一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。

秀典

7 捜査

 ルナーの事がべノムにバレ、エルは必死に説得しべノムにわかってもらえた。
 キメラ研究所別館によりルナーは色々な検査を受け、その能力は人の大人より強いと判明する。
 検査が終わり食事を取ろうとしたが、ルナーは小さな子供を得物と言い指をさした。
 エル達はそれを説得して、ルナーは納得したが、その一週間後事件が起こった…………


ベリー・エル(王国、兵士) フルール・フレーレ(王国、兵士)
ルナー(犬の様な女の子)


「エルちゃん起きて。昨日の夜遅くに家で寝ていた小さな男の子が殺されたらしいわよ。目撃者の話だと、襲ったのは青色の何かだったらしいわ」

 その朝、事件の詳細をフレーレさんに聞かされた。
 私は嫌な予感がしました。
 隣で寝ているこの子がもしかしたら……そんな考えが浮かぶ。
 でもルナーの口や爪には血の跡は見えないです。

 きっとこの子がやったんじゃない。
 早く犯人を見つけないと、この子が犯人認定されてしまいそうです。

「エルちゃん犯人を捜すわよね? 急がないと不味い事になりそうよ」

 私は頷き外を見ると、私の家の前には武装した兵士達が集まって来ていた。

 急ぎましょう。
 私は頷くと二人をを抱き上げ家から飛び出した。

 ルナーの事を知ってるのは五人。
 私、フレーレさん、フェルレースにべノム、あと一人が、ラグリウスです。
 他に言いふらされていなければですけど。
 その中で兵を動かす事が出来るのはべノムだけ。

 べノムにはすでに疑われてるという事でしょうね。
 まずはルナーを何処か安全な所に隠さないと。

 フェルレースの所は駄目でしょう。
 べノムには関わった人物として教えてあります。
 もう手が回されていてもおかしくないです。

 本当にルナーが暴走していても対処出来る人、その中で信用出来る人と言ったら、知り合いのレアスさんぐらいしか思い浮かばない。
 もしかしたら私の知り合いだということでマークされている可能性がありますけど、行ってみるしかないですね。

「レアスちゃんの所に行くのねー、でももう見張られてるみたいよ」

 レアスさんの家の前には、何人かの兵士が此方を見ています。
 やっぱり駄目ですか。
 このまま逃げ回るより、殺人現場へ行って、何か証拠を見つけた方がいいでしょう。
 空は別に私だけが飛べるわけじゃ……。

 そこで私は気付いた。
 べノムならもうこの場に現れても不思議じゃないのです。
 今居ないのはおかしいです。
 それに地上の兵ばかりで空の兵が一人もいない。
 もしかして捕まえる気がないのですかね?
 疑われてるのなら自分の手で解決しろ、とかですか?

「エルちゃん如何するの? このまま空を逃げ回る? それとも犯人を捜すのー?」

 当然犯人を捜します!
 まずは現場に行って何か手掛かりを探しましょうか。

「現場……どこ?」

 私はフレーレさんに質問した。

「殺人現場に行くのねー、確かべノムの家の近くのパン屋さんから、五件ぐらい隣だったかしら? でもまだ調べが入ってるんじゃなーい?」

 私はその方向に指をさす。

「……行こっ!」

 その部屋の中には誰も居ませんでした。
 荒らされた形跡も無いです。
 ただ一つ、血塗れのベットを除いてですけど。

 流石に死体は片付けられています。
 この状態を見ると、寝ている所を襲われたんでしょうね。
 親が居ない所を見ると、一緒に襲われたとか?
 もしかしたら療養所に運ばれたのかもしれませんね。

「エルちゃんこれ見て、青い毛が落ちてるわよー。この毛はルナーちゃんの毛とそっくりなんだけど……」

 ベットには、ルナーと同じ色の毛が幾つか落ちています。
 起こして話を聞きたいですけど、もし美味しかったなんて言われたら、私はこの子を手放さなきゃなりません。
 この子が起きる前に、もう少しだけ何か手掛かりを探してみましょう。

 部屋を見渡してみると、母親と一緒に描かれた姿絵があります。
 父親の姿はなく、どうやら二人暮らしのようです。
 殺されたのはこの男の子でしょう。

 ん? タンスの横に幾つか傷が付けられていますね。
 たぶんこれは男の子の成長の記録でしょう。
 大きさはルナーより少し大きいぐらいでしょうか。

 少しだけ希望が見えてきました。
 確かルナーは自分より小さな子を得物だと言っていました。
 この子はルナーより大きいです、得物という事にはならないと思います。
 希望的観測ですけどね……。

「あふ、お姉ちゃんおはよ? ここどこ? もしかしてまた注射するの?」

 やっと起きましたか。
 ねぼすけさんですね。

「ルナー……おは……よう」

「ルナーちゃんおはようー。ねぇ、この場所に覚えは無~い?」

 ルナーが周りを見渡している。
 ベットの上を見るとビクリとしている。

「何で血だらけなの? お姉ちゃん達怪我したの?」

「本当に知らないのねー? じゃあ私達はそれを信じるわ」

 他には何も無いですね。
 次は……殺された子の母親を探してみましょうか。
 もし事件を目撃していたなら、何か分かるかもしれません。

「しん……りょう……じょ」

 私は母親が居そうな診療所を指さし、その場所へ三人で向かいました。
 入り口や、中にも兵士達が見張って居ましたが、私達に手を出しては来ません。
 予想通り捕まえる気はないんでしょうね。
 もしかしたらただ見張っていろと言われたけだったり?

「さてと、何処にいるかしら~? エルちゃんどうやって探すの~?」

 ほらあそこ、扉の前に兵士が見張っていますよ。
 たぶんあれでしょう。
 やはり兵士は私達を止めません。
 私達は兵士を無視して、その扉へと入りました。

 部屋の中、母親だと思われる女性が泣いている。
 傷は治されている様ですが、子供を殺された事がショックなのでしょう。

「……あの……」

「何、まだ何か聞きたいんですか! いい加減にしてよ! どれだけ私を苦しめるのッ! もう何度も話したでしょ!」 

 この反応は当然でしょう。
 でも聞かせて貰いますよ。
 貴方の子供の仇を取るためにも。

「お願い、もう一度だけ教えて。犯人を見つたら私達が退治してあげるから」

「! な、なにを言ってるの、そこにいるじゃない! そいつよ、そいつが私の子供を! 早く殺してよ! 早く!」

 その母親は、ルナーを見ると発狂している。
 でもまだ聞きたい事は聞けていない。
 この質問で全てが分かるはずです。

「大きさ……は?……どう?」

「大きさなんて! なんて……違う、違うわ。もっと大きかった。きっと此奴の兄妹よ! 早く見つけてよ、早く!」

「大丈夫よ、私達がきっと見つけ出してあげるわ。だから安心して待っていてね」

 やっと欲しかった答えに行きついた!
 私達は病院を飛び出すと、空へと上がる。
 この国に潜んでいるのはルナーと同じ種族、別の個体です!
 きっとまた夜に動く。
 それまでに罠を張ろう。

 そしてその夜、この部屋には子供が寝ている。
 寝ているのはルナーじゃないです、他の小さな女の子。
 窓は開け放たれ、そしてほんの少しの子供の血の臭い。
 私は子供を餌にした。

 シュタッ

 窓際に何かの音がする。
 きっと犯人だ。
 私は隠れ潜み、子供が殺されるのを待っています。
 そして犯人が……その大きな爪を……小さな女の子に振り下ろした!

 子供の腹から血が溢れるている。
 もう犯人は確定しました。
 私はクローゼットから跳び出し、剣を取り出した。

 もう逃げ場はありませんよ!
 殺された女の子の仇を討ってあげます!

 青い狼、ルナーと同じ個体。
 ルナーがあのまま成長してたらこうなってたんでしょう。

 青い狼は手を止めて此方を見ている。
 もう良いでしょう、止めを刺してあげますよ。
 だから少し抑えていてくださいね。
 狼は殺された女の子に手を掴まれた。

 べノムッ!

 私は慈悲などかけず、一撃でその首を叩き斬った!
 先ほどの女の子は、魔法で姿を変えたべノムでした。
 爪の対策もしてあるし怪我もないでしょうね。

「俺はあの子をお前達に殺させてやろうと思っていたんだ。まさか別の奴が居たとはなぁ。事件はこれで解決したが、あの子もこうならないように気を付けることだな」

 分かっていますよ!
 でもそんな事にはさせませんから、安心しててくださいね!

「それから、この種類のキメラがまだいるかもしれねぇ。夜の見回りの強化をしないとな」

 そうですね、これが繁殖しだしたら大変です。
 徹底的に見つけ出して駆除してしまいましょう。
 後の事はべノムに任せ、私はルナーが待つ家へと帰った。

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