするけど、何か良い特典でも有れば、それでも目指してくれるはずよね?
私はそれを伝え終わると、早速実行に移す。
もちろん抵抗勢力は存在した。
自分達の順位を必死に守ろうとする親たちの勢力が。
ま、そんなものは私には関係無いし、五月蠅いから退学ね、って言ったら黙ったけどね。
よし次は何を変えてやろうかしら。 私は次の書類を見た。
え~と、これは生徒からかしら?
僕は恋をしています、あの子と一緒のクラスになりたいです。
って。 なる程、大丈夫よ!
この恋のキューピット、グレモリアに任せておきなさい!
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