異世界をスキルブックと共に

気のまま

ザック商会2

「それにしてもお久しぶりですねケンゴ殿」

「ええ、ザックさんお久しぶりです。突然訪問して申し訳ありません」

「いえいえ、ケンゴ殿ならいつでも来て頂いて構いませんよ。アンナも喜びます」

「そういって貰えると助かります。あれからアンナちゃんの体調は問題ありませんか?」

「はい、髪が白くなった以外は元気そのものでいつもケンゴ殿はいつ遊びに来るのか聞いてくるので困っているぐらいですよ」


おお、それは朗報だ。

やはり髪は戻らなかったが今後もし魔力が枯渇した人間がいても俺が魔力を譲渡すれば平常通りに生活できることがわかったのは大きい。


「それは良かった。でもその割には先程から姿を見かけませんが何処か遊びに行っているのですか?」

「いえ、上にいますよ。ケンゴ殿がランカさん達に用事があるということだったので顔を出さないように言い付けてあります」

「そうですか、なら後で顔を出さないといけないですね」

「用事が終わったのでしたら呼びましょうか?おーいアンナ!ケンゴ殿が会ってくださるそうだぞー!」


いやちょっと待て、俺は今後で顔を出すと言ったばかりだぞ?


「いや、ちょっと待っ……」

「おじさん!!」


そうザックさんが言った瞬間二階からとても元気な声と急いで駆け降りてくる音が聞こえる。

これはまずいな……

俺がこれから起こりうる状況に絶望しているとアンナちゃんがその勢いのまま俺の懐にダイブしてきた。

ぐふっ……

今回俺は事前に身構えていたので何とか耐えることができたが驚くことにアンナちゃんはカスミ式ダイブ型挨拶を採用している人間なのだ。

以前たまに顔を出していたのだがどうもアンナちゃんは期間が開くとこのダイブの威力が上がる傾向にある。

今回はこっそり近付いて声を掛ける予定だったのだがザックさんに嵌められてしまった。


「ははっ……アンナちゃん久し振りだね。いつも元気がいいのは良いことなんだけど何で毎回ダイブしてくるの?」

「おじさんに会えると思うとこう身体が勝手に抱きついちゃうの。駄目だった?」

「いやいや全然、俺もアンナちゃんを抱っこできて嬉しいよ」


こう言われたら駄目と言える筈がない。

俺は腹を押さえながら毎回これを素直に受けていたエレナに尊敬の念を抱きながらアンナちゃんに笑いかけた。


「こら!アンナ!あまりケンゴ殿に迷惑を掛けないように言っただろ!」

「でも……」

「いえいえ、構いませんよ。私もアンナに会えて嬉しいですし。ああ、そういえば直にランカ達に私の商品を扱わせようかと思っているのですが彼女らは商人としてどうですか?」

「どうもこうも彼女達はよく働いてくれますし自主的に学ぼうとするので覚えもいいんですよ、物次第でしょうがすぐにでも商売は始められると思いますよ。ですが彼女らは奴隷の獣人なので商会の許可が降ないのが問題です」


ふむ、奴隷の獣人だと許可が降りないのか……

何が問題なのだろうか?


「何故奴隷の獣人だと許可が降りないんですか?」

「そもそも奴隷には許可が降りないんですよ。借金がありその返済中ということで信用も預託金も作れないので普通はその主人が商会に認可をとり奴隷を従事させます。彼女らにケンゴ殿の商品を扱わせるのならケンゴ殿が商会を作っては如何ですか?」


んー俺が商会を作るのか……

そうなると名前はケンゴ商会とかになるのか?

却下だ。

そもそも商人の手解きを受けているのはランカ達だし奴隷から解放するのだからランカが商会を作ればいいんじゃないか?

ランカ商会、うんいい名前だ。

俺はこの世界の通貨もあまり使い慣れていないしできれば目立ちたくない、ひっそりと拠点で魔道具を生産し卸す職人側でいたいんだ。


「私には無理ですよ。彼女らはこの後奴隷から解放しに行く予定なのでそのついでに商会に登録してきましょう」

「えーおじさんアンナと遊んでくれないの?」

「すぐに済む用事だから終わったらちゃんと遊ぶよ、約束だ」

「うん!」

「そうだったんですか、ですが彼女らは引き続きケンゴ殿の元で雇われるのですよね?だったらケンゴ殿の商会にした方が後々揉め事も少ないと思いますよ?」

「そうなんですか?」

「ええ、やはりこのアルカライムで獣人が商会を持つのは珍しいので色々弊害があると思いますし何より彼女らは若い。荒っぽい人間もいるので新規の商会等はたまに揉め事になることもあります」


商会を作るのにも色々あるんだな。

今うちの拠点に商会を任せられる人間とかいただろうか?

まぁ働くのはランカ達だし後で聞いてみるか。


「色々あるんですね」

「そうですね、一応商会の立ち上げの際に私の推薦があることを伝えてください。後で一筆書きますがこれだけでも多少揉め事は減ると思います。ただ今は時期が悪いので少し様子を見た方がいいかと思います」

「時期ですか?」

「ええ、ケンゴ殿も現在王国は帝国に攻められているのはご存知ですよね?現在ナミラ平原まで来ているらしいのですが王都まで陥落し帝国の対応次第では私達も急いで逃げなければなりません。現在多くの商会が荷物を減らすため商品を売りに出しています。参入を考えているのならば戦争の結果が判明してからが良いと思います」


ふむふむ、なら問題ないな。

帝国はナミラ平原で壊滅させたから王都が陥落することはあり得ない。

ん?ちょっと待てよ、まだ戦争に勝った情報は広まってないから逆にチャンスなんじゃないか?


「それなら問題有りませんよ。ナミラ平原での戦争は既に王国軍が勝利しています」

「王国軍が勝利?それは本当なんですか?」


俺のその言葉に驚愕したような表情を浮かべている。


「はい、私も参加したので間違いありませんよ。この情報はあと数日で広まると思いますがザックさんならこの情報を有効活用できるんじゃないですか?」

「確かにそれが本当ならば商人としてまたとないチャンスですが……いいんですか?私にそのような重要な情報を教えても」

「問題有りませんよ。早いか遅いかの問題ですし折角有効活用できるのであれば使うべきだと思いますから」

「わかりました。ケンゴ殿を信じましょう。少し出てくるのでアンナを預かって頂いても構いませんか?」

「ええ、いいですよ」

「有り難うございます」


ザックさんはそう言いながらこちらに頭を下げると屋敷の奥に消えて言った。

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