無欲、転生させられ世界をとる
リリムの覚悟
〔凶獣視点〕
煙が晴れた先に佇んでいたのは先ほど仲間の放ったブレスが直撃したはずの人間とは全く別の生物だった。
その生物は俺たちと同じ不の魔力を纏っており、体長は3メートルほどに巨大化していた。
眼光は真っ赤で鋭く、睨まれているだけなのにも関わらずこの俺が震えるほどだった。
(この俺がたかが人間の子供に恐怖しているだと……!?)
仲間も俺と同じ事を思ったのか恐怖と羞恥心で震えていた。
そうしていたのは僅かな時間だったのだが、突然視界にいたその生物が消えた。
ドシュッ!
となりから何かが破裂するような音が聞こえてきた。俺の頬には生温かい液体が飛び散ってきた。
おそるおそる仲間がいた場所を見ると仲間の右胸部、魔臓のある部分に奴の左腕がめり込んでいた。
(奴の左腕は使い物にならないはずなのに……あの回復力はまるで俺たちのよう……)
仲間は最後の足掻きとして力を振り絞って奴の頭部に噛みつこうとした。
俺はその様子をただ見ていることしか出来なかった。
仲間は噛み砕こうとする寸前で爆発し、辺りに血肉を撒き散らした。
俺は
(こいつはヤバイ!逃げないと俺も殺される。)
と思い背を向け、逃げようとした。だが俺の意識はここで途切れたのだった。
〔リリムたち視点〕
「あれはタイガなの?」
私はまるで魔物化したような……否、魔物化したタイガの動きにまるで付いて行けてなかった。
全くタイガの動きを捕らえることが出来ないのだ。
(性格に凶獣の魔臓を狙った。知能、もしくは自我が残っているのかしら?)
人間種の魔物化、これは観測史上初である。なぜなら人間種は自分の魔力を制御する技術に長けているからである。
人間種が魔力の制御を手放すなんてあり得ない、そう思われていたのだがタイガは魔物化してしまったのである。
「タイガはどうシテしまっタというノダ?」
「あれではまるで、魔物のようではないか。」
リゼッティとバハムルはそう呟いた。
「お前らは俺が、ま……もる……」
途切れ途切れだが確かにその意思を感じさせるタイガの声がリリムたちの耳に届いた。
「タイガ、私はもう助けて貰うだけはなんて嫌だわ。今度は私たちがあなたのことを助けてあげる。」
「リリ、ム……俺にちか、づくな……殺してし、まう……」
タイガの自我は今も徐々にすり潰されていた。
「いいえ、タイガ。あなたにその手を使わせてしまったのは私たちよ。何としてでも戻ってきてもらうわ。」
リリムの言葉にリゼッティとバハムルはうなずき返した。
「リゼッティ、バハムルを大樹の葉に置いてあげて。危険だわ……」
「リリム、わカッタ。」
リゼッティはリリムの指示に従い、近くにあった大樹の葉の上にバハムルを置いた。
「う……ぐあぁぁぁーー!!」
タイガは雄叫びをあげ、小転移を使いギレスに急接近。
バハムルの死角から、左腕の鋭く伸びたその爪で斬りかかった。
「タイガ、あなたの動きは読めているわ。どのくらい一緒に過ごしたと思っているの?」
「リ、リム……たすかった……」
私は辛うじてタイガの行動を予測、ギレスに攻撃が当たってしまうのを凌ぐことができた。
あのまま斬りかかっていたら恐らくギレスはただでは済まなかっただろう。
「ごメン、タイガ!」
タイガの横からリゼッティが飛び掛かった。
それは上手くタイガの隙を突き、浅くとも確かなダメージを与えた。
すぐにタイガは距離をとる。
「タイガ、少しだけ痛い目を見て貰うわよ!」
リリムの宣戦布告から、戦いの火蓋が切られたのだった。
煙が晴れた先に佇んでいたのは先ほど仲間の放ったブレスが直撃したはずの人間とは全く別の生物だった。
その生物は俺たちと同じ不の魔力を纏っており、体長は3メートルほどに巨大化していた。
眼光は真っ赤で鋭く、睨まれているだけなのにも関わらずこの俺が震えるほどだった。
(この俺がたかが人間の子供に恐怖しているだと……!?)
仲間も俺と同じ事を思ったのか恐怖と羞恥心で震えていた。
そうしていたのは僅かな時間だったのだが、突然視界にいたその生物が消えた。
ドシュッ!
となりから何かが破裂するような音が聞こえてきた。俺の頬には生温かい液体が飛び散ってきた。
おそるおそる仲間がいた場所を見ると仲間の右胸部、魔臓のある部分に奴の左腕がめり込んでいた。
(奴の左腕は使い物にならないはずなのに……あの回復力はまるで俺たちのよう……)
仲間は最後の足掻きとして力を振り絞って奴の頭部に噛みつこうとした。
俺はその様子をただ見ていることしか出来なかった。
仲間は噛み砕こうとする寸前で爆発し、辺りに血肉を撒き散らした。
俺は
(こいつはヤバイ!逃げないと俺も殺される。)
と思い背を向け、逃げようとした。だが俺の意識はここで途切れたのだった。
〔リリムたち視点〕
「あれはタイガなの?」
私はまるで魔物化したような……否、魔物化したタイガの動きにまるで付いて行けてなかった。
全くタイガの動きを捕らえることが出来ないのだ。
(性格に凶獣の魔臓を狙った。知能、もしくは自我が残っているのかしら?)
人間種の魔物化、これは観測史上初である。なぜなら人間種は自分の魔力を制御する技術に長けているからである。
人間種が魔力の制御を手放すなんてあり得ない、そう思われていたのだがタイガは魔物化してしまったのである。
「タイガはどうシテしまっタというノダ?」
「あれではまるで、魔物のようではないか。」
リゼッティとバハムルはそう呟いた。
「お前らは俺が、ま……もる……」
途切れ途切れだが確かにその意思を感じさせるタイガの声がリリムたちの耳に届いた。
「タイガ、私はもう助けて貰うだけはなんて嫌だわ。今度は私たちがあなたのことを助けてあげる。」
「リリ、ム……俺にちか、づくな……殺してし、まう……」
タイガの自我は今も徐々にすり潰されていた。
「いいえ、タイガ。あなたにその手を使わせてしまったのは私たちよ。何としてでも戻ってきてもらうわ。」
リリムの言葉にリゼッティとバハムルはうなずき返した。
「リゼッティ、バハムルを大樹の葉に置いてあげて。危険だわ……」
「リリム、わカッタ。」
リゼッティはリリムの指示に従い、近くにあった大樹の葉の上にバハムルを置いた。
「う……ぐあぁぁぁーー!!」
タイガは雄叫びをあげ、小転移を使いギレスに急接近。
バハムルの死角から、左腕の鋭く伸びたその爪で斬りかかった。
「タイガ、あなたの動きは読めているわ。どのくらい一緒に過ごしたと思っているの?」
「リ、リム……たすかった……」
私は辛うじてタイガの行動を予測、ギレスに攻撃が当たってしまうのを凌ぐことができた。
あのまま斬りかかっていたら恐らくギレスはただでは済まなかっただろう。
「ごメン、タイガ!」
タイガの横からリゼッティが飛び掛かった。
それは上手くタイガの隙を突き、浅くとも確かなダメージを与えた。
すぐにタイガは距離をとる。
「タイガ、少しだけ痛い目を見て貰うわよ!」
リリムの宣戦布告から、戦いの火蓋が切られたのだった。
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