異世界をスキルブックと共に

気のまま

ダッチ

久し振りに拠点内を見て回ると各所がかなり発展はしているのが伺えた。

農業区では畑や果実の木等がきっちり区画され整備されていたし住宅区や商業区でも少しづつ建物が増えてきているのがわかる。

広場を中心に四方に区分けしていたがこれは直に拡張をしないとすぐ手狭になってしまうだろう。

村人達の件もあるし落ち着いたらもう少し拡張しよう。

それに驚いたことに拠点内に見たことのない魔道具が普及し始めていた。

物を運ぶ台車のような物や木や石を加工する物等今拠点に必要な物が多い。

みんな使い慣れているところを見る限り元々この世界で普及している魔道具なんだろう。

だがこの拠点に魔道具を制作できる人間は俺とアルバートしかいないから恐らくあいつが制作したのだろうが最近空間魔術の魔道具関連で手一杯だった筈なのだがいつの間に作ったのだろうか?

アルバートは魔道具関連のことになると夢中になりすぎる傾向にあるから無理をしていないといいのだが……

しかし先程メルドはもっと女性に気を使った方がいいと言っていたがいったいどういう意味だったんだ?

俺は一応この拠点にいる女性陣にはそれなりに気を使っていると思うんだが……

話しの流れ的には奴隷関係で間違いないのだろうが何が問題だったのかがわからない。

奴隷から解放することは間違いなく問題ないとわかる。

自ら奴隷になった奴はいないだろうし自分がやりたくない強制的な労働からも解放される。

労働の代わりに俺が衣食住の保証をしているが余分に働いて貰った給金はもちろん出すしあいつらならばもし一人になったとしても生きていくことは可能だろう。

他に俺が相手に配慮しなかった発言といえば……ああ、あの金を気にせず好きな物を買えと言ったことか。

確かに全員女の子だから金を渡して好きな物買えと言うのは相手のことを考えていなかったな。

やはりここは一ヶ月とはいえ働いたお礼になにかプレゼントした方がいいだろう。

だがどうする?俺はこの世界の、しかも年の離れた女の子の趣味など全然わからないぞ。

花や食事などのその場限りの物が良いのだろうか?

それとも装飾品等の身につける物か?

うーむ、悩ましい。

誰か相談できる人間がいると良いのだが……


「あっ!ご主人様!!お久しぶりです!!完成した家は見て貰えましたか?」


うおっ、考え事していたから気が付かなかったが拙い奴に出会ってしまった。

こいつはダッチというアルカライムで雇った建築スキルの男なんだが最近ことある毎に俺に出来上がった屋敷の下見を行えとしつこく言ってくる。

俺が今一番拠点で会いたくない人物だ。


「いや、少し忙しくてな。残念ながらまだ見れてないんだよ」

「そうですか!だったら今から一緒に行きませんか?内装関係はやはりご主人様の意見を取り入れないと中々決めかねている場所もあるので是非意見を聞きたいんです!」

「だが今は見ての通り忙しくてな」

「先程から拠点内を歩いているだけのように見えましたが何が忙しいんですか?」


そう言いながらダッチは俺に詰め寄ってくる。

ぐっ、こいつまさか俺の後をつけていたのか?

最近拠点は人数が増えて周囲に沢山いるから気配察知関係を特に気にしていなかったがまさか拠点内で尾行している奴がいるとは夢にも思わなかった。


「少し考え事をしていてな。気分転換に拠点内を見て回ってたんだよ」

「そうだったんですか。悩みがあるのでしたら僕で良かったら相談に乗りますよ?拠点内を見て回っているならついでに屋敷も見に行きましょう!!」


ぬぬ、手強い。

恐らくこのまま問答を続けていてもこいつが折れることは無さそうだ。

それにしてもこの拠点は個性が強すぎる人間が多すぎないか?

もう少しこう穏やかで普通な人間がいても良い気がするのだが……


「わかったわかった、見に行くよ」

「本当ですか?以前みたいに途中で逃げたらエレナさんに相談しますからね?」


こいつ……絶対既に誰かに相談しているな……

まぁいつかは行かないといけないとは思っていたんだが突然言われると俺の心の準備が間に合わない。

取り敢えず相談に乗ってくれるということだから相談した後何かしら理由を付けて逃げだそう。


「心配するな。それに前回は急用ができたと言っただろう?」

「そうですけど流石にそろそろ終わらせないと最近人口が増えてきているから手が回らなくなりそうなんですよ。本当にお願いしますよ?」


なんということだ……俺のせいで拠点に迷惑が掛かっているだと?

だが俺の要望は一貫して拠点の端でひっそりと暮していくことなのに何故こうなった?

この拠点には一定数の俺の寝床を排除しようとする勢力が間違いなくいる。

あんな小スペースであまり邪魔にはならないと思うんだが……

まさかあそこの立地は俺が知らないだけでかなり有効なスペースなのだろうか?

酸っぱい果実の木も隣にあるし可能性は十分にある。

これは調査が必要だな。


「任せておけ、それより相談なんだが若い女性へのプレゼントを渡す場合何がいいんだ?」

「若い女性ですか?まさかご主人様にお相手ができたんですか?これは寝室を拡張しないと拙いか……」

「いやいや、マリア達の奴隷解放祝いに何か渡そうと思ってな。何かオススメとかないのか?」

「マリアちゃん達を解放するんですか?かなり早いですね。それにプレゼントですか……あの子達ならご主人様が何か作ってプレゼントすれば喜ぶと思いますよ」

「俺の手作り?花とか装飾品とかじゃなくて?」

「はい、みんなご主人様のことを慕っていますからね。既製品よりは手作りの方が喜ぶと思います」


手作りか……考えていなかったがこれはまた難易度が上がったな。

事前に何かしら欲しいものを調査できたら良かったんだが……


「手作りか……」

「そんなに悩まなくてもいいと思いますよ?ご主人様がその子達のことを考えて作ったものならなんでもいいんです」

「そういうものなのか?」

「はい!そういうものですよ。それにしてもご主人様もそういうことで悩むんですね。驚きました」

「そうか?俺はいろいろと悩み事は多い方だと思うぞ?」


新しくできた家のこととかな。


「いずれその悩みを気軽に相談できる相手ができるといいですね。さぁほら早く行きますよ!その未来の相手の為に寝室を広めに改装しないといけないんですから!!」

お願いだから止めてくれ…
俺はダッチに手を引かれながら俺の新寝床(仮)に連れていかれた。

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