一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。

秀典

4 まおうぐんのにちじょう5 アツシの憂鬱

 この物語は何となく書きたくなったから書いた物です
 直接ストーリーと関係ありません。
 エロくないと思います。
 嫌な人はそっと閉じてね。


タナカアツシ (異界から来た男)     ガーブル (王国、親衛隊) 
ストリー   (ガーブルの娘)      ラヴィ―ナ(王国、王女)
べノムザッパー(王国、探索班)


 俺、タナカアツシは勝ち組だった。
 異世界に飛ばされる貴重な経験をし、そこで運命の彼女と出会った。
 そう、俺はその彼女と付き合っているのだ!
 しかし少しだけ悩みがある。
 その彼女がとても美しく、俺を夜の作業に誘ってくるのだが、何故か俺の兄弟が反応しないのだ。
 それはまさに今もだ。

「如何したアツシ、こっち来いや! さあガキでも作ろうじゃねぇか、がはははは!」

 彼女はベットの上で裸で大の字で寝ている。

「どうしたアツシ、早く掛かって来いよ。さあ早よ」

 俺も男だ、行ってやろうじゃないか。
 ストリーの胸を揉む。
 柔らかい、俺の兄弟がピクリと反応した。

「良いぞアツシ、その調子だ、がはははは!!」

 何だろうこの感じは、エロさが全く感じられない……。
 俺の兄妹は力なく倒れた。
 しっかりするんだ兄弟、楽園は目の前なんだぞ!

「アツシさっさと入れろや! 男なら立たんかい!」

 くそう、このままで終わってたまるものか!
 世界中の妄想よ、俺に力を分けてくれ!

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 俺の兄妹の頭に血が上り、力を増していく。

「そうだその調子だぞアツシ! 私との子供も目の前だぞ!」

 ストリーとの子供……。

(此処からは妄想です)

 仕事帰り、俺は愛するストリーの下へ帰って行く。
 そして元気よく家の扉を開けた。

「ストリー、今帰ったぞ」

「やっと帰って来やがったかこの野郎、オラさっさと行くぞ!」

 帰宅した瞬間挨拶も置き去りにされ、俺は腕を掴まれた。

「え? 何処に?」

「ガキ作るに決まってるだろうが。次で十人目だ。全力で頑張れよ!」

 そう言って俺は腕を引っ張られる。

「い、今帰って来たばっかりだよ? き、今日は止めにしないか?」

「うるせぇ、私がやるって言ったらやるんだよ! さっさと来やがれ」

 俺はストリーにより寝室のベッドに押し倒された。

「まってええええええええええええええええええええ!!!」

 俺の制止にも聞いてはくれないし、疲れ果てた体が更に疲れ果てて行く。

「がははははははははははははははははははは!」

 隣では赤ん坊が、がはがはと泣いていた。

(妄想終わり)

 いやいや無いよ、これは無い。
 絶対無いって。

 想像力が兄弟の力を奪い、倒れている。
 こ、ここまでか……。
 こんなはずでは無かった。
 俺はもっと出来るエロだと思っていた!

「気にするなアツシ、また頑張ろうぜ」

 こ、このままでは男の尊厳が……。
 こんな情けない姿を見せられないと、俺は部屋を飛び出した。
 だが俺がこの世界で頼れるのは、唯一べノムしかいない。
 だから俺はべノムの家に向かって、扉を思い切ってバンと開いた。

「べノムさん、俺を男にしてください!」

「はあ? お前は何を言ってんだ!」

 驚いているべノムに、俺は包み隠さず事情を話した。

「要は立てば良いんだろ? 王国には神秘の薬がある。それを飲めばどんな老人でも元気になるという物があるんだが。それを探し出せばきっと上手く行くだろう」

「で? それは何処に?」

 俺は両手を広げて聞き返した。

「王国がこんな事になる前なら案内してやれたがなぁ、残念ながら今店主が何処にいるのか分からねぇんだよ」

「じゃあ無理じゃないか!」

 俺は頭を抱えるのだが。

「まあ待つんだアツシ。こういう物は何錠か溜めて持ってるはずだ。一人持っていそうな奴が居るじゃないか。お前も会っていたはずだぞ」

 知ってる奴?
 ん? 誰だ?
 俺が会った事がある奴なんてそんなに居ないぞ?

「ひ、ヒントをくれ!」

 俺は必死にヒントを求めた。

「薬を使うと老人でも元気になるって言っただろ。それに子沢山、お前があった事が有る、まだ分からねぇか?」

「分からん教えてくれ」

「じゃあもう一つヒントだ、お前の関係者だよ」

 関係者?
 この世界に関係者なんていたか? 
 いや待てストリーが俺の関係者だとしたら、あの爺か!
 条件にピッタリ合うじゃないか!

「ガーブルの爺か!」

「そうだよ、本当に持ってるか知らんけどな」

「サンキュー!!」

 俺ははガーブルに会いに、この建物の最上階へと赴いた。
 最上階の扉のを叩きガーブルを呼ぶ。

「ガーブルさん、頼みがあるんだ出て来てくれ!」

「何だ騒々しい、大声を出すんじゃない。子供達が起きてしまうではないか」

 扉を少し開けそこからガーブルが顔を出している。

「爺さんに相談があるんだ。実は老人も元気になる神秘の薬を探しているんだ!」

「……何の事だ? わしゃ知らんよ?」

 爺は目を逸らしとぼけている。
 その程度でとぼけられていると思ったら大間違いだぞ!

「爺さん、一錠で良いんだ。俺に渡してくれないか?」

「ふう、分かった、一錠だけだぞ。店が無くなってもう薬が少ないんじゃ。それ以上はやらんぞ」

 ガーブルは優しくも俺に薬をくれるという。
 俺にとっては一錠でも充分である。

「大丈夫だ、一錠で事足りる!」

「ちょっとそこで待っていろ、秘密の場所から薬を取って来るからな」

 爺が扉から出て行き、何処かへ行ってしまった。
 そういえば子供が寝ているとか言ってたな、ちょっと覗いてみよう。

 中を覗くと、ソファーで眠る小さな子供達が寝ている。
 その隣にいたのは、真っ白い雪の様な肌をした女の人が座っていた。
 どう見ても明らかに人間ではない。
 しかしこれは……い、いかん、一瞬見とれてしまった。

「アツシ、覗きは感心しないな。まあいつかバレる事だがな」

 ガーブルの爺が戻って来ていた。

「丁度いい機会だから言っておくぞ、俺はこの国の王ではない。王はそこに居られるイモータル様だ。失礼な事をしたら分かっておるだろうな?」

 ガーブルは親指で剣を押し出している。
 何かしたら殺す積りなのだろう。
 だが俺には一応……一応彼女が居る。
 例え、どれ程おっさんっぽくても、胸を揉んでもガハハとか笑う様な奴だが一応は彼女だ。
 まあとりあえず俺から裏切るつもりはない。

「変な事はしないから安心しろよ。そんな事より薬を早よ!」

「分かっておるわい、ほらこれ……」

「何してるのっ?」

 ガーブルの体がビクッと震え、貰うはずだった薬の一錠が、階段の隙間から下へと落ちて行った。 もう何処へ行ったのかすらも分からない。

「ら、ラヴィ―ナ様、起きられましたか。さあ爺が遊んであげましょうね」

 しかしガーブルは、子供の相手に必死になっている。

「おい待て爺、俺の薬は如何した? まだ貰って無いぞ」

「先ほど落ちたのがお前の分だ。使いたければ探すんだな」

 自分の所為だというのに、俺にこれ以上薬を渡さない積もりか?!

「ふざけんな! 絶対まだ残ってるんだろ! 一つぐらい寄越せよ!」

「ええい、もう三つしかないんだ、お前なんかにやるものか!」

 どうあっても渡す気がないらしい。

「ねぇ、それ貸してっ」

 しかしそんな中、先ほどのラヴィ―ナ様が、薬を求めて手を伸ばしている。

「いやいや、駄目ですよラヴィ―ナ様、これは大人が使う物なのです。子供は触ってはいけません」

 ガーブルは駄目だと言うのだけど。

「良いから貸してっ」

 どうもこのラヴィ―ナという子供には弱いらしい。

「でも、うう……どうぞ……」

 この爺、最初はおっかなかったのに、子供の前だとこんな風になるのか。
 ラヴィ―ナちゃんは、瓶の中の薬を取り出し手に掴んだ。

「喧嘩するんなら捨てちゃうね。 ……てい!」

 ラヴィ―ナちゃんが、薬を窓の外へと投げ捨てた。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! 俺の薬!」

「お前のじゃない、元から俺のだ!」

 俺と爺は全力で走り、投げられた薬の場所に向かう。

「薬は何処だ!」

 俺は顔を地面に押し付け探した。

「あった!」

 少し離れた所に一錠の薬を見つけた。

「させるかああああああああ!」

 爺も手を伸ばしその薬を狙っている。
 だがそこへ猫が横切った、薬をパクっと食べ何処かへ行ってしまった。

「「………………」」

 はっ、止まってる場合じゃない。
 まだ二つ有るんだ!!
 見つけた!
 あの爺はまだ気づいていない、良し今だ。

 パクッ

 薬を飲み込み猫が横切って行く……。
 ……猫の好きな成分でも入ってるのか?

「あったああああ!」

 しまった、俺より先に見つけられてしまったらしい。
 俺は急いだ。
 正義エロの為に。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおお! それを寄越せえええええ!」

「き、貴様、俺から強奪しようと言うのか! 渡さん! 渡さんぞ!」

「俺にそれを渡せば後継ぎの心配は要らないんだぞ!」

「お前にやって貰わんでも、もう何人も居るわい!」

 俺達は力いっぱい薬を奪い合っている。

「うおおおおおおおおおおお!」
「うおおおおおおおおおおお!」

「「ああ!」」

 しまった、薬が落ちた!

「それをよこせえええええええ!」

 俺は必死に跳びつくが。

「誰がやるかああああああああ!」

 ガーブルも抵抗を見せて跳び込んで来る。
 しかし。
 フミッ

「「ああああああああああああああ俺の薬があああああああ!」」

 薬は通行人に踏まれ粉になってしまったようだ。
 これではもう飲むのは無理だ……。

「爺さん、もう薬は無いんだ。仲良くしようじゃないか」

「ああ、そうだな、これで仲直りだ」

 俺は握手しようと手を伸ばす。
 ガーブルの爺さんもそれに同意し、ガッチリと握手を交わした。

「所でアツシ、茶屋の無料券が有るんだがお前にやろう。行って来るが良い」

「いやいや、爺さんこそ歳だろ、茶でもゆっくり飲んで来いよ」

 薬はまだある、階段の下に落ちた一粒が!
 たぶん爺さんも気づいている。
 俺達二人が手を放し、階段の下、落ちた所まで走った

「うおおおおおおおおおおお!」
「うおおおおおおおおおおお!」

 しかしいくら探してもその一粒は見つからなかったのだ。
 その夜、野良猫達がニャアニャアと煩く眠る事が出来なかった。
 最後の一粒は猫が食ったんだろう……くそう!

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