一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。

秀典

13 まおうぐんのにちじょう1

外伝のようなお話、やりたかっただけです、すいませんっした。
時間軸とか、居なかった人とか気にしていません。
エロではないです。


メギド(王国、国王)        イモータル(王国、女王)
タイタン(王国、将軍)       グラビトン(王国、大臣兼門番)
ルーキフェート(王国、王女兼使用人)


 王城の最上階。
 その一室の豪華な寝室で、メギドとイモータルは見つめ合っていた。
 見つめ合って、良い感じの雰囲気だった。
 
「メーちゃん…………」

「モーたん…………」

 何か妙な呼び方で呼び合ってる。
 おっ行けそうな感じだぞ、とか思いながら、メギドはベットの方に少しづつ寄って行っていた。
 ここで勘違いしてはいけない。
 王族の子孫の血筋を残す事は、重大で、立派な公務なのだ。
 その公務をこなす為に、今メギドは必死こいて良い雰囲気を作り上げていた。
 背中に手を回しベットにゆっくりと寝かせると、甘そうな唇へと顔を落として行く。
 このまま官能の海へと身をゆだねるはずだった二人だが、そんな二人の部屋に、ノックの音が聞こえてくる。
 コン、コン、コン、と小さく音が鳴ると、小さな女の子の声が聞こえてきた。

「お父さん、いますか?」

 この声は少し前に助けられたルーキフェートという子供である。
 ルーキフェートは、奴隷商人に売られた七人の子供達の一人で、使用人として働かせていた。
 結局は親に慣れそうな人物は見つからず、責任を取ってメギドが全員を養子に迎えていた。
 王位継承権は認められていないが、今では王女待遇で使用人として扱われている。
 他の馬鹿者なら無視を決め込むはずだったメギドだが、愛するべき自分の子供であるなら話しは別だった。
 二人はパッと離れ、扉を開ける前に冷静を装い、メギドがドアを開けてルーキフェートに近寄って行く

「ルキちゃん? どうしたの?」

 イモータルもルキの隣に近寄るが、その姿を少しだけ怖がられてしまったらしい。
 まだ彼女の姿に慣れていないのだろう。
 イモータルはルキの目線に合わせ、明るく頭を撫で、優しく事情を聞き出した。

「ルキちゃん大丈夫、どうかしたの? 私に話してみてくれない?」

 その優しい声に、ルキも心を許していく。
 少し躊躇い、事情を話しだす。

「……あのね、タイタンおじさんとグラビトンおじさんが喧嘩していたから、お父さんを呼んで来いって」

 ルキの言葉で二人が喧嘩していると知り、取り合えずその場所に三人で向かってみる事にした。
 イモータルは歩きながらルキに事情を聴き、王国正門の前で言い合いをしているらしい。

「ルキちゃん、どうして二人は喧嘩しちゃったのかな?」

「なんかね、どっちのお菓子が美味しいかって話になって。それでね、強いとか最強とか言ってたの」

 何でお菓子の話で、強いとか最強になるのか分からなかったのだが、三人は現場に急いだのだった。

 その現場に着くと、二人は取っ組み合いになりそうな雰囲気だった。
 今も何か言い合いをして。タイタンが何か言っている様だ。

「お前はガリコーンの事を何も分かっていないッ! あのバキッとした食感は、全てを超越しているッ!」

「違うッ! サックリコーンの方がサクサクしておいしいだろうがッ!」

「もうどっちでも良いでしょうが。どっちが上手かろうが強かろうが人の好みによるでしょう」

「「良くはない!」」

 グラビトンも、それに応戦して、激しい口論が続いている。
 べノムが窘めているが、効果は薄い様だ。

「…………何やってるんですか君達は」

 呆れたメギドが二人を窘め、事情を聴いてみた。

「私達はルキが持って来たお菓子を食べていたのです。ある二つのお菓子が有ったので、何方が美味しいか議論になり、私はこのガリコーンが良いと言ったのですが、グラビトンはサックリコーンの方が美味しいだろと」

 タイタンの言葉に、グラビトンはコクリと頷き、十秒ほどの沈黙が続く。

「…………えっ? そんだけ?」

 メギドは呆れていたが、その答えを聞くと、何故か二人は怒り出した。
 どうやら二人共並々ならぬこだわりがあるらしい。
 最初に怒鳴って来たのはグラビトンの方だった。

「サックリコーンこそ至高なのです! 異論など認めない! ガリコーンなど上にチョコを乗っけただけではないかッ!」

「違う! ガリコーンは、あのはっきり感が最高なのではないか! サックリコーンなんぞ子供の食い物よッ!」

 そんな二人を煽ってる男が一人、べノムと言う男だ。
 この男も最初にキメラ化をして戦争を生き残った兵士である。

「二人とも落ち着いてくださいよ。どっちが美味いかなんて如何でも良いじゃないですか。どうせ究極はトッピーなんですから、考えなくったって一緒でしょうが」

「なに二人を煽ってんだ! 二人が本気でぶつかったら凄い迷惑だぞ!」

 何故か参戦するべノム。
 もうこれでは収集が付かなくなりそうである。
 今にも飛び掛かりそうな雰囲気だが、そんな三人を見てメギドは意を決した。

「よし分かった。こんな所で戦われては王国に迷惑が掛かる。明日決闘場を設けるので、そこでこの決着をつけろ。これは命令だ!」

 メギドは時間が立てば熱も冷めるだろうと思っての提案だったのだが、朝には二人とも揃って指定の場所に来ている。
 どうやらべノムは来ては居ないらしいが、他の二人はやる気十分だった。
 穏便に終わらせようとしたメギドだったが、今の状況は昨日以上に不味い状態へと変わっている。
 険悪な二人の周りを囲むのは、それをあおる大勢の見物客だった。
 メギドは辺りを見回し、この大量の観客が居たのが気になっている。
 大体はキメラ化した者達ばかりだったが、何故この場に集まっているのだろうか?

「ちょっと待て、何でこんなに人が居るんだよ。誰か呼んだんんじゃないだろうな?!」

「べノムさんが昨日皆に言ってたんだよ」とルキに聞き、メギドはガックリと肩を落とした。
 今更中止する訳にも行かないので、仕方ないので決闘を開始する事になる。
 念の為に武器と魔法使用は一応禁止とした。

 もうすぐに昼の鐘が鳴る頃だ、それを合図として決闘が開始される手筈になっている。

「行くぞデカ物が!」

「貴様もそう変わらぬであろうが!」

 鐘がゴォーンと鳴り、まずタイタンが突っ込んだ。
 右手で掴みかかろうとしたが、それを右手で払われ、そのまま頭突きを食らってしまう。
 だがタイタンは怯みもせずに、空いた左手で、グラビトンの顔面をぶん殴った。
 しかし堅さには絶対の自信があるグラビトンには、何のダメージも無さそうだ。
 逆にタイタンの拳を痛めてしまったらしい。

「むうぅ、堅い」

「どうしたんだタイタン。その程度では全然効かないぞ」

 そうは言っていたが、殴られたグラビトンは、拳で頭を揺らされて少しふら付いていた。
 二人は決闘場の真ん中で、両手をガッシリと組んで力比べを開始する。

「「ぬううううううううううううううううううん!」」

 力比べは全くの互角で、二人共動かない。
 タイタンはには余裕など全くなかったが、それでも笑い、グラビトンを煽っている。

「どうしたんだグラビトン、それで限界か?」

「お前こそこんな程度か?」

 だがそこでタイタンが動いた。
 これは彼の能力だろう。
 力を込めて思いっきり踏ん張り、大地が二人の力に耐えきれなくなる。
 大地が割れ、そのままグラビトンが居た場所にまで亀裂が入った。
 そしてタイタンは手の力をワザと抜き、後に飛びのき地面をぶん殴る。
 その瞬間グラビトンの立っていた地面が隆起し、その体制を崩す。
 その体勢を崩したグラビトンに、タイタンの攻撃が始まった。

「ぬぅん!!」

 打撃ではきかないのならと、体に平手を体にあて、グラビトンを持ち上げて大地に叩きつけた。

「グハァ!!」

 グラビトンが呻き声を上げている。
 どれ程の防御力があろうと、体の中身まではそうはいかない。
 自身の体重が自身に跳ね返り、内部に衝撃を与える。
 そんな彼を見て、タイタンは勝利を確信し立ち上がった。

「ふふふ、今回は俺の勝利だな」

「まだまだああああああああ!」

 だがグラビトンはそこでは終わらなかった。
 タイタンの脚を掴み、膝の裏を叩きつける。
 その衝撃により彼は体制を崩した。

「この程度で、負けるかあああああああああ!」

 グラビトンはタイタンの頭を後ろから掴み上げ、そのまま地面に叩きつけた。
 地面に転がるタイタンの背中に、グラビトンは馬乗りになる。
 頭を殴ろうとした手を止めて、彼は勝利宣言をした。

「今回は俺の勝ちだな!」

 背中に乗られては、もうタイタンに勝ち目はないだろう。
 流石にメギドも試合を止め、二人の決着を付けた。  
 この勝負の後、べノムが賭けの胴元をしていた事が分かり、タイタンとグラビトンに説教されていたらしい。

「それにしてもこれは無駄な戦いだった。だがこれは客を呼べるのかもしれないな」

 後に闘技場という施設が作られて、王国の人気興行になる。
 旅の者が偶然遠くから見ていて、それが各地に広がって行ったようだった。

 …………本当かは分からないが。




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