異世界をスキルブックと共に

気のまま

英雄

「ケンゴ様は一度死んだことがあるのですか?」

「ん?ああ話していなかったが俺はこの世界に来る前に一度死んでいるぞ、それがどうかしたのか?」


俺のその言葉に馬車の中は面々は皆驚いたような顔をしている。

まさかさっき驚いていたのはそのことなのか?


「いえ、問題がある訳ではないのですがケンゴ様が一度でも死んだというのが信じられなくて……」


おいおい、俺を何だと思っているんだ。

俺だってお前達と同じように人間だ、ステータスの種族は人族?となっているが恐らく普通に死ぬぞ?


「俺もみんなと変わらないからな、人間死ぬ時は死ぬさ。それで村上君、その日本に戻れるという話の根拠は何か有るのかな?」

「いやそんなもんはねぇよ。佐藤達も疑っていたが俺達は取り敢えずその話しを信じるしか選択肢がないから帝国にいるだけだ」


ふむ、やはり根拠は何もないみたいだな。

まぁこれについては勇者召喚について詳しく調べないと何とも言えない。


「では他に日本に戻れる選択肢が有れば他の勇者は帝国から離れる可能性があるというですか?」

「それが帝国を離れないといけないと言うものならな。帝国では歓迎されてるし余程のデメリットがない限り離れないだろ」


まぁそうだよな。取り敢えず他の奴の勇者に会ってみないことにはどうにもできないな。

最近エッジ達が帝国に戻ったらしいから暇があったら帝国にも観光がてら遊びに行ってみよう。


「それで、俺はこれからどうなるんだ?」

「先程も言いましたが王国に引き渡します。後は王国との交渉次第ですね。ですが貴方がしたことを考えるとあまり穏便には済まないと思った方がいいですよ」

「ちっ、今回はイベントにしてもめんどくせぇな。なぁ聞こうと思っていたんだがあんた俺に何かしただろ?」


ん?突然なんだ?


「何かとは?」

「俺のステータスからスキルが消えてるんだよ。アンデッドも俺の言うことを聞かねぇしまさかあんたのスキルは強奪系か?」

「いえ違いますよ。そこの猫型の獣人の子のスキルです。それにしても村上君は自分のステータスがわかるんですか?」

「わかるも何も俺達は自分のステータスはいつでも確認できるぞ。あんたは違うのか?」

「いえいえ、私も自分のステータスに関しては見ることができますよ」


やはり転移者は自分のステータスが確認出来るようだ。

この世界の住人は魔道具を介さないとステータス、しかもLVがないものしかわからない。

何か根本的にシステムの恩恵が違うのだろうか?


「そこら辺は俺達と一緒か、だけど俺達と違ってなんであんたはそんなに強いんだ?転移した時期は殆ど同じなんだよな?魔王は初期からステータスが良いのか?」


おい誰が魔王だ。

未だにこいつは俺のことを魔王だと思っているのだろうか?


「私も初めはかなり弱かったですよ。魔物を一匹倒すのにも本当に苦労しました」

「ならその急成長が魔王の特性か、経験値倍か熟達系の恩恵があるんだろ。ちっ、このチートが」


いやそんなものは持っていないぞ。

まぁ『スキルブック』のお陰でスキルLVも一瞬で最高まで取得できるがポイント制だし地道に魔石を稼ぐ必要がある。

恐らくステータスが見えるのは転移者自信がユニークスキルを確認するための処置だろう。

本当に誰がこんなシステム作ったんだ?


「ご主人様、もうすぐモーテンとの合流場所に着きます」


俺がそう考え込んでいるとジャックがそう声を掛けてきた。

俺は馬車の窓から外の状況を確認するが最近モーテンにはカズコちゃんの依頼を丸投げしてしまったから怒っていないか少し不安だ。

それじゃなくても俺の隠れ蓑代表として良く働いてくれているしいずれ何かしらのお礼をしないといけないな。

俺がそうモーテンの待遇について考えていると目的地に着いたのか馬車が停止した。

だがこれは……

俺は馬車の窓から見える外の景色に驚愕した。

王都に人が戻ってきて以前のような活気も出て来ているのは分かっていたが目の前の光景はそれどころじゃない。

人が溢れ返っている。


「おい、こっちに英雄がいるって本当か?」

「ああ、今回の戦争でも凄い活躍したらしいぜ?しかもその前は姫様を二人も救いだしたらしいし本当に英雄っているんだな」

「あんた達全然分かってないね!モーテンさんの凄い所はそんな所じゃないよ!そこも凄いけどモーテンの良い所は見返りを求めない所だよ!姫様を救った褒美も辞退されたらしいし辺境のアルカライムではお金がなくて依頼が出せない人達を助けて回ってたらしいよ!」

「おお!そいつは確かに凄いな!英雄に相応しい行動だ、そうそうできるもんじゃねぇよ」

「モーテンさん!見てください!モーテンさんに憧れて同じ場所に紋様を入れてみたんです!」

「モーテンさん握手してください!」

「聞きましたよモーテンさん!新たにLVという概念を発見したんですよね!凄いです!!僕のLVはどれくらいかわかりますか?」


それにしても相変わらずの人気っぷりだな。

話は尾ひれがついている感じがするがそれにしても凄い人だかりだ。

モーテン達が遠目に少し見える程度だがこれ俺達と合流できるのか?


「すみません!道を開けて下さい!」

「私達あの馬車に乗らないといけないんです!」

「これから王城に行かないといけないんだ、頼むからどいてくれ」


そうモーテン達が声を上げて人混みを掻き分けながらこちらに向かおうとしているが近場の人間しか聞こえていないのか少し道が開けたかと思うと直ぐに新しい人だかりで埋まってしまっている。

これが波状攻撃というものか……


「おい!聞いたか?」

「ああ、モーテンさん達王城に行くらしいな!」

「確か王城で勝利の式典を開くらしいからそれに呼ばれているんじゃないか?」

「それに見てみろ!モーテンさん達が乗るって言ってた馬車、そんじょそこら貴族様でも乗れないような凄い豪勢な馬車だぞ!」

「さすが英雄は違うな!」

「モーテンさん!おめでとうございます!」


その新たな情報に更に周囲の人間がヒートアップしつつある。

あぁこれは間違いなく時間がかかるな。

俺は窓の外で一生懸命奮闘しているモーテン達を見ながら長期戦を覚悟した。

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