無欲、転生させられ世界をとる

makoch

聖なる大樹 麓

 あれから聖なる大樹を目指してただただ走った。聖なる大樹は目の前だ。

 あの花の魔物を倒してから再び奴を見かけることはなかった。

 後からナーファに聞いたのだが、あの花の魔物は聖なる花畑を8つのエリアに分けたとき、それぞれのエリアに1匹ずつしかいないらしい。

 いわば中ボスだ。念話で

(お兄ちゃん、あの魔物を倒したのか?)
(リリムの協力があったのにも関わらず長剣1本失ったけどな……)
(やるな。単体の戦闘能力ならヒッポグリフですら及ばないのに。
 戦闘能力を計算するとヒッポグリフが奴を倒すには10匹程度で群れる必要がある。)

 あの魔物がそれほど強いとは驚いた。

(お兄ちゃん、今ヒッポグリフちょろいとか思っただろ?)

 図星だった。

(奴らは気高く協調性はないがバカじゃあない。
 かなわないと思ったら協力する。力でヒッポグリフの群れに敵うと思うなよ。)
(分かってるさ。)
(いや、お兄ちゃんは絶対に分かっていない。
 いいか!上手に屈服させ尻尾を貰える可能性は確かにある。
 しかし、1歩間違えると凶獣を生み出すことにつながるんだからな。)
 
 やけにくどいな。

わずらわしそうにするな!これはお兄ちゃんのことを心配して……)
(なんか言ったか?)
(な、なんでもない。早く尻尾を手に入れてこいバカ者め。)

 念話はここで途切れた。どうやらナーファは俺のことを心配してくれているらしい。

「タイガ、私たちわざわざあの魔物を倒す必要あったのかしら?」

 リリムはそんなことを今さら聞いてきた。

「もちろんだ。いきなりヒッポグリフとの戦闘になった時、連携とれないと命取りになるだろ?」
「確かに。頭良いわタイガ!」

 もちろん咄嗟とっさに思いついたでまかせだ。
 リリムは以外とケチなのだ。意味の無い戦闘で装備を失ったなんて言えるはずがない。

「さあ、聖なる大樹はもうすぐだ。さっさと行くぞ。」
「ええ行きましょう。」

 もうすぐだといってもヒッポグリフの巣がある頂上まではかなり遠い。
 高さ1キロメートルはあるだろう。木の周りに螺旋階段らせんかいだんのように葉がついている。これをつかえば登ることができそうだ。

 登り始めて少し経ったとき。まだ頂上までは800メートルほどあるところで魔物と遭遇そうぐうした。

「クキュリャァァァーー!!」

 頭に生えた2本の角が特徴の大きな鳥だ。たちの悪いことに、その鳥は3匹同時に出現した。


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