一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
16 プレゼント
平和会議での女王様の笑顔に恋をしたアツシは、ストリーとの別れを告げる。
だがストリーは王国への叛逆だと剣を振り回し、アツシへと襲い掛かった。
アツシはそれを逃げ回り、女王様の部屋へとたどり着く。
しかし女王様はアツシの思いをきっぱりと断ると、ストリーはアツシを許す。
アツシはストリーの部屋で泣き、ストリーをベットに押し倒したのだが、しかし隠れていたルルムムに頭を掴まれ、物騒な事を言われて部屋から追い出されてしまった…………
タナカアツシ(異界から来た男)  ストリー(ガーブルの娘)
カールソン (帝国の会議での代表)
帝国への滞在時間も終わり、もうすぐ王国へ帰る時間だった。
俺はその間に町を探索している。
あの日からストリーは俺に寄って来なくなっていた。
もしかしたら、ルルムムに何か吹き込まれたのかもしれない。
仲直りの為に、何かプレゼントでもと探しているのだが、良いものがさっぱり見つからないのだ。
服や宝石の付いたアクセサリーでは俺には手が届かないし、小さな小物も結構高い。
量産とか出来ないから全部手作りなんだろう。
露店に並ぶ物を見ていると、月型と星型の髪飾りがあった。
ストリーが付けている所を想像してみるがやっぱりなんだか似合っていない。
それにストリーは金髪だから、黄色い物では目立たなくなってしまうだろう。
う~ん、ストリーには、もう少し恰好良い物の方が似合うんだろうな。
「お、これなんか良いんじゃないか」
俺が手に取ったそれは、鳥の羽根で作られた髪飾りだ。
見た事も無い白い羽根の形で、片方の縁取(ふちど)りに、赤い枠がはめられ、羽根の先端も赤く染め上げられている。
きっとこれならストリーにも似合うだろう。
「おばさん、この羽根の飾りをください」
俺は店のおばさんに声を掛け、髪飾りを購入した。
まだ集合まで時間はあるけど、置いて行かれたら俺に帰る手段なんてない。
少し早くても集合場所へ向かうとしよう。
宿泊した宮殿の入り口には、もう全員が到着している。
ストリーの姿も確認出来たし、今の内にプレゼントを渡しておこう。
「なあストリー……」
俺の言葉を無視して離れて行ってしまうストリー。
俺が何か悪い事したかって言っても、思いっきりしてるんだよなぁ。
ストリーを何度も振ったり、別の女にちょっかい出したり、むしろ今まで見限られなかった方が不思議だ。
結局プレゼントは渡す事ができず、出発の時間が来てしまった。
「それでは皆さんまた会いましょう」
帝国代表のカールソンが、何故か帝国側に手を振っている。
どうやら視察という名目で、エルに会いに行くらしい。
一応帝国側の要人なので、女王様と一緒の馬車に乗り込んでいる。
俺の体調は万全で、腰には剣も差した。
「良し、行くか!」
そう気合を入れて、馬車の横へ配置についた。
行きはずっと馬車に乗ってたからな、今回はもう少し頑張ってみよう。
一日目。
俺は気合を入れて歩き続けた。
敵も何匹か出て来たが、あまり強くないらしく、簡単に退治出来た。
もちろん、俺以外の奴の手でだ。
王国への道は少しずつ縮まって行くが、ストリーとの会話はまだ無い。
これは完全に避けられているな。
休憩時間もルルムムと一緒だし、夜のテントでも一緒に寝るみたいだ。
そんな中に俺が無造作に入っていったら、ルルムムに殺られてしまう。
ストリーと話すチャンスを待つしかないな。
二日目。
一日歩き回った俺の足はパンパンだ。
気合だけで何とかなるもんじゃないと分かった俺は、馬車の後ろの指定席で座り込み、暇なのでボーとしている。
でも来た時よりは歩けたと思うよ、うん。
敵の襲撃はなく、相変わらずストリーとの距離は遠い。
このまま自然消滅とか無い……よな?
よし、話しかけてみよう。
そう決意した俺は、ルルムムを無視してストリーに話しかけた。
「なあストリー、ちょっと渡したい物があるんだけど。こっちへ来てくれないか?」
……返事が無い。
「お~いストリー、聞こえないのか? ストリー! おい、ストリーって!」
……駄目だ、これもしかして、マジで嫌われた?
こうなったら、一緒に付いて来たオッサンを使おう。
エルの事をネタにすれば何とかなるはずだ。
俺はカールソンの居るテントに向かい、話をした。
「おや貴方は、何か私に話でも?」
カールソンは、面識もないにも等しい俺の話に、不思議そうに聞き返して来た。
「じ、実はカールソンさん……あのテントにいるルルムムって女が、エルさんのいやらしい秘密を知ってるのです! 聞くなら今しかありませんよ!」
ちょっとわざとらし過ぎたか?
「な、何だってええええええええええええ!」
たったそれだけの言葉に、カールソンは物凄く興味津々だ。
「ルルムムは一人の時しか教えてくれません。だから何とかして呼び出してください。教えてくれるのは今日だけですからね!」
俺は嘘の追撃をしかけた。
「ふふふ、私はエルさんの秘密の為ならどんな事でも致します。そう、それが例え小さな犯罪だろうとね!」
このオッサンの言葉に、ちょっとだけ心配になって来た。
もしかしてストーカーという奴だろうか?
頼む人材を間違えたかもしれない。
だがこの期を逃したら二度と話せない気がする。
「さあ、ルルムムのテントはあっちです!」
俺はテントが指さすと、オッサンはその体に似合わず迅速(じんそく)に動き出した。
近くに居た護衛の一人に話しかけ、ルルムムの事を話すと、護衛も客人の頼みを断る事が出来ず、テントからルルムムを呼び出している。
少し待つとルルムムが出てきて、オッサンと何処かへ消えて行った。
今しかチャンスは無い。
ストリーがテントに居る事は分かっているのだ。
俺はテントの入り口をくぐり、ストリーの前へと立った。
「!!」
俺の出現にストリーの体がビクリっとしている。
「ストリー、話に来たぞ」
「く、来るな! あっちへ行け。早く消えろ!」
ストリーが明確に俺を拒否している。
この態度はちょっと凹むなぁ。
話を聞く前に終わった気分だ。
だがまだ諦めるには早いか?
「ストリー俺の事嫌いになったか? なあ、ちょっと落ち着いて話しないか?」
俺はそう話しかけるのだけど。
「いいから帰れ! こ、こんな所に来るんじゃない! は、早く!」
ストリーは怯えるように縮こまっている。
「ストリー、これプレゼントだ。帝国の町で買って来たんだ。受け取ってくれないか?」
俺がストリーに近づくと、さっと後に下がっていく。
「そ、そこに置いといてくれ……」
なんか嫌われたというより怖がられているような……?
俺はスタスタとストリーの元へと歩いて行くが。
「ひっ……」
ストリーは完全に怯えてしまっている。
?……まさか。
「お前まさか、この間俺が押し倒したから怖くなったのか? 何度も裸も見てたのに? 何度かそんな事しようとしたのに?」
俺はその理由を理解し、なんとなく顔がにやけてしまう。
「あ、あれは私から行ってるからいいんだ! それに私は怖がってないから!」
ストリーは強がっているけど、その体は震えたままだ。
自分で行くのは良くても攻められるのは駄目なのだろうか?
あれ~、これはちょっと弱点を発見してしまったかぁ?
「じゃあちょっとそっちへ行くからな」
俺は躊躇わずにストリー近くに移動する。
「い、嫌だ! ……うわっ!」
ストリーの言葉を気にせずに、その横へとあぐらをかいた。
「これプレゼントだ」
そして大事にしまってあった、羽根の髪飾りを手渡す。
「う、うん……」
ストリーは照れながら受け取り、なんか小動物みたいで可愛い。
やばいぞストリー、何かムラムラする。
だが此処でまた怖がらせたら致命的だ。
「じゃあ俺行くから」
俺は肩の手を外し、ストリーの体へと抱き付いた。
「なっ、何処へ行く気だ。あっ、やめ……」
いかん止まらん!
体の言うことが効かない俺は、ストリーの胸を触ろうと手を伸ばした。
「ん、やめ……ッ止めろ! さっさと出て行け!」
一瞬ストリーの顔が赤くなるのだけど、俺はもの凄い力で弾き飛ばされてしまう。
「ぐはああああああああ!」
ストリーに頭突きを食らい、蹴り飛ばされ、テントから追い出されてしまった。
やり過ぎたぁ、本当はオデコにでもキスして優雅に去る予定が、なんかちょっと止まらんかった。
終わった、これは確実に終わった。
もう駄目だ、自分のテントに帰って泣こう。
「ア、アツシ……」
その声に俺は振り向くと、テント越しにストリーの影が見える。
「あの……その……プレゼントありがとう……じゃあな」
何だ、これはどっちだ?
また会いたいって事か?
それとも二度と来るなって事か?
さっぱり分からん。
よ、良し試してやるぞ。
「ああ、またな」
俺はストリーに挨拶をして答えを待った。
「……うん」
う、微妙な沈黙があったぞ。
まあ仕方無い、今日は戻るとするか……。
俺は自分のテントに戻り、やる気を出していた兄妹に沈める儀式を始めた。
だがストリーは王国への叛逆だと剣を振り回し、アツシへと襲い掛かった。
アツシはそれを逃げ回り、女王様の部屋へとたどり着く。
しかし女王様はアツシの思いをきっぱりと断ると、ストリーはアツシを許す。
アツシはストリーの部屋で泣き、ストリーをベットに押し倒したのだが、しかし隠れていたルルムムに頭を掴まれ、物騒な事を言われて部屋から追い出されてしまった…………
タナカアツシ(異界から来た男)  ストリー(ガーブルの娘)
カールソン (帝国の会議での代表)
帝国への滞在時間も終わり、もうすぐ王国へ帰る時間だった。
俺はその間に町を探索している。
あの日からストリーは俺に寄って来なくなっていた。
もしかしたら、ルルムムに何か吹き込まれたのかもしれない。
仲直りの為に、何かプレゼントでもと探しているのだが、良いものがさっぱり見つからないのだ。
服や宝石の付いたアクセサリーでは俺には手が届かないし、小さな小物も結構高い。
量産とか出来ないから全部手作りなんだろう。
露店に並ぶ物を見ていると、月型と星型の髪飾りがあった。
ストリーが付けている所を想像してみるがやっぱりなんだか似合っていない。
それにストリーは金髪だから、黄色い物では目立たなくなってしまうだろう。
う~ん、ストリーには、もう少し恰好良い物の方が似合うんだろうな。
「お、これなんか良いんじゃないか」
俺が手に取ったそれは、鳥の羽根で作られた髪飾りだ。
見た事も無い白い羽根の形で、片方の縁取(ふちど)りに、赤い枠がはめられ、羽根の先端も赤く染め上げられている。
きっとこれならストリーにも似合うだろう。
「おばさん、この羽根の飾りをください」
俺は店のおばさんに声を掛け、髪飾りを購入した。
まだ集合まで時間はあるけど、置いて行かれたら俺に帰る手段なんてない。
少し早くても集合場所へ向かうとしよう。
宿泊した宮殿の入り口には、もう全員が到着している。
ストリーの姿も確認出来たし、今の内にプレゼントを渡しておこう。
「なあストリー……」
俺の言葉を無視して離れて行ってしまうストリー。
俺が何か悪い事したかって言っても、思いっきりしてるんだよなぁ。
ストリーを何度も振ったり、別の女にちょっかい出したり、むしろ今まで見限られなかった方が不思議だ。
結局プレゼントは渡す事ができず、出発の時間が来てしまった。
「それでは皆さんまた会いましょう」
帝国代表のカールソンが、何故か帝国側に手を振っている。
どうやら視察という名目で、エルに会いに行くらしい。
一応帝国側の要人なので、女王様と一緒の馬車に乗り込んでいる。
俺の体調は万全で、腰には剣も差した。
「良し、行くか!」
そう気合を入れて、馬車の横へ配置についた。
行きはずっと馬車に乗ってたからな、今回はもう少し頑張ってみよう。
一日目。
俺は気合を入れて歩き続けた。
敵も何匹か出て来たが、あまり強くないらしく、簡単に退治出来た。
もちろん、俺以外の奴の手でだ。
王国への道は少しずつ縮まって行くが、ストリーとの会話はまだ無い。
これは完全に避けられているな。
休憩時間もルルムムと一緒だし、夜のテントでも一緒に寝るみたいだ。
そんな中に俺が無造作に入っていったら、ルルムムに殺られてしまう。
ストリーと話すチャンスを待つしかないな。
二日目。
一日歩き回った俺の足はパンパンだ。
気合だけで何とかなるもんじゃないと分かった俺は、馬車の後ろの指定席で座り込み、暇なのでボーとしている。
でも来た時よりは歩けたと思うよ、うん。
敵の襲撃はなく、相変わらずストリーとの距離は遠い。
このまま自然消滅とか無い……よな?
よし、話しかけてみよう。
そう決意した俺は、ルルムムを無視してストリーに話しかけた。
「なあストリー、ちょっと渡したい物があるんだけど。こっちへ来てくれないか?」
……返事が無い。
「お~いストリー、聞こえないのか? ストリー! おい、ストリーって!」
……駄目だ、これもしかして、マジで嫌われた?
こうなったら、一緒に付いて来たオッサンを使おう。
エルの事をネタにすれば何とかなるはずだ。
俺はカールソンの居るテントに向かい、話をした。
「おや貴方は、何か私に話でも?」
カールソンは、面識もないにも等しい俺の話に、不思議そうに聞き返して来た。
「じ、実はカールソンさん……あのテントにいるルルムムって女が、エルさんのいやらしい秘密を知ってるのです! 聞くなら今しかありませんよ!」
ちょっとわざとらし過ぎたか?
「な、何だってええええええええええええ!」
たったそれだけの言葉に、カールソンは物凄く興味津々だ。
「ルルムムは一人の時しか教えてくれません。だから何とかして呼び出してください。教えてくれるのは今日だけですからね!」
俺は嘘の追撃をしかけた。
「ふふふ、私はエルさんの秘密の為ならどんな事でも致します。そう、それが例え小さな犯罪だろうとね!」
このオッサンの言葉に、ちょっとだけ心配になって来た。
もしかしてストーカーという奴だろうか?
頼む人材を間違えたかもしれない。
だがこの期を逃したら二度と話せない気がする。
「さあ、ルルムムのテントはあっちです!」
俺はテントが指さすと、オッサンはその体に似合わず迅速(じんそく)に動き出した。
近くに居た護衛の一人に話しかけ、ルルムムの事を話すと、護衛も客人の頼みを断る事が出来ず、テントからルルムムを呼び出している。
少し待つとルルムムが出てきて、オッサンと何処かへ消えて行った。
今しかチャンスは無い。
ストリーがテントに居る事は分かっているのだ。
俺はテントの入り口をくぐり、ストリーの前へと立った。
「!!」
俺の出現にストリーの体がビクリっとしている。
「ストリー、話に来たぞ」
「く、来るな! あっちへ行け。早く消えろ!」
ストリーが明確に俺を拒否している。
この態度はちょっと凹むなぁ。
話を聞く前に終わった気分だ。
だがまだ諦めるには早いか?
「ストリー俺の事嫌いになったか? なあ、ちょっと落ち着いて話しないか?」
俺はそう話しかけるのだけど。
「いいから帰れ! こ、こんな所に来るんじゃない! は、早く!」
ストリーは怯えるように縮こまっている。
「ストリー、これプレゼントだ。帝国の町で買って来たんだ。受け取ってくれないか?」
俺がストリーに近づくと、さっと後に下がっていく。
「そ、そこに置いといてくれ……」
なんか嫌われたというより怖がられているような……?
俺はスタスタとストリーの元へと歩いて行くが。
「ひっ……」
ストリーは完全に怯えてしまっている。
?……まさか。
「お前まさか、この間俺が押し倒したから怖くなったのか? 何度も裸も見てたのに? 何度かそんな事しようとしたのに?」
俺はその理由を理解し、なんとなく顔がにやけてしまう。
「あ、あれは私から行ってるからいいんだ! それに私は怖がってないから!」
ストリーは強がっているけど、その体は震えたままだ。
自分で行くのは良くても攻められるのは駄目なのだろうか?
あれ~、これはちょっと弱点を発見してしまったかぁ?
「じゃあちょっとそっちへ行くからな」
俺は躊躇わずにストリー近くに移動する。
「い、嫌だ! ……うわっ!」
ストリーの言葉を気にせずに、その横へとあぐらをかいた。
「これプレゼントだ」
そして大事にしまってあった、羽根の髪飾りを手渡す。
「う、うん……」
ストリーは照れながら受け取り、なんか小動物みたいで可愛い。
やばいぞストリー、何かムラムラする。
だが此処でまた怖がらせたら致命的だ。
「じゃあ俺行くから」
俺は肩の手を外し、ストリーの体へと抱き付いた。
「なっ、何処へ行く気だ。あっ、やめ……」
いかん止まらん!
体の言うことが効かない俺は、ストリーの胸を触ろうと手を伸ばした。
「ん、やめ……ッ止めろ! さっさと出て行け!」
一瞬ストリーの顔が赤くなるのだけど、俺はもの凄い力で弾き飛ばされてしまう。
「ぐはああああああああ!」
ストリーに頭突きを食らい、蹴り飛ばされ、テントから追い出されてしまった。
やり過ぎたぁ、本当はオデコにでもキスして優雅に去る予定が、なんかちょっと止まらんかった。
終わった、これは確実に終わった。
もう駄目だ、自分のテントに帰って泣こう。
「ア、アツシ……」
その声に俺は振り向くと、テント越しにストリーの影が見える。
「あの……その……プレゼントありがとう……じゃあな」
何だ、これはどっちだ?
また会いたいって事か?
それとも二度と来るなって事か?
さっぱり分からん。
よ、良し試してやるぞ。
「ああ、またな」
俺はストリーに挨拶をして答えを待った。
「……うん」
う、微妙な沈黙があったぞ。
まあ仕方無い、今日は戻るとするか……。
俺は自分のテントに戻り、やる気を出していた兄妹に沈める儀式を始めた。
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