異世界をスキルブックと共に

気のまま

訓練(邪魔)

あれから親子が落ち着くまで訓練は再開されなかったのだが問題はその後起こった。

魔石の特定ができないから家族や恋人等の召喚は完全にランダムでいつ召喚されるかは分からないと聞いていた村人達が何故この親子だけあっさりと再会できたのか疑問に思い、その理由を親子に追及し始めたのだ。

我先にとその情報を得ようと村人達が親子に群がる様は本当に凄かった。

みんな訓練で剣を持ったままだし声を上げ各々好きに喋っていたからこのままだと広場が収拾つかなくなりそうになったその時その声は広場に響いた。


《全員黙れ!!》


ゴブ朗のその声に辺りは一瞬で静かになった。

いや静かになっただけじゃないなゴブ朗に近い位置にいる奴はその威圧に怯えているようにも見える。

まぁ俺も今のゴブ朗の声にビックリしたから間違いないだろう。


《貴様ら良い度胸だな。百歩譲ってその親子が訓練中に再会の抱擁しているのは良いとして貴様らは何だ?俺がいつ訓練をやめていいと言った?》

「でも……」

「なんでこの親子だけ……」

「不公平だ……」

《不公平だ?どの口がそんな戯れ言を言っている。主様の恩恵を受けるだけの貴様らが主様に対し不満を口にするのか?殺すぞ》


ゴブ朗のその言葉に先程の再会ムードは何処に行ったのか広場は完全に重苦し雰囲気に飲まれている。


《主様もどういうつもりだ?訓練を邪魔するなら何処か別の場所に行ってくれ》


うおっ、こっちにもとばっちりが飛んできた。

まぁ確かに俺が訓練中に何も考えず召喚し訓練を邪魔したことは間違いない。

俺は後でこっそり召喚するべきだったと後悔しながらゴブ朗に謝罪をした。


「ゴブ朗すまなかった。訓練を邪魔するつもりは無かったんだがリアムの『契約』の関係で俺が独断でその子を召喚したんだよ」

《その子供は『契約』の成果として召喚したのか?》


ん?正確には成果は俺に頼むということだけだったがまぁニュアンス的には大体合っているか。


「ああ、一応そんな感じだな」

《そうか、なら問題はない。むしろ目的ができた方が効率が良い。貴様ら今のを聞いたな?その子供は母親に会うために自分の力で行動しその成果として主様に認められ召喚されている。なんの成果も出してない貴様らが文句を言う筋合いはない》

「だったら何か成果を出せば優先して家族を召喚して貰えるんですか?」


いやいや、別に成果を出さなくても拠点の拡張を行い受け入れ体制が整ってきたらちゃんと召喚してやるぞ?

その際可能ならばリアムに手伝って貰ってなるべく家族と会えるように配慮するつもりだ。

やはり生活するにしても慣れ親しんだ家族がいるといないじゃ精神的にも大きな違いがあるしな。


《それは貴様ら次第だ。主様はいつも良く働く者の要望を断わりはしない。ただ何もしない奴は主様に願いを言う資格すらないと思え。わかったら早く元の位置に戻れ》


そうゴブ朗が言うとみんな渋々だが元の位置に戻って行った。

先程ゴブ朗が士気を上げたばかりだというのに本当に申し訳なく感じる。

まぁゴブ朗が言っていることも概ね嘘ではないから頑張り次第ではなるべく早めに召喚してあげよう。

ちなみに概ねと言ったのは俺が全ての住民の要望を断らず聞いている訳じゃないからだ。

絶対に俺の寝床を撤去する要望だけは全力で却下しなくてはならない。

さて、俺がこれ以上ここにいると邪魔になるだろうし移動するか。

今日は何もしないでゴロゴロして過ごす予定だったがそんな気分じゃなくなったし久し振りに拠点の中でも見て回ることにしよう。

ああ、それとリンに伝えておかないといけないことがあったな。


「リン、この訓練が終わったらマリアを誘って俺のところに来てくれるか?少しアルカライムに行くぞ」

「アルカライムにですか?何故私とマリアに?」

「ああ、今回はお前達を奴隷から解放してやろうと思ってな。アルカライムにいるランカ達と一緒に奴隷商に行くぞ」

「えっ……解放ですか……?」

「そうだ。そもそもお前達は労働期間が1ヶ月ぐらいだったからな。戦争もあって少し働かせすぎた。ちゃんと対価は払うから欲しいものがあったら何でも言ってくれ」

「いえ……それは……」

「ああ金額とは気にしなくていいぞ、お前達は本当に良く働いてくれているからな」


最近マリアとリンは本当に拠点に馴染みすぎて奴隷として雇っていることを忘れてしまいそうになる。

既にうちの拠点には欠かせないメンバーになっているから奴隷から解放した後も是非うちで働いて欲しいところだがどうなるかはわからない。

この子らにも人生があるだろうしもしかしたら故郷に帰りたいと言う子もいるかもしれない。

言動から多少なり慕われているとは思うが俺はできるだけその子の意見を尊重して行動するだけだ。


「あの……ケンゴ様はどういうおつもりなんですか?」


どういうつもり?いや今言った通りなんだが……


「当初の予定通り奴隷から解放するだけだが何か問題でもあるのか?」

「いえ……問題があるわけでは……」

「そうか、なら俺は拠点内をぶらぶらしているから終わったら連絡してくれ」

「はい……」


ん?どうしたんだ?いつもの元気がないが何処か具合でも悪いのだろうか?もしかしてゴブ朗が働かせ過ぎたか?


「なぁケンゴ様よ。俺はリアムと長くいたからなんとなく分かるが女性にはもっと気を遣うべきだと思うぞ?」

「どういう意味だ?」


俺はメルドには呆れられた視線を向けられながらその意味を考えた。

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