一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。

秀典

14 懲りない男

 タナカ アツシは異世界に召喚された、エロい事がしたかった少年はついに…………


タナカ アツシ(一般人)      べノムザッパー(王国、探索班)
アスタロッテ(べノムの家の居候)  グラスシャール・ボ・レアス(王国、兵士)
フルール・フレーレ(王国、兵士)  ラビット(改装したべノムの家に住むおばさん。)


 俺はべノムから服を借りてその家にお邪魔したのだけど、そこには活発そうな美少女の方がいらっしゃった。

「貴方の名前は何ですか」

 俺は思わずその人に名前を聞いてしまった。

「えっ、ロッテだよ、アスタロッテ」

「おお、ロッテさん貴方は天使だ、如何です今夜から朝までエロい事しませんか」

「……べノム、この人殺していいかしら?」

「気持ちは分かるがちょっと待て。なぁアツシ、お前何処から来たんだよ? 二本が如何とか言ってただろ?」

「二本じゃない日本だよ。しかし何だよこの世界は、召喚された人はエロい事して良いって暗黙の掟
があるんだぞ。全く、この世界はなってない!」

「良し分かった、ならお前の住んでた場所の情報と引き換えに、俺が良い女を紹介してやろう」

「はん、どうせゴリラみたいな女なんだろ、分かってるんだよ!」

「いや間違いなく、顔は可愛いぞ。お前が自信があるなら話してやってもいい」

「ほう、何て名前の人なんだ?」

「フレーレっていう女だよ。今は男も居ないはずだ。一度会ってみる気はないか?」

「是非お願いします!」

 俺の事を話す代わりに、フレーレと言う女の人を紹介してくれるそうだし、その申し出を受け入れた。
 そして俺は、これまでの経緯や日本の事をべノムに話した。
 ついでに性癖の事まで言ったのだが、そこは要らないと止められてしまう。

 色々と話を終えて帰る手段を探して貰ったのだが、その方法は見つからなかった。
 どうやら俺が来たのがただの事故ということらしく、もうどうしようもないらしい。

 しかし俺は悲観してはいない。
 そこそこ憧れていた異世界転移を果たしたのだ。
 戻れないというのなら、この世界を楽しまなければ損なのである。
 だがまだこちらの常識を知らない俺は、この世界のことを勉強しなければならなかった。

 国の名前とか色々と知って三日後、ついにフレーレさんという人と会う瞬間が訪れた。
 可愛いいと聞いていたが、何方かと言うと綺麗と言った感じだろうか。
 片手片足がゴツゴツしていて、あれは鎧か何かだろう。

 白い髪が美しく、そのまま鼻を埋めてクンカクンカしたい。
 しかしいきなりそれは不味いだろう、まず自己紹介からしないと。

「貴方がフレーレさんですか? 俺タナカアツシって言います。よろしくお願いしますね」

「ええ、よろしくねー」

 俺が手を差し出すと快く握ってくれた。
 手を握り返してくれる優しい人のようだ。
 これは当たりかもしれない。

「それじゃあ行きましょうか」

 俺はデートをしようとフレーレさんの手を引っ張るが、何故か全く動いてはくれなかった。

「待って、ここで良いわよ」

 ここでいい? まさかここでキスしてくれってことだろうか? 
 俺にも心の準備があるんだけど、まあ彼女が望むなら仕方ない。
 俺は顔を彼女の前に近づけると、彼女も頭を近づけて俺に頭突きをした。

 ???? ナニコレ?

「私と突き合いたいなんて久しぶりだわ。何処からでも掛かってらっしゃい!」

「あの、俺が言ってるのは拳で突き合うじゃなくて、恋人になってくれって意味で……」

「私に勝てば私は貴方の物よ! 望む事なら何でもしてあげるわ!」

 そうか、勝つ事が出来たら何でも出来るのか。
 べノムさんはいい仕事をした。
 事故とはいえ異世界転移を果たした選ばれし者である俺なら、きっと勝つことが出来るはずだ。

「行くぞ! たりゃああああああああ!」

 俺は相手が女の人だと忘れるほどに、本気で殴り掛かった。
 でも駄目でした。
 というか何あれ?
 レンガやコンクリっぽい建物が、まるで豆腐の様にへこまされ、鉄塊が軽く切断されている。
 そんなのに勝てるわけがなく、俺は全力で逃げるしかなかった。
 そんな俺は、こんなのを紹介したべノムに文句を言おうと、その自宅へと逃げ込んだ。

「ちょっとべノムさん、あれは何ですか! あんなの如何にもならないじゃないですか!」

「フレーレは駄目だったのか? 可愛かっただろ?」

「確かに可愛いし美しかった。でもそれ以外は駄目じゃないですか! 何ですかあれ、完全に兵器でしたよ!」

「お前の望みが全部叶うんだぞ。……勝てれば」

「あれは勝てない! 無理ですって!」

 あれは勝てない。
 もしこっちが凶器や銃を持ってたとしても、俺はきっと負けていただろう。
 だが、そんな恐怖心で一杯の俺を追い掛けるように、あのフレーレと言う人が俺を追い掛けて来ていたらしい。
 この家の扉がバンと開き、得物を追い掛ける猟犬のような目を向けている。

「見つけたー、こんなに逃げる人も珍しいわねー。何か母性本能がくすぐられちゃったわ」

「ひぃ、フ、フレーレ様!」

 それ母性本能じゃなくて狩猟本能じゃないんですか!

「フレーレ、どうやらお前の事は諦めた様だ。今回は許してくれ」

「え~、せっかく乗って来たのにー、べノム今度ご飯驕って貰うからねー」

「分かった分かった」

 べノムの説得によりフレーレさんは帰って行った。
 しかし、このままで収まらん。
 誰か他に俺と釣り合うような女の子は居ないのか。
 そう考えていると、この家に一人の美少女が現れた。

「遊びに来たよべノムっ」

 まだ少し小さい気がするけど、時間が経てばきっと美人になる女の子だ。
 あの子に、お兄ちゃんって呼ばせたい。

「なぁ君、俺をおに……」

 俺が不意に言葉を掛けようとすると、この部屋の空気が変わった。
 殺気というものだろうか、べノムからそれを感じられた。

「アツシ、ちょっと来い」

「な、なんだよ」

 べノムに連れられ、別の部屋へと連れ込まれた。

「いいか良く聞けよ? この国には絶対に手を出しちゃいけない人が居る。その一人はあのラヴィ―ナ様だ。もし無礼な事をしてみろ、ここにいる全員がお前を拷問し、八つ裂きにしてから殺すからな」

「……分かった、努力しよう。しかしどうするんだ。何時か大人になって結婚する時が来るだろ? その時俺を選ぶかもしれないぞ!」

「ああ、その時は受け入れるさ。ラヴィ―ナ様がお前を選んだらな、まあ絶対無いけどな」

 ふふふ、言ったな。
 今の内に好意を向けさせて将来俺しか見えないようにしてやろう。
 しかしそれはそれとして、今の欲望もどうにかしたい所だ。
 他に誰か居ないのだろうか?

「べノムさん他に誰かいないっすかねぇ。もうほんと誰でも良いんで紹介してください」

「わ、分かったからそんなにくっ付くなよ。あ~、他、ねぇ……う~む、良しアイツにしよう。
きっと男は居ないはずだ」

 ベノムに連絡を取って貰い、指定の場所に到着した俺は、その人を待っていた。
 名前は確かレアスとか言ったか。
 聞いた話では大人っぽい美人だと言う話だ。
 愉しみに待っていたのだが、時間が来てもその人は来なかった。

 でも心配はしていない。
 こんな時、女が遅れるのは良くあるシュチュエーションなのだ。

「…………」

 それから三十分も俺は待ち続け、レアスという人が来るまで待ち続けている。
 俺としてもそこそこ疲れているのだが、も、もう少し待ってみようか?

「……来ない」

 もう一時間は経っただろうか。
 どうしよう、これは来ないんじゃないか?
 そう思っていた時、美しいドレスに身を包んだ女の人がこちらにやって来た。

「すいませんわね、ちょっとカラスを引き肉にするのに時間が掛かってしまって。随分とお待たせしましたわ。貴方が私と付き合いたいというお人なのですか?」

「はい、勿論です!」

「では服をお脱ぎになって」

 え? 此処で?
 流石に人目が有って恥ずかしいんですけど。
 やらなきゃ駄目なのだろうか?

「早くなさいな」

「はい、レアス様!」

 何故だろう、レアスさんの言葉に俺の心が反応している。
 その言葉に従い、俺は上半身を裸になった。

「さあ、私の靴を舐めてワンとお鳴きなさい」

 い、いかん、何故かこの言葉に逆らえない。

「ワン!」

 俺は四つん這いになって靴を舐めるとワンと鳴いた。

「あら、案外可愛いのですね。御褒美をあげましょう。ほら取って来なさい!」

 レアス様が木の棒を投げると、俺は犬のように本能的に走り出した。
 俺は地面に落ちた棒を口に咥え、レアス様の元へと駆けて行く。
 ……これは、違う方面に目覚めてしまいそうだ。

「中々良い子じゃないですか。あの鴉にしては上出来ですわ。これから貴方をポチと名付けます。
分かったわねポチ」

「ワン!」

「何かしらこの胸の奥から沸きあがる感情は、何だかとってもいじめたくなってしまうわ。貴方家にいらっしゃい、私の好みに調教してあげますわ」

 この後俺は中々のご褒美を貰えた。
 まさか鞭と蝋燭であんな事をされるとは……
 これからレアス様には一生逆らえません。
 いい意味で。

 しかしエロい事じゃなくてMい事を覚えさせられてしまった。
 これはこれで良いのだが、エロい事もしたい。
 予定通りロッテさんに夜這いを掛けるとしよう。

「ねぇべノム、あの組み合わせは良かったのかしら?」

「知らん、本人達が喜んでるなら良いんじゃねーの?」

 俺を見張っているような二人の声が聞こえて来る。
 まあ得たいのしれない俺を見張るのは当然だろうか?

 その俺は、どこにも行く当てがないので、べノムの住居に泊めて貰っている。
 あのロッテさんは、この上の階の自分の部屋で休んでいるらしい。
 真夜中、俺は失礼の無い様に、全裸でロッテさんの部屋へと向かうのだった。

「おじゃましま~す!」

「ぎやああああああああああああああ、エ、エクスブレイズッ!」

「ぐはああああああああ?!」

 ロッテさんは俺に驚き、強烈な魔法を放った。
 その放たれた炎の爆発は、俺を容赦なく焼いてく。
 とても熱く、きっと助からないだろう。
 サヨウナラ。

 だが俺はまだ死んではいなかった。
 あれで死なないとなると、日頃の行いがよかったのだろうか?

 目を閉じた俺の近くから、女の人の声が聞こえて来る。
 俺を癒したのはロッテさんなのだろうか?

 だが此処で目を開けてはいけない。
 いきなり起きて事故を装い、勢いでキスしてしまおう。
 事故なのだ、何も問題は無い。

 そう、これはアニメや漫画でよくある展開だ。
 しかし焦りは禁物だ。
 その人物が男だとも限らない。
 確認が重要だとチラっと目を開けると、その人物の大きな胸が見えた。

 良し!
 ここで男とかそんな落ちでは無かったようだ!
 俺は即座に体を起こし、顔がありそうな所に口を突き出した。

 チュッ

 確かな感覚が口元に感じられる。
 やったぞ、俺の人生に悔いなし!

 俺は目を開け、その人物を確認した。
 可愛らしい顔の……。
 凄く思っていたのとは違う。
 確かに可愛いかもしれないが、これは如何反応していいやら。

 その人の顔は兎だった。
 兎耳とかそんな生易しい物ではなく、マジモンの兎だった。

「こんなおばさんで良いのかい? じゃあちょっと向うへ行こうか」

 おばさんとか言われても顔では全く分からないのだ。
 完全に兎だし。

「旦那が無くなってから久しぶりなんだ。あの子達にも十八年年ぶりに兄妹が出来るね」

 十八年ぶり?
 子供? 旦那?

 待ってくれ!
 俺はまだ十五歳なんだ。
 自分より歳の上の子供を持つつもりは無い!

 俺は全力で逃げだした。
 だが、素早いべノムに追いつかれて肩を掴まれた。

「まあまてアツシ、エロい事がしたいんだろ? チャンスじゃないか」

「べノム、一応聞いておくが、あの人の年齢は幾つだ?」

「ラビットさんの年齢はたぶん今年で五十……」

「それじゃあ行きましょう、アツシ君」

 振り向くと、顔を赤くしたようにモジモジしたラビットさんが経っている。
 俺の腕を掴むラビットさんの力が凄まじく、とても逃げられそうに無い。

「や、やめろおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 部屋に引きずり込まれ、俺は……。

 あの事は忘れよう。

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