異世界をスキルブックと共に

気のまま

リアムの能力

おお……

急に広場にいるみんなのテンションが上がるとビックリするな。

相変わらずゴブ朗はみんなの士気を上げるのが上手い。

けど訓練でここまで士気を上げる必要があるのだろうか?

みんな昨日のアンデッドの移送を手伝って貰ったから確実に寝不足だぞ?

無理をして体調を崩さなければいいのだが……


「みんなテンション高いな。怪我とかしないといいんだが……」

「そこら辺は大丈夫じゃないか?リンも調整しているし多少の怪我ならこの拠点で直ぐ治せるのだろう?」


まぁその通りだがやはり剣を持ったこともない人間が剣を魔物相手に思いっきり振っているのを見ると危なっかしいものを感じる。

この訓練は精神的に良くないな。

一時訓練を観察していると村人に混ざりリアムが漸くアンデッドを倒すことができたのかその場で飛び跳ねて喜んでいるのが見えた。

おお、凄いな。あんな小さい子でも時間を掛ければアンデッドも一応倒すことができるんだな。

そもそも今回魔石は壊さず倒しているからアンデッドはいったいどういう基準で死ぬんだろうか?

耐久力がなくなったらか?それとも動けなくなったらだろうか?

俺がそう疑問に思っていると向こうからリアムがこちらに向かって駆けて来た。


「ねぇねぇ!メッちゃん今のちゃんと見てた!?私でも一人で魔物倒せたよ!!」


リアムはメルドに向かって大きな声でそう報告している。

初めて一人で魔物を倒したから嬉しいのだろう。

うんうん、分かる、分かるぞその気持ち。

だからお願いだ、剣を振り回しながらこちらに来るのは止めてくれ。

当たったらどうするんだ、それとっても硬いんだぞ。


「あれ?ケンゴ様も来てたの?見てた?リアムが魔物倒すの見てた?」

「ああ、見てたよ。一人で倒すなんて凄いじゃないか!」

「でしょでしょ?これでリアムも一人前だよね!だけど実は少しズルしちゃったんだ。」


ズル?何のことだ?この訓練で、しかもゴブ朗の前でズルをするなんて不可能だと思うが……


「ズル?」

「うん、実はこの子が大体どう動くか教えてくれたからちゃんと当てられたの」


そういうと先程倒したアンデッドから剥ぎ取り持ってきたのか一つの魔石を目の前に出してきた。

ん?リアムが魔石の声を聞けるのは知っているが魔物の体内の中にあるのまで聞けるのだろうか?


「リアムは魔物の中にある魔石とも会話ができるのか?」

「普通はできないよ。けどこの子達の声は今も聞こえるんだよ。なんでだろ?」


どういうことだ?普通はできないということだから何かこのアンデッドに理由があるのだろう。

普通との違い……スキルか?

このアンデッドはみんな勇者のスキルで作られている。それが原因だろうか?

もしかしたらアンデッドだけ声が聞こえるのかも知れないが現状調べようがない。

取り敢えず他の自然発生のアンデッドがいたら試してみよう。


「取り敢えず理由は調べてみないと分からないな。アンデッド達は何て言っているんだ?」

「うーんと、普段は話掛けないと文句か誰かの名前を言っている子が殆どだよ。帝国さんと一緒に歩いていた時もそうだけど沢山いるから五月蠅いんだよ」


ほうほう、興味深い。

確かにアンデッドは殺されたから恨み言や想い人の名前を言っているのは分かる。

だけどそんな声が四六時中聞こえているリアムはよく正気が保ってられるな。

俺なら数時間で根を上げる自信がある。

慣れとかだろうか?


「それにしてもそんな声がいつも聞こえていると辛くないか?」

「それは大丈夫だよ!昔から声はたくさん聞いててある程度は調整できるから!」

「それなら問題はないか」

「ねぇねぇ、ケンゴ様!お願いがあるんだけどこの子をあの人にあげてもいいかな?」

「ん?急にどうした?」

「実はどう動くか教えて貰う代わりにケンゴ様に頼む約束をしちゃったんだ。あの人がこの子のお母さんみたいだから一緒にいたいみたい」


そう言いながらリアムは訓練に参加している一人の女性を指さした。

ああ、そういえばこの子のスキルは魔石との何かしらの約束を行う『契約』だったな。

まだメルドとムランしか見たことないがこんな簡単な約束もできるのか。

しかしリアムの魔石の声を聞く体質は本当に凄いな。

今回死んだ王国の村人達にはランダム召喚だから家族が召喚されるまではどうしても時間が掛かることを伝えているがリアムがいれば現在復活している村人達の家族を優先して召喚することも可能なんじゃないか?


「それば別に構わないぞ。だが折角なら召喚して会わせてあげた方が良いんじゃないか?」

「えっ!いいの?」

「ああ、そこまで手間じゃないしいずれみんな召喚すると約束しているしな」

「さすがケンゴ様!!エッちゃんと違って優しいね!!」


エッジ……お前こんな良い子に優しくないとか言われてるぞ……

リアムはそう言うと一つの魔石を手渡してきた。

直ぐに召喚すると思っているのか俺にリアム達の視線が集まる。

だがちょっと待て。

このまま召喚したら100%全裸だ、せめて着る物を用意してあげた方がいいだろう。

これは俺が数々の魔石を召喚し漸く学んだ大切なことだ。

俺なら全裸で大衆の面前に召喚された日には羞恥で死んでしまう自信があるからな。


「そうなのかな?私はあまり気にならなかったけど」

「俺も特に気にならないな」

「私は死ぬと思います」


そうなんだよ、服を用意した方が良いと言ってみたものの俺が召喚した奴らは大抵最初は恥ずかしがらない奴が多い。

指摘してたまに恥ずかしそうに隠し出す奴がいる程度だ。

この世界は露出狂が多いのかだろうか?心配になる。


「まぁ取り敢えず無いよりはあった方がいいだろ」


俺はそう言うと収納から角ウサギと狼の毛皮で作った簡易服を出しながら召喚を始めた。

しかしこの服、最近しっかりとした服が拠点に流通しだしたから久しぶりに見たな。

拠点ができた頃はみんなこれを着ていたな……

俺がそう懐かしんでいると直ぐに召喚は終わった。

見た目は……リアムと差ほど変わらない男の子だ。

俺は服を手渡しながらいつのもように質問をする。


「現状は理解出来ているかな?」

「はい」

「だったら先に行っておいで。この拠点については後で誰かに聞くと良いよ」

「はい!」


そういうとその子は一直線に母親の元に駆けて行った。


「お母さん!!」

「えっ?ロイド?本当にロイドなの?」

「お母さん!!ただいま!!」

「ああ、ロイドロイドロイド。もう絶対に二度と放さないから」


二人は出会うなり直ぐにお互いをもう放すまいと抱き締め合った。

周囲の人達も訓練の手を止めその光景を見守っている。

うんうん、やはり家族は一緒にいた方が良いよな。

俺はその光景に満足しながら二人が落ち着くまでその様子を見守った。

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