一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。

秀典

6 校長の行く末

 ドンドンドン!


「アツシ居るんでしょ、出て来なさい! 前におっぱい触った借りを反してもらうわよ! ほら早く来なさい」


 扉の奥から声が聞こえて来る。
 この部屋には居るらしい。
 他にも女の声も聞こえて来る。


「アツシ、如何言う事だか説明してもらおうか。言い訳があるのなら聞いてやろう。さあ、言ってみろ!」


「はへ、ふひほひひはへへはへへはひ! ひょっひょはへ!」
(待て、口を握られていて喋れない! ちょっと待て!)


「そうか、言い訳は無い様だな。良し、一発で許してやる」


「はへ! ほへほひふほほほひへ! ひょっひょはっへふへ!  ふぐほあ! 
(待て! 俺の言う事を聞け! ちょっと待ってくれ!  ぐはぁ!)


 トットットットッ ガチャ


 扉を開けて出て来たのは女の子。


 この子は知ってるわ。
 確かストリーって子だったわね。
 丁度良いわね、この子が居るのなら、この子で良いわ。


「お前達がアツシの浮気相手か! そんなにアツシが欲しいなら私と勝負するがいい!」


「違うわよ、胸を触られたのはタダの偶然よ。アツシは私の趣味じゃないし、今日は貴方に用があるのよ」


「私に? 私に何の様なんだ? 何かおかしなことじゃないだろうな?」


「違うわよ、実はこの人がね…………」


 私は魔法学校の事を話した。
 そこの校長にグラミー達、女教師が何をされていたのかを。


「なる程、つまりその校長の事をなんとかしたいのだな。分かった、私も協力しよう。魔法学校が崩壊してしまったら、国の今後にも関わって来る。早急に対策を講じる必要があるからな」


「ありがとうございます! これであの校長を何とか出来るかもしれません!」


「うん、私から女王様に進言しておいてやろう。 …………そうだな、明日の夜作戦会議を開こうではないか。なるべく大勢の意見が聞きたい、その被害者達をなるべく大勢呼んでくれ。私も知り合いに声を掛けておく。そうだな、場所は…………」


「じゃあ、明日よろしくお願いします!」


「ああ、また明日」


「グラミーは皆に声を掛けなきゃね。私も帰るわ、じゃあ明日」


「はい、また明日」 


 私は二人と別れ、明日に備える事にした。
 どうせ朝にはニックスは来るだろう。
 適当にあしらって、誰か味方になってくれる人を探してみよう。


 そして次の朝。 当然の様にニックスが来た。


「師匠、今日は何をしますか! 何でも受けて立ちますよ!」


「そうね、じゃあ家の周りの草むしりでもして貰いましょうか。掃除をしながら自分の心も綺麗にするのよ。心を込めて一本ずつ引き抜きなさい。私はちょっと用事があるから、やれるだけやったら帰って良いわよ。別に無理して全部やる必要は無いからね」            


「分かりました師匠、僕に任せておいてください!」


「じゃあ任せたわ。それじゃあ出かけて来るから、後はよろしくね」


「はい!」


 まずアーモンを…………呼んでも役に立たなそうね。
 そうね、バールにしましょうか。
 伝令役なら何か役に立つかもしれないわ。
 でもあの人フラフラしてるから、探すのは苦労しそうね。
 兵士っぽい人に聞いてみれば何か分かるかしら?
 外門の兵士にでも聞いてみましょう。


 私は北にある外門へと移動し、見張りの兵士にバールの居場所を聞いてみる。


「こんにちは、あの、私グレモリアって言います。実はバールって人を探していて、その人の居場所知りませんか?」


「バール? いや、今日はまだ見かけていないな。何か用があるなら伝えておいてやるよ」


「じゃあ今日の夜、私の部屋へ来てくださいと伝えてください。大事な用事がありますので。これはお礼ですので取って置いてください」


 私はこの兵士達に、かなり多めにお金を手渡した。
 口約束だけでは信用出来ないし、これだけ渡せば忘れないだろう。
 まあ弟子からの収入もあるし、今の私なら、このぐらいは楽に払える。


「うお、こんなに? 分かった、彼奴は何時も此処に来る。絶対伝えてやるから楽しみに待ってるといい」


「さあ貴方も、どうぞ。ただし忘れたら許しませんよ?」


 近くに居たもう一人の兵士に念を押すと、私はフラフラとブラ付きながら家へと戻った。
 此処にニックスの姿はない。
 もう帰った後だろう。
 そこには大量の雑草が積み上げられていた。


 ニックスが相当頑張ったのだろう、そんなに強制した覚えはないのだけど。
 適当に止めれば良いのに。
 私も部屋に戻ろう。


 さてと、そろそろバールが来るかしら?
 部屋でも片付けながらまってましょう。


 コン コン コン ガチャ


「お~い、来ましたよ。まさか本当に呼ばれるとは思いませんでしたが、大丈夫ですよ、俺は優しいですから。それじゃあゆっくり楽しみましょうか」


 まさか部屋に呼ばれたから勘違いしてるのかしら?
 そんな事をする積りはないけれど、勘違いしてるならそれで良いわ。
 面倒臭いからそのまま連れて行きましょう。


「バール、此処じゃなんだから一緒に付いて来て。近くに良い場所があるの。ほら、こっちよ」


「まあ良いですけど、何処へ行くんですか? こんな所に何かあったかな?」


「付いてこれば分かるわよ」


 私はバールの手を握り、引っ張ってその場所へ連れて行く。
 家の階段を一つ登り、二つ登り、最後の階段を昇って行く。
 もうバールも気づいているだろう。
 しかし私は手を離してやらない。


「…………あの、何処行くんですか? この先ってイモータル様の所じゃ?」


「そうよ、そこに行くから連れて来たんじゃない。大丈夫、許可は貰っているわよ。貴方にはこれから働いて貰う事になってるのよ。いいから大人しく付いてきなさい。成功したら報酬も払ってあげるから頑張りなさい」


「これから仕事ですか? お金だけじゃ割に合いませんって。じゃあ私と一晩付き合ってくださいよ、ちゃんとリードしますから」


「そんなの嫌よ。まあキスぐらいならしてあげても良いけど、それで我慢しておきなさい。あんまりおかしなこと言ってると、女王様に言いつけるわよ」


「絶対ですからね! 後で無しとか言っても無理やりしてやりますからね!」


「あ~、はいはい。分かったから、女王様をお待たせしちゃ悪いでしょ。早く行くわよ」


 私達は最上階の扉を潜る。
 そこには女王様を中心に、女教師達がズラリと並んでいた。


 どうやら、私達が最後みたいだわね。


「さあこれで全員揃いましたね。それでは会議を始めますよ」


 女王様からの始まりの宣言が掛かり、女教師達は思い思いの言葉を喋り出した。


「女王様聞いてください! あの校長ったら毎日私のお尻を触って、油断してたら胸まで…………うううう…………」


「女王様、私なんて後から胸を揉まれて、今日も良い胸だとか言って来るんですよ! 許せない!」


「私なんて新人の頃倉庫に連れ込まれて無理やりキスを…………」


 全ての女教師が不満をぶちまけ続ける事一時間。
 流石に女王様も疲れたんじゃないだろうか。


「皆さんの不満は良く分かりました。同じ女として、その校長には制裁を与えなければなりませんね。では、不埒な校長には制裁を!」


「「「「「制裁を!」」」」


 全員が拳を上げて声を上げる。






 作戦開始時間は明日の昼、私達はその時が来るのを待った。 



コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品