異世界をスキルブックと共に

気のまま

入街(王都)

「それにしても凄い人だかりだな」

「はい、最近になり王国が帝国を退けたという情報が広まりつつあるので多くの人が戦勝国である王国に集まりつつあります。これから数日追悼と戦勝祝いの祭りが行われるそうなので今後更に増えると思われます」


ほうほう、そういうことか。

現在俺達は王都に入るための列に並んでいる。

前方を見ても一週間前は誰もいなかったのが信じられないぐらいの人の多さだ。


「それにしても何でお前達の礼服はそんなにスタイリッシュな感じなんだ?」


俺は振り返りながら王都に連れてきたメンバーを見る。

今回はいつも通りにエレナにマリアとリン、それに対応力が高そうなジャック、更には一度王国の王都を見てみたいと言い出したリアムとその護衛にメルドが一緒に来ている。

俺の隠れ蓑代表であるモーテンとは王都で合流する手筈だ。

最後にあのアホ勇者を連れてきているが隙あれば何かしようとするので一応逃げ出さないように土魔法で手枷を着けている。

それにしても改めてこいつらの服装を見てみるが俺の装飾過多な服装に比べて女性陣は落ち着いた感じのドレスを着ているし男性に至ってはスラリとシンプルに礼服を着こなしている。

何故俺だけこんな目立つ服装なんだ?

まぁ周囲から注目は隠密のお陰か全てエレナやジャック達に行っているから別に良いのだが似合わないと分かっているものを着ているというだけでかなり恥ずかしい。


「ご主人様が一番良い服装をするのは当然のことです。もしご主人が通常通りの服装向かわれるのであれば部下である私達はそれ以下の格好で参列しなければなりません。それに服装は相手の第一印象を決める大事な物です。ご主人は周囲には認められていませんが既に私達の国の主なのです。相手に見下されぬよう対等以上の服装で臨まねばなりません」


うーむ、そう言うものなのだろうか?

日本にいたときも何処かの国の代表者と話なんてしたことないからどうしたらいいか全然わからない。

やはり外交関係を担う人物の採用を急いだ方がいいな。


「それと先程から何度も言っているのですがそろそろ用意した馬車に乗って頂けませんか?ドレスアップした女性陣をこのような大衆の面前に晒し続けるのはあまり好まれたことではないので」


ジャックよ、そう言うが俺にこれに乗れと言うのか?

俺は直ぐ後ろを付いてきている馬車を振り返りながら見る。

いつの間に用意したのか俺の目の前にはどこぞの貴族様でも乗っていそうな豪勢な馬車があった。

誰が作ったのか見た目は豪勢なうえ車体は大きく何故か少し輝いているように見える。

馬も俺が召喚した奴らしく紋様が入っているしどうやってやったのかLVも上がり猛々しい風体をしている。

いったい誰がこんな凄い馬車に乗るというのだろうか?

拠点の隅でひっそり暮らしたい俺からすれば完全に罰ゲームだ。


「なぁ、もう少し目立たない馬車は無かったのか?あの商人が乗っているような幌馬車とかいい感じなんだが……」

「駄目です。ご主人様はこの国の王に来賓として招待されています。周囲の目もありますし王城に入るのにもそれなりの用意は必要なんです。さぁご主人様が乗らないとエレナさん達も乗れないんです。それともご主人様は彼女達を王城まで歩かせるおつもりですか?」


ぐっ……そう言われると乗らないわけにはいかないか……

この世界のルールを知らない俺からしてみればこの世界のルールに則り行動しているジャック達を尊重しなければならないことは分かるのだがどうにも目立つようなことは気が引けてしまう。

最初はただ人間と話がしたくて王国をめざしていた筈なのに何でそこの王様と話さないといけなくなってしまったのだろうか?

できればレルドみたいにフランクに話しかけてくれるとこちらも対応が楽なんだが……

そう言いながら俺は渋々ジャックが用意した馬車に乗り込みながら王都を目指した。


あの後やはり俺達の馬車が目立っていたのかそれを見つけた守衛に王都に来た経緯を話すとレルドから話が通っていたのかスムーズに入街することができた。

あとはモーテンを拾って王城に向かうだけだなんだが先程から馬車の中の空気が重い。

まぁ理由は分かりきっているのだが……


「なぁ俺はいつまでこんな扱いを受けるんだ?勇者だぞ?そこら辺のモブと勘違いしてないか?」

「いい加減黙っていて貰えませんか?」

「ならさっさとこの手錠を外せよ。これ異様に重てぇから疲れるんだよ、なぁあんたからも言ってくれないか?」


そう言って横に座るジャックに話し掛けているがこいつは最初と態度が全然変わらないな。

自分の状況を理解しているのだろうか?


「それは無理ですね。一応村上君は捕虜という立場ですからね。これから王国に引き渡すのでそこで改善を要求してください」


まぁ無理だとは思うが。


「ちっ面倒臭ぇな、そう言えば他の勇者についてあれこれ聞いてきたがあんたはこれからどうするんだ?日本に帰るのか?あんた自身が魔王なら死なない限り日本に帰るとかたぶん無理だろ」


そう言えばこの一週間で勇者から聞ける情報はそこそこ聞き出したんだったな。

どうやら他の勇者は帝国のダンジョンでLV上げや学校に通ってこの世界について学んでいるらしい。

また隠しているのかは分からないが他の勇者のユニークスキルは一人しか知らないと言うことだった。

そのユニークスキルは『洗脳』と言うもので任意の相手を洗脳できるらしいのだが俺はそのスキルを聞いたときなんて恐ろしいスキルなんだと驚愕した。

だが話しを聞く限りだとどうやら長時間掛けて洗脳しない限り完全には洗脳できないらしく普段は意識を扇動する程度なんだそうだ。

まぁそれでも相手の意思に作用するから恐ろしいスキルではあるのだがそれが本当に世界を救う勇者が持つスキルなのだろうか?

アンデットメイカーも含めて勇者のスキルが魔王依りすぎる。


「私は以前話した通り日本では死んでいるので戻れませんよ。それに私が死なないと戻れないとはどういう意味ですか?」

「そう言えばそうだったな。まぁゲームの中で生活する奴もいるしあんたもそのくちか。ってかどういう意味も何も、ラスボスを倒さないとクリアして元の世界に戻れないのは常識だろうが、王様もそう言ってたし間違いねぇよ」


ふむ、いったい何処の常識だろうか?

勇者召喚については詳しくないから分からないが本当に魔王を倒したら日本に戻れるのだろうか?

誰かを殺したら元に戻るとかゲームではないのだから恐らくその王様の勘違いだとは思うがこの世界に再度戻ってきた奴とかいないだろうし確認する術がない。

周囲を見てもみんな驚いたような顔をしているし初めて聞く内容なのだろう。

俺は勇者の話しを吟味しながらモーテンとの合流場所に馬車を走らせた。

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