異世界をスキルブックと共に

気のまま

王城前

「貴様、私は急いでいると言ったはずだが?」

「人間自分ではどうにもできないこともあるんですよ」


レルドもあの泣いている二人の前に行ってみればわかる。

話しかけられる雰囲気なんか皆無だったぞ。

しかも泣いている原因に俺が関わっている。

これはどんなに屈強な男でも割って入るのは不可能だろう。

あぁ、手を抜いて念話で話し掛けなくて本当に良かった。

話しかけたが最後、俺の評価は地の底だろう。


あの後エレナと無事に合流しカズコちゃんなら問題ないだろうが一応捕まっている間のカスミちゃんの待遇に便宜を図って貰うための賄賂として以前渡し忘れた黒の外套の魔道具を渡してきた。

カズコちゃんは受け取った時とても驚いていたが素直に了承してくれた。

まぁ本来は無償であげるはずだったが問題はないだろう。

その後俺達は冒険者ギルドを後にし王城に向かう途中でレルドが文句を言ってきて今に至る。

王城までの道中は相変わらず閑散としているがレルドが連れてきた兵士達が時折視界に入るようになった。

みんな忙しなく働いているし優秀な奴等ばかりなのだろう。


「それでこの後はどうするんですか?」

「王城にいるカインと協力し王都を復興させる。戦争に勝利した話が周囲に伝われば自ずと人は戻ってくるからな、その時の受け入れ体制や防犯を強化する予定だ」

「何か手伝うことはありますか?」

「いやない。貴様が動くと想定外のことが多すぎる」


想定外のことが多い?いったいなんのことを言っているのだろうか?


「そうですか……」

「気に病む必要はない。貴様は此度の戦争で十分に働いてくれた。ここからの復興は私達の仕事だ。貴様は陛下が帰還するまでゆっくりと休んでおけ」


ふむ、そう言ってくれるのであればお言葉に甘えるとしよう。

拠点に帰ってやらないといけないことも多いしな。

そう話をしながら移動していると目の前に王城が見えてきた。

以前遠くから見た時も凄い作りをしていると思ったが近くに来て見てみると尚更圧倒されるな。

日本にはこんな洋風の城なんて無かったから中はいったいどうなっているのだろうか?


「さて貴様達はここまでだ。態々城まで同行してくれたことを感謝する」


ん?ここまで?

いやいやちょっと待て、俺は中が気になるから一緒に行くぞ?


「いえ、何があるか分かりませんので我々も中まで付いて行きますよ」

「それには及ばん。カズコ殿の話で城にはカインがいることは間違いないだろう。ここからは我が兵士達で十分だ」

「ですが……」

「貴様達を信用していないわけではないのだが他国の人間に城の中をあまり見られる訳にはいかんのだ。今は警備の人間もいないしな」


なんだと……ここにきて他国勢力という設定が裏目に出るとは……

俺は別に情報を盗んだり家捜しするために王城に入りたいんじゃない。

純粋に王城の中を観光したいだけなんだ。

どうにかならないか?


「また陛下が帰還し次第貴様は城に呼ばれるだろう。それとも今城に入らないといけない理由でもあるのか?」


ぐ……そう言われてしまうと入りづらい。

今無理に入ると後々尚更自由に観光できなくなる可能性があるしな。


「いえ、わかりました。では私達はここで失礼します。また何かありましたらギルドにいるモーテンという冒険者までご連絡下さい」

「モーテンだな?わかった。予定が決まり次第連絡しよう」

「それでは総司令、また後日お会い致しましょう」

「うむ……いや、やはり少し待て」

「ん?どうかしましたか?」

「私は既に軍を離れた。次会うときは総司令ではなくレルドと呼べ」


おっ?いいのか?内心既に呼び捨てなのは内緒だ。


「いいんですか?」

「構わん、貴様はそれだけの働きを見せた。妹との契約が切れても貴様とはできれば友好的な関係でいたいからな。私も次からはケンゴと呼ばせて貰うぞ」

「ええ、構いませんよ」

「そうか、感謝する。それとケンゴ、此度の戦の援軍本当に助かった。陛下に変わり礼を言わせてくれ。ありがとう、この恩は必ず返そう」


レルドはそう言うといきなりこちらに向かって頭を下げた。

おっと、いきなり頭を下げられても対応に困る。兵士達も見ているが大丈夫なのか?

それに既に何度か感謝の言葉は貰っているし対価も貰う予定だからそんなに気にしなくていいぞ?


「では、また近いうちに会おう」


俺がどう対応しようか迷っているとレルドは頭を上げて王城の方に向かって行ってしまった。

それにしてもレルドが俺と友好的な関係を築きたいとは驚いたな。

名前を呼ぶだけで感謝されたしそんなに俺の事を名前で呼びたかったのだろうか?別に好きに呼んでくれて構わないのだが……

しかしカインというカズコちゃんの上司も気になるから会ってみたかったんだが少し残念だな。

まぁ有能な人物ならばいずれ会う機会もあるだろう。


「それじゃ俺達も拠点に戻ろうか」

「ケンゴ様、戻る前に一つ相談したいことがあるのですが……」


相談?ああ、カスミちゃんのことか。

だが俺があの時二人が話をしていたのを覗き見していたなんて決してバレる訳にはいかない。


「相談?エレナが相談なんて珍しいな。いったいどうした?」


うん、白々しいな。顔に出てないといいのだが……


「はい、実はカスミのことで少し相談したいことがあります」

「カスミちゃんの?」

「はい、カスミが今回行ったことはとても許しがたいことです。ですが彼女は私のことを考えて行動したに過ぎません。そもそも私がケンゴ様の側にいなければ彼女はケンゴ様に対して害意を示すことはなかったでしょう」

「何が言いたいんだ?」

「償いは何でも致します。ですからカスミを許しては頂けないでしょうか?そして烏滸がましい願いとは存じますができることならカスミのことを助けて欲しいんです」

「それはカスミちゃんのお願いを聞いている訳ではないんだよな?」

「はい、私の願いです」

「理由は?」

「私の唯一の親友なんです」

「そうか」


さぁどうしよう、今回もなんとなく誤魔化していたら話すタイミングを完全に失った。

俺自体は全然カスミちゃんに対して怒ってなどいないしむしろ俺のせいでカスミちゃんが暴走してしまった罪悪感すらある。

既に対策はしてあるし今更そんなに気にすることじゃないとか言える雰囲気ではない。


「エレナが自分のお願いをするなんて初めてだな。わかった、なんとかカスミちゃんが助かるように手を打とう」

「有り難うございます……本当に有り難うございます」


エレナはそう言いながら俺に対し深く頭を下げた。


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