一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
5 微かな闇を追う
キメラ研究所へと忍び込んだべノムとロッテ、棚の扉を開けた瞬間おかしな敵が現れた。
その歩みは鈍く、とてもべノム達の敵にはならない。
しかしロッテは姿絵を発見し、その敵に同じ特徴があるのを発見する。
音を立てる事で意思の疎通に成功したが、その敵の案内により隠された資料を発見した。
そこに書かれた内容は今まで行われてきたキメラ研究所の闇だった。
そしてべノムは目の前の敵を…………
べノム・ザッパー(王国、探索班) アスタロッテ(べノムの部下)
「行くぞロッテ、奴をどうにかして捕まえるんだ!」
俺はロッテを抱きしめ移動を始めた。
「うん、絶対捕まえるよ!」
昼間の戦闘後には逃げた男の手配は回してあるのだが、しかし今だに発見されてなかった。
外壁周りの警備兵にも通達を出してあり、王国を出たとは思えないが?
「でもどこを探すの? 何処に行ったのか分からないよ」
ロッテの質問に。
「そうだな、奴の住居は徹底的に調べられているだろう。奴は誰かに匿われているか、それとも何処かに隠れているのか。俺達は奴の交友関係なんてしらねぇからな。出来る限り隠れられそうな場所を探すぞ」
俺は少し考えそれに答えた。
この王国はタイタンに壊されてから復興しているが、復興した時に綺麗に整理され、隠れられそうな場所は少なくなっている。
王国内部に幾つかある小さな森林や仮に作られた土の家の密集地、そして一番可能性があるのが闘技場と呼ばれる施設なのだ。
熱狂的な戦闘ファンの意見を聞き造られたのが闘技場では、戦闘に勝ち抜いた者は絶大な権力を持つ事が出来るという。
そしてその王者なのだが、ゼノという名で、決して良い人物とは言えない。
闘技場の中では戦う度に相手を瀕死の状態にしたり、時には息の根を止めてしまったりと相当危険な人物だった。
真偽は知らないが、悪人との繋がりもあると聞いた事がある。
この格闘場の内部は秘匿され、選手かその関係者しか立ち入る事が許されていない。
それとキメラ化した者達の参加も認められていない。
まあ、俺達が居たら勝ち目がねぇからな。
「やっぱり此処だよな」
で、結局は闘技場の前まで来ていた。
その施設は所々壊されているが、そのまま使われて現在も稼働している。
「如何するの? 選手登録しちゃう?」
ロッテは俺を選手にしたいようだ。
「疲れる事はしねぇよ。それに俺は参加出来ねぇからなぁ。まあ変身魔法を使って選手に化けるさ。お前はあれだ、俺の恋人役でいいよな?」
俺は方法をロッテに伝えた。
「恋人役ぅ?」
ロッテが微妙な顔をしている。
俺と恋人になるのがそんなに嫌なのか?
少しだけ傷つくぞ。
「嫌なら別の所を探してろ、俺は中を見て来るからな」
俺は一人で行くことを決めたのだけど。
「勿論やるわ! でも別に役じゃなくても良いんだよ」
ロッテはやる気をだしたようだ。
「今冗談言ってる暇は無いぞ。時間が経つ程、王国がまた危険になっちまうからな」
適当な冗談は軽く躱し、選手らしき人物を捜している。
「分かったわよ!」
ロッテはなぜか怒りだした。
俺には訳が分からんぞ。
それから闘技場の入り口で見張り、選手と思われる人物に話を聞きいた。
そいつに金を渡すと、俺はそいつそっくりに体を変える。
身長も俺と同じぐらいで、横幅は少し大きい。
化けたそいつの名前は、ブロードと言うらしい。
内部の情報もある程度聞く事が出来、そして俺達は闘技場内部へと潜入する。
「ようブロード、もう用事は済ませたのか?」
軽そうな革で出来た防具を着た男が俺に話しかけて来た。
名前を知っているならブロードの知り合いなのだろう。
知り合いとなると、此奴も選手なのか?
返事をしたいが、流石に声までは変えられねぇからなぁ。
さて如何するか……。
「ああごめんね、さっき喧嘩して喉をぶっ叩いたら声が出なくなっちゃったの」
ロッテは喉を潰すような仕草をみせる。
「うを、随分と怖ぇ女に手を出したなぁ。もし次何かやったら刺されるんじゃねぇのか?! まあ尻に敷かれない様に気を付けな」
ロッテの機転でやり過ごす事が出来たようだ。
その男と別れ、闘技場の王者が居るエリアにまで進む。
俺達の目的は、この闘技場の王者の確かゼノという男に会う事だ。
エリアの入り口前に居る俺達は、そのまま何気なく進もうとしていた。
「じゃあ行くぞ」
「おっけー!」
俺はロッテに声をかけて進み始めた。
だが俺達がその先に進もうとしていた時。
「あ、居た居た、ブロードさん、今日は試合が組んであるんだから、ちゃんと出場してくださいよ。ほらこっちです、早くしてください。もう何度も欠場なんて許しませんからね。この試合でなきゃ資格を剥奪しますよ!」
此処の職員と思われる男に呼び止められてしまう。
俺は引きずられ、試合会場まで連れて来られてしまった。
戦わないつもりだったんだがなぁ、まあ仕方ねぇか。
舞台にまで引きづられた俺は、相手の前に立たされていた。
目の前には大きな斧を持った大男が居て、俺よりも頭二つはデカイ。
かなり太っていて、上半身は裸の男だ。
俺はブロードに変身しているが、このままでは戦いづらい。
外套を使っても良いが、この姿だと素手で相手を切り裂いた様に見えるだろうか?
それは流石におかしいだろう。
「ロッテ、武器がねぇんだ、お前の剣を貸してくれよ」
「おっけー、でも傷付けないでね? 最近買い換えたばっかりなんだから」
俺はロッテから剣を受け取る。
その剣はロッテがこだわって作った物だ。
重さから長さ、握りもロッテに合わせて作ってあった。
とは言え……あの大きな斧を受けたら折れるか、もしくは欠けるだろう。
そうなれば弁償は免れない。
「なるべく頑張るぜ。まあ折れたら諦めてくれ」
「やっぱり返して! 武器なんて使わなくても勝てるでしょ!」
俺はロッテの声を聞こえない振りをして、男との試合に挑む。
「こらー! 返せー!」
まだロッテの声が聞こえてくる。
この剣が余程お気に入りだったのだろうか?
一応壊す気はないが、もし壊れたらもっと良いのを買ってやらなければ。
グオオオオオオオオオオオオン!!
大きなドラが鳴り試合の時間が来た。
闘技場の中心に放り出され、先ほどの男と対面する。
「今日は逃げないんだな、借金で首でも回らなくなったのか? まあ出て来たなら俺の斧で真っ二つにしてやるぜ!」
なる程、ブロードが外に出たのは、此奴と対戦したくなかったからか。
……そういえば此奴の名前は何だろう?
まさか此奴がゼノじゃないだろうな?
まあ、そんなうまい話しが有る訳ないか。
「行くぞ!」
俺は男へと向かう。
でかい相手には足元を狙うのが有効だ。
地面を滑り、足元を狙い、そして斬る!
ガキイイイイイイイイイイン!
確かに斬ったと思ったのだが、相手にダメージはない。
この金属がぶつかった様な音は、ズボンの下に何か仕込んでいるな。
「馬鹿が、真っ二つになっちまいな!」
大きな斧が俺の頭上に迫る。
だがその程度の速さでは、俺に傷一つ付けられないぜ!
斧は俺の横を通り過ぎ、地面へと突き刺さる。
そこへ相手の腕を狙って軽く斬り付けた。
「あぎゃあああああああああああ!」
斧は手放さなかったな。
此奴もそこそこ強いんだろう。
そのまま剣を反し、もう一度斬りつける。
二度目のそれは腕の皮を斬っただけで終わったようだ。
「お前、まさかブロードじゃないのか! あのブロードがこんなに強いはずはない。お前は誰だ!」
相手は俺を疑っている。
「そりゃお前の気のせいだ。俺の何処がブロードじゃないって? 何処からどう見てもブロードだろ。太り過ぎて夢でも見たんじゃねぇのかよ?」
俺は相手の足を狙う、何か仕込んでるのは知ってるがそんな事は関係ない。
ガキイイイイイイイイイイン!
右腕で足を斬り付け、その瞬間武器を持っていない左腕を使い、マントで相手の足を斬り裂いた。
かなりの速度でやったのだ、周りには剣で断ち切ったようにしか見えないだろう。
姿は変わっているが、俺の能力は一切変わっていないからな。
「ぎやああああああああああああ!」
足に傷を受けた為、巨大な体が崩れ落ちる。
「んじゃ、このブロード様の勝ちだな!」
鼻先に剣を突きつけ勝利宣言をした。
男は斧を手放し、這いつくばって逃げて行く。
「うおおおおおおおおおおおおおおお! あの万年負け続けのブロードが勝ちやがった! こいつは とんでもねぇ大穴が来たぞ! 掛け率は幾つだ!」
見物客が煩い。
というか此奴そんなに弱かったのか?
だったらちょっとやり過ぎたかもな。
まあ後の事は本人に任せようか。
そして俺は剣を鞘に収め。
……?
もう一度だ、俺は剣を鞘に収め……収まらんぞ……。
見ると剣はひしゃげ、先端が微妙に曲がっている。
まあ鉄っぽい物に俺の力で二度も思いっきり叩きつければ、この剣もいかれるよなぁ。
やっぱり買い替えかよ、オーダーメイドの剣なんて高いだろうなぁ。……はぁ。
舞台から降り俺は、見たら絶対怒りそうなロッテの元へと戻っていた。
折れた剣を渡したのだが。
「ぎゃああああああああ! 私の剣がああああ! すっごい髙かったのにいいいいいい! べノム弁償して貰うからね!」
ロッテからはものすごい怒られてしまった。
「分かったから、これが終わったらそれより良いの買ってやるよ。だから大声は出すなよ。それと俺の名前は出すな」
これ以上騒がれたくないからと、俺は弁償を受け入れた。
「絶対だからね! 約束破ったら酷いんだからね!」
それでも騒ぐからあんまり意味がなさそうだ。
「分かった分かった。ほら行くぞ」
俺達はゼノの居るエリアへと進んで行った。
その歩みは鈍く、とてもべノム達の敵にはならない。
しかしロッテは姿絵を発見し、その敵に同じ特徴があるのを発見する。
音を立てる事で意思の疎通に成功したが、その敵の案内により隠された資料を発見した。
そこに書かれた内容は今まで行われてきたキメラ研究所の闇だった。
そしてべノムは目の前の敵を…………
べノム・ザッパー(王国、探索班) アスタロッテ(べノムの部下)
「行くぞロッテ、奴をどうにかして捕まえるんだ!」
俺はロッテを抱きしめ移動を始めた。
「うん、絶対捕まえるよ!」
昼間の戦闘後には逃げた男の手配は回してあるのだが、しかし今だに発見されてなかった。
外壁周りの警備兵にも通達を出してあり、王国を出たとは思えないが?
「でもどこを探すの? 何処に行ったのか分からないよ」
ロッテの質問に。
「そうだな、奴の住居は徹底的に調べられているだろう。奴は誰かに匿われているか、それとも何処かに隠れているのか。俺達は奴の交友関係なんてしらねぇからな。出来る限り隠れられそうな場所を探すぞ」
俺は少し考えそれに答えた。
この王国はタイタンに壊されてから復興しているが、復興した時に綺麗に整理され、隠れられそうな場所は少なくなっている。
王国内部に幾つかある小さな森林や仮に作られた土の家の密集地、そして一番可能性があるのが闘技場と呼ばれる施設なのだ。
熱狂的な戦闘ファンの意見を聞き造られたのが闘技場では、戦闘に勝ち抜いた者は絶大な権力を持つ事が出来るという。
そしてその王者なのだが、ゼノという名で、決して良い人物とは言えない。
闘技場の中では戦う度に相手を瀕死の状態にしたり、時には息の根を止めてしまったりと相当危険な人物だった。
真偽は知らないが、悪人との繋がりもあると聞いた事がある。
この格闘場の内部は秘匿され、選手かその関係者しか立ち入る事が許されていない。
それとキメラ化した者達の参加も認められていない。
まあ、俺達が居たら勝ち目がねぇからな。
「やっぱり此処だよな」
で、結局は闘技場の前まで来ていた。
その施設は所々壊されているが、そのまま使われて現在も稼働している。
「如何するの? 選手登録しちゃう?」
ロッテは俺を選手にしたいようだ。
「疲れる事はしねぇよ。それに俺は参加出来ねぇからなぁ。まあ変身魔法を使って選手に化けるさ。お前はあれだ、俺の恋人役でいいよな?」
俺は方法をロッテに伝えた。
「恋人役ぅ?」
ロッテが微妙な顔をしている。
俺と恋人になるのがそんなに嫌なのか?
少しだけ傷つくぞ。
「嫌なら別の所を探してろ、俺は中を見て来るからな」
俺は一人で行くことを決めたのだけど。
「勿論やるわ! でも別に役じゃなくても良いんだよ」
ロッテはやる気をだしたようだ。
「今冗談言ってる暇は無いぞ。時間が経つ程、王国がまた危険になっちまうからな」
適当な冗談は軽く躱し、選手らしき人物を捜している。
「分かったわよ!」
ロッテはなぜか怒りだした。
俺には訳が分からんぞ。
それから闘技場の入り口で見張り、選手と思われる人物に話を聞きいた。
そいつに金を渡すと、俺はそいつそっくりに体を変える。
身長も俺と同じぐらいで、横幅は少し大きい。
化けたそいつの名前は、ブロードと言うらしい。
内部の情報もある程度聞く事が出来、そして俺達は闘技場内部へと潜入する。
「ようブロード、もう用事は済ませたのか?」
軽そうな革で出来た防具を着た男が俺に話しかけて来た。
名前を知っているならブロードの知り合いなのだろう。
知り合いとなると、此奴も選手なのか?
返事をしたいが、流石に声までは変えられねぇからなぁ。
さて如何するか……。
「ああごめんね、さっき喧嘩して喉をぶっ叩いたら声が出なくなっちゃったの」
ロッテは喉を潰すような仕草をみせる。
「うを、随分と怖ぇ女に手を出したなぁ。もし次何かやったら刺されるんじゃねぇのか?! まあ尻に敷かれない様に気を付けな」
ロッテの機転でやり過ごす事が出来たようだ。
その男と別れ、闘技場の王者が居るエリアにまで進む。
俺達の目的は、この闘技場の王者の確かゼノという男に会う事だ。
エリアの入り口前に居る俺達は、そのまま何気なく進もうとしていた。
「じゃあ行くぞ」
「おっけー!」
俺はロッテに声をかけて進み始めた。
だが俺達がその先に進もうとしていた時。
「あ、居た居た、ブロードさん、今日は試合が組んであるんだから、ちゃんと出場してくださいよ。ほらこっちです、早くしてください。もう何度も欠場なんて許しませんからね。この試合でなきゃ資格を剥奪しますよ!」
此処の職員と思われる男に呼び止められてしまう。
俺は引きずられ、試合会場まで連れて来られてしまった。
戦わないつもりだったんだがなぁ、まあ仕方ねぇか。
舞台にまで引きづられた俺は、相手の前に立たされていた。
目の前には大きな斧を持った大男が居て、俺よりも頭二つはデカイ。
かなり太っていて、上半身は裸の男だ。
俺はブロードに変身しているが、このままでは戦いづらい。
外套を使っても良いが、この姿だと素手で相手を切り裂いた様に見えるだろうか?
それは流石におかしいだろう。
「ロッテ、武器がねぇんだ、お前の剣を貸してくれよ」
「おっけー、でも傷付けないでね? 最近買い換えたばっかりなんだから」
俺はロッテから剣を受け取る。
その剣はロッテがこだわって作った物だ。
重さから長さ、握りもロッテに合わせて作ってあった。
とは言え……あの大きな斧を受けたら折れるか、もしくは欠けるだろう。
そうなれば弁償は免れない。
「なるべく頑張るぜ。まあ折れたら諦めてくれ」
「やっぱり返して! 武器なんて使わなくても勝てるでしょ!」
俺はロッテの声を聞こえない振りをして、男との試合に挑む。
「こらー! 返せー!」
まだロッテの声が聞こえてくる。
この剣が余程お気に入りだったのだろうか?
一応壊す気はないが、もし壊れたらもっと良いのを買ってやらなければ。
グオオオオオオオオオオオオン!!
大きなドラが鳴り試合の時間が来た。
闘技場の中心に放り出され、先ほどの男と対面する。
「今日は逃げないんだな、借金で首でも回らなくなったのか? まあ出て来たなら俺の斧で真っ二つにしてやるぜ!」
なる程、ブロードが外に出たのは、此奴と対戦したくなかったからか。
……そういえば此奴の名前は何だろう?
まさか此奴がゼノじゃないだろうな?
まあ、そんなうまい話しが有る訳ないか。
「行くぞ!」
俺は男へと向かう。
でかい相手には足元を狙うのが有効だ。
地面を滑り、足元を狙い、そして斬る!
ガキイイイイイイイイイイン!
確かに斬ったと思ったのだが、相手にダメージはない。
この金属がぶつかった様な音は、ズボンの下に何か仕込んでいるな。
「馬鹿が、真っ二つになっちまいな!」
大きな斧が俺の頭上に迫る。
だがその程度の速さでは、俺に傷一つ付けられないぜ!
斧は俺の横を通り過ぎ、地面へと突き刺さる。
そこへ相手の腕を狙って軽く斬り付けた。
「あぎゃあああああああああああ!」
斧は手放さなかったな。
此奴もそこそこ強いんだろう。
そのまま剣を反し、もう一度斬りつける。
二度目のそれは腕の皮を斬っただけで終わったようだ。
「お前、まさかブロードじゃないのか! あのブロードがこんなに強いはずはない。お前は誰だ!」
相手は俺を疑っている。
「そりゃお前の気のせいだ。俺の何処がブロードじゃないって? 何処からどう見てもブロードだろ。太り過ぎて夢でも見たんじゃねぇのかよ?」
俺は相手の足を狙う、何か仕込んでるのは知ってるがそんな事は関係ない。
ガキイイイイイイイイイイン!
右腕で足を斬り付け、その瞬間武器を持っていない左腕を使い、マントで相手の足を斬り裂いた。
かなりの速度でやったのだ、周りには剣で断ち切ったようにしか見えないだろう。
姿は変わっているが、俺の能力は一切変わっていないからな。
「ぎやああああああああああああ!」
足に傷を受けた為、巨大な体が崩れ落ちる。
「んじゃ、このブロード様の勝ちだな!」
鼻先に剣を突きつけ勝利宣言をした。
男は斧を手放し、這いつくばって逃げて行く。
「うおおおおおおおおおおおおおおお! あの万年負け続けのブロードが勝ちやがった! こいつは とんでもねぇ大穴が来たぞ! 掛け率は幾つだ!」
見物客が煩い。
というか此奴そんなに弱かったのか?
だったらちょっとやり過ぎたかもな。
まあ後の事は本人に任せようか。
そして俺は剣を鞘に収め。
……?
もう一度だ、俺は剣を鞘に収め……収まらんぞ……。
見ると剣はひしゃげ、先端が微妙に曲がっている。
まあ鉄っぽい物に俺の力で二度も思いっきり叩きつければ、この剣もいかれるよなぁ。
やっぱり買い替えかよ、オーダーメイドの剣なんて高いだろうなぁ。……はぁ。
舞台から降り俺は、見たら絶対怒りそうなロッテの元へと戻っていた。
折れた剣を渡したのだが。
「ぎゃああああああああ! 私の剣がああああ! すっごい髙かったのにいいいいいい! べノム弁償して貰うからね!」
ロッテからはものすごい怒られてしまった。
「分かったから、これが終わったらそれより良いの買ってやるよ。だから大声は出すなよ。それと俺の名前は出すな」
これ以上騒がれたくないからと、俺は弁償を受け入れた。
「絶対だからね! 約束破ったら酷いんだからね!」
それでも騒ぐからあんまり意味がなさそうだ。
「分かった分かった。ほら行くぞ」
俺達はゼノの居るエリアへと進んで行った。
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