異世界をスキルブックと共に

気のまま

カスミの今後

「実はこのカスミという女性は私の知り合いなんですよ。このまま死刑にされるのも後味が悪いので総司令の力で少し減刑できませんか?」

「さっきカズコ殿と話していたギルド員の事か、結論から言うと不可能だ」

「そうですか……何か死刑を回避する方法とかはないんでしょうか?」

「その女は貴様を指名手配して貶めた人間なのだろう?よくそんな人間を助けようなどと思うな」


確かにあまり知らない人間なら自業自得だと切り捨てるところだろうが今回は俺とカスミちゃんの行き違いが原因だ。

今回はカスミちゃんもやりすぎだがそもそも俺がスキルを使用しエレナを生前とは性格が目に見えて違う状態にしてしまったことが始まりだ。

できれば助けたい。


「先程のも言いましたが知り合いなんですよ。今回たまたま行き違いがあっただけで普段はとてもいい子なんですよ」

「そうか、だがその女が起こした罪は変わらん。その女だけ罪を見逃したら他の者に示しがつかんからな」


まぁそうだよなぁ。

法治国家なら尚更法は守らなければならない。


「そういえば先程カズコさんは一生鉱山奴隷もあり得ると言っていましたよね?」

「そうね、死刑にするのは簡単だけど今回被害者のスキルの再取得までの生活の維持にお金がかかるから財産没収で資金が足りなかったら鉱山に送られる可能性が高いわ」


ふむ、それだったらなんとかやりようがあるか……


「だったらその鉱山行きが決まったら私がその奴隷を購入することはできませんか?」

「正気なの?いくら鉱山奴隷と言ってもかなりの金額になるわよ?」

「ですが彼女の減刑は不可能なんですよね?だったら私が取れる手段はそれしか有りませんから」


いったいどれくらいの金額になるかはわからないがお金はまだそれなりに残っているし足りなければ今までゴブ朗達が狩ってきた魔物の素材が山のように収納袋の中に眠っている。

モーテン達に換金させればそれなりの資金になるだろう。


「確かにその女は罪を受け奴隷に落ち、被害者に資金も充当できるのであれば恐らく貴様が言うように購入も可能だろうな。では私はその鉱山奴隷を貴様が購入できるように手を回せばいいんだな?」

「はい、よろしくお願いします」

「わかった。だがこれで貴様に対する貸しはなくなると考えて構わないな?」

「ええ、それで構いません」


まぁ今ここで行われているのは裏取引みたいなものだから貸しがなくなるのは惜しいがしょうがない。

いやこの国の王子が直々に動いてくれるんだからそれに勝るものはないか。

これでカスミちゃんが死ぬ確率はだいぶ減ったな。

刑期がどれくらいになるか分からないがカスミちゃんには拠点でゆっくり返済していってもらおう。


「ではこれで話はついたな。カズコ殿忙しい中貴重な時間を作って頂き感謝する」

「あら、いいのよ。私とレルドちゃんの仲じゃない。またいつでも遊びに来て頂戴」

「はい、また王都が落ち着いたら寄らせてもらいます。おい!行くぞ!」


そう言いながらレルドが冒険者ギルドを後にしようとしているがちょっと待て。

まだエレナが戻って来ていないだろうが。

久しぶりの対面で女の子同士積もる話しもあるのだろう。


「ちょっと待ってください。エレナがまだ戻って来ていませんよ」

「私は急ぎカインと会わねばならん。同行するのであれば早く呼んで来てくれ」


おいおい、早く王城に戻りたいのはわかるが転移門で数日短縮できたんだからこれぐらい誤差じゃないか?

余裕がない男は嫌われるぞ?


「わかりましたよ」


俺はそう言うとエレナが潜って行った扉へと向かった。

扉を開けて通路を少し進むと更に地下に繋がる階段があったがこの先だろうか?

それにしても暗いな。

小さな灯りが各所にあるだけで足下も覚束無い。

俺がゆっくり階段を降りていると何やら声が聞こえてきた。


「エレナちゃんごめんなさい。本当にごめんなさい」


その声に階段から少し顔を出してみるとカスミちゃんが格子越しにエレナに縋り付き泣きながら謝っていた。

どうしよう、出て行きづらい。


「カスミ……何故あんなことをしたの?」

「グスッ、あの後エレナちゃんが騙されてるって思って色々調べてたの。そしたらあの男は黒の外套と繋がりがあるって噂で聞いていてもたってもいられなくて……」


おい、誰だそんな噂流した奴は。

確かに俺は黒の外套と接触する機会は多かったがどちらかというと殲滅していたほうだぞ。


「カスミ……貴方は昔からそうよね。一度こうと決めたら誰がなんと言おうと突き進んで行って。いつもフォローが大変だったのよ?」

「えっ?そうだったの?」

「そうよ。本当に変わらないわね。それにあの時はきつく当たってごめんなさい」

「エレナちゃん謝らないで!エレナちゃんが突然変わってビックリしたけど全部あの男が悪いんでしょ?」

「そうね。私が変わった原因は確かにあの人に寄る所が大きいけれどあの人は決して悪い人ではないわよ」

「それは……エレナちゃんが側にいるぐらいだからわかるけど……でもあの男は普通じゃないよ。私はエレナちゃんには普通に幸せなって欲しいから……」

「カスミ……私の幸せは私が決めるわ。それに貴方に幸せになって欲しいと願う気持ちは私も同じなのよ?」

「うっ、エレナちゃんどうしよう。私大変なことしちゃった」

「そうね、今回は私でも庇いきれないわ」

「そうだよね……」

「だけどケンゴ様ならどうにかしてくださるかもしれないわ」

「だけど被害者が出てるんだよ?」

「それも含め少し相談してくるわ。大丈夫、ケンゴ様なら決して悪いようにはしないから」

「そうかな……私いっぱい酷いこと言ったし……」

「大丈夫、今度一緒に謝ればちゃんと許してくれるわ」

「エレナちゃんも一緒に?」

「ええ、そしてここを無事に出れたらまた昔みたいに一緒にお菓子を作りましょう」

「ううっ、エレナちゃん!!」


うん、完全に出るタイミングを逃したな。

目の前では女の子二人が泣きながら抱き合っている。

どうしよう……上に急いで戻れとかとてもじゃないが言える雰囲気ではない。

それにしてもエレナはお菓子とか作っていたんだな。

俺まだ一度も作って貰ってもいないぞ?

取り敢えず俺は二人が落ち着くまで階段に隠れながら声を掛けるタイミングを伺った。

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