異世界をスキルブックと共に

気のまま

控え室

「それでは準備が整いましたら御迎えに上がりますのでそれまでこの御部屋で御寛ぎ下さい」


王城に入ってからここまで俺達を誘導してきたくれた執事らしき男性はそう言うとこちらに一礼し部屋を出て行った。

あの後なんとか無事にモーテン達と合流し王城に向かったのだが馬車に乗り込んだモーテン達の疲労感がもの凄かった。

まぁあの人数に揉みくちゃにされたのだから気持ちは分かるが話を聞いて見ると王都を歩けば連日あのような状態になるしカズコさんがLVについて普及させつつあるらしく現状それが鑑定可能なモーテン達は何処に行っても引っ張りだこなのだそうだ。

全てをモーテンに任せきりの張本人からすると少し申し訳なく感じる。

それにモーテン達は初めて会った時に比べて多くの人と関わっているせいか言葉使いも柔らかくなったし人との接し方が上手い気がする。

今の所は苦情や悪い噂等は一切聞いたことがないし昔は山賊の下っぱだったのか嘘みたいだ。

最近は冒険者ランクもB級に上がったらしいし今後どこまで行くのかが少し楽しみだ。


「ケンゴ様、何か飲み物を用意しましょうか?」


その言葉に俺は顔を上げ改めて周囲を見渡す。

部屋の中には細かな装飾が施された調度品が配置されそれらは一目で高級な物とわかる。

用意された軽食は種類が豊富だし恐らく飲み物に関しても俺が飲んだことがないような物ばかりなのだろう。


「ああ、お願いしてもいいかな?」

「はい」


エレナはそう言うと慣れた手つきで飲み物を用意し始めた。

用意された飲み物は薄い茶色の香ばしい香りがするお茶だ。

俺はそのお茶をまじまじと見つめるが間違いない。

いつも俺が拠点で飲んでいる我が拠点特産茶だ。

エレナは何故か満足そうな笑顔で此方にお茶を差し出してくるのだがとても残念なことにこいつは目の前には給仕セットからではなくいつもの収納袋から飲み物を出したのだ。

いやいやちょっと待て、俺の目の前に注ぐだけで用意できそうな給仕セットがあるのにお前は何故そこから飲み物を出した?。

俺がどんな飲み物が出てくるか期待していた気持ちを返してくれ。


「エレナ、何で目の前の給仕セットは使わないんだ?」

「これらは用意された物は何が入っているか分からないので使用しないほうが良いかと思いまして」

「いやいや、流石に招待した人間に一服盛るようなことはしないだろ」

「ですが万が一にも何かあっては遅いので特別な理由がない場合は私達が用意した物を口するのが無難かと思います」

「警戒しすぎなんじゃないか?」


俺は目の前の軽食や飲み物を食べたいんだよ。

見てみろ、めちゃくちゃ美味しそうだぞ。


「いえ、ご主人様。一概にそうとは言い切れません」


俺が軽食に手を伸ばそうとした時ジャックがそう横槍を入れてきた。


「どこの国でも口にする物に一服盛るのは良くあることです。貴族界隈では事後検出されない毒も出回っているぐらいですので警戒するに越したことは有りません」


ん?そうなのか?

しかし一服盛るのが良くあることだとは驚いた。

まぁ検死とかが発達していないと見つからない確率は高いだろうし有効な手段なのだろうか?


「普通王城に来賓として来られる方々はしっかりとした身分があり王城に来たことが第三者にも知れています。それが王城で毒殺されたとなると王家の恥じと信頼の失墜に繋がるのでほぼ決行されることはないのですが私達は他国と言っても身分もはっきりしていませんしどの国に所属しているかも隠しています。王城に来たこともモーテン以外は周囲には伝わっていないので最悪毒殺されても隠蔽される危険があります」

「だがレルド達がそのようなことをするとは到底思えないのだが……」

「確かに第一王子が来賓者に一服盛るとは考え辛いですが他にどのような人間がご主人様に害意を持っているか分かりません。第三王女一派がご主人様の手に王女が渡るの防ぐために何か工作する可能性も有ります。現状確かめる手段がないのであれば飲食は避けるのが無難かと思われます」


ふむ、そう言うものなのだろうか?

だが目の前に有る軽食類はこのまま残して行くには惜しいものが有る。

最近拠点は作物とかは充実してきたがまだまだお菓子や甘味物はかなり少ない。

漸く蜂蜜が少しづつ取れ始めたのだが数が少ないせいかうちの拠点ではかなりの貴重品だ。


「取り敢えずこれが無害だと分かれば問題ないんだよな?」

「はい、無害だと証明できれば食べても問題ありません」


だったら簡単だ。

俺は目の前にある食べ物を全てを鑑定し始めた。

証明は難しいがこれなら確実に無害かわかる。

LV10は伊達じゃない。


「なぁ調べてみたら全て無害だったんだが食べてもいいか?」

「? どうやって調べたのですか?」

「鑑定だ。この世界にはあまり普及してないスキルみたいだけどかなり便利だぞ。モーテンが腕輪持ってるから試してみろ」

「そうなのですか?ではモーテンさん少しお借りしますね」


ジャックはそう言うと部屋にある物に片っ端から鑑定を掛けて行った。

いや俺が食べたいのは軽食だけなんだが他のを鑑定する必要はあるなか?


「これは……凄いですね。物の名前はもちろん状態や性能、更に詳しい情報が一目でわかります。人に対してはその人物のスキルや強さを瞬時に見分けることもできるとは……ご主人様はこれをどうする御積りですか?」

「まだLVも低いしここの王様にお土産で渡すのと数ができたらランカ達のところで売るつもりだぞ」

「それは止めておいた方が良いと思われます」


なんだと?こんな便利な物売らない手はないだろうに。


「どういうことだ?」

「これ程の情報を一目で得ることができる装備が広まれば世界が混乱します。確かに商売や戦闘等メリットも多いですがこれを使用されたら相手は感知や妨害も現状できないので悪用される危険の方が高いと思われます。私であればこれを使い王都の経済を破綻させることも可能ですよ」


なんだと?情報が大切なのはわかるがそこまで問題になるような物なのか?

まぁやり方は分からないがジャックはできないことはできないと言う奴だし本当に経済を破綻に追い込むこともできるのだろう。

しかしどうしよう。

この鑑定の腕輪が便利だからお土産に持って来たのに今更駄目と言われても替えの物を用意していない。


「そうか、販売は止めるとしてもお土産はどうする?他の物は用意していないぞ?」

「先程LVが低いと言っていましたがこれはどう関係するのですか?」

「LVが低いとわかる情報が制限されるな」


LV1なら木を鑑定したら木しか表示されないしな。


「ではLVを下げて献上、販売致しましょう。このLVが普通だと理解されれば更に高LVで情報を獲得できる私達は今後優位に動くことができます」


ふむ、確かにそれなら問題はかなり低減されるな。

しかしこいつは本当に恐ろしいな。

先程鑑定の腕輪を試したばかりだというのに既に今後の使い方まで考えている。

本当に味方にしておいて良かった。


「そうだな、お土産は俺が複数着けて試した時のがあるからそれを渡すとして取り敢えずみんなで軽食を食べないか?」

「そうですね、折角問題ないとわかったのですから」


そう俺は言うと先程からずっと目星を付けていたお菓子に手を伸ばした。

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