無欲、転生させられ世界をとる

makoch

父と母

 俺がこの世界に産まれてから1週間程度が経過した。毎日しっかり食事をして、何不自由なく暮らしている。
 
 しかし、1つだけ慣れない事がある。
 
 それは食事だ。赤ちゃんの食事はあれだ、母乳だ。思春期の高校生が出会って1週間程度しかたっていない綺麗な女の人の乳房をくわえて吸わなければならないなんて……

 最初は直視することすらできなかった。
 まぁ飲まないと死んでしまうし、両親にも心配をかけてしまうから渋々飲んだんだが。

 その味は……思い出すと興奮して眠れなくなりそうだからやめておこう。

 父は細く、しなやかな筋肉をもっていて、黒い眼をもっており身長は180㎝くらいの男だ。
 格好良く、強そうなのに母の尻に敷かれているイメージしかない。

 昨日だって

「私はこの子にご飯母乳をあげるので忙しいから洗濯物たたんでおいて。」
「はい、分かりました!」

 また別の日では

「こら、どこ抱っこしているの?バカなの?しっかり首を支えなさい!まだすわってないんだから。」
「誠に申し訳ございません。以後気を付けます……」

 このようにいつも母に敬語を使っていて、いつも怒られている。

 母は程よい肉付きで、細すぎず、太すぎない。翡翠ひすいの眼をもっていて普通の人間より耳が尖っていて長い。恐らくエルフだろう。
 気が強く、いつも父のことをこき使っている。

 しかし、そんな母も俺にはとても優しい。やたらと額にキスをしてくれる。

「愛してるよ。」

「産まれてきてくれてありがとうね。」

 などと言いながら。

 別に父とも仲が悪いわけではなく、むしろ仲が良すぎる……

 それ自体は良いことなのだが、

「タイガ、そこ俺に変わってくれよ……俺もいっぱい甘やかされたい。」
「あなた、子供の前でなんてこと言うの。そういうことは後でやってあげるから……」

 などと言いバカップル全開で、妬ましいと思うこともしばしば。俺が眠りについたと思って楽しそうにしやがって。

 たまに嫌がらせで夜泣きするのは仕方ないことだな。

 色々なことがあったが、1週間程暮らしてきてこの家に産まれることができて良かったと思う。
 貧しい訳でなく、虐待なんてことをされることもない。
 幸せだ。なんだかんだで第2の人生、楽しみだなぁ。そんなことを考えながら今日も俺は眠りについた。

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