異世界をスキルブックと共に

気のまま

王都のギルド7

「勇者が魔王の魔石を集めるためだと自分で言っていましたからね」

「おい、貴様はいつも言葉が足りん。もう少し詳しく話せ」


詳しくといってもあまり今言ったことと変わらないぞ?


「問題は勇者のスキルですね。今回戦争に来ていたのは一人ですが彼のユニークスキルがアンデットメイカーというものでした」

「アンデットメイカー?まさか……」

「ええ、想像した通り生物の魔石からアンデットを作り出すスキルです。彼はこのスキルを利用して王国の人員のアンデット化、更に魔王の魔石から魔王のアンデット化を行いそれを使役するつもりでした」

「まさか勇者が本当にそんなことを?」

「彼本人から聞いたので間違いありませんよ。帝国の意図はわかりませんがこの勇者の意思に同調し行動に移したことは確実でしょう」

「貴様の言葉でも到底信じられん。勇者はこの世界で唯一の魔王に対抗できる戦力だと言われている者達だぞ?救世主たる勇者が守るべき民を殺すなどありえん」

「認めたくないのは分かりますがそれが事実です。それに彼が救世主?面白い冗談ですね。私はあの勇者が世界の驚異である魔王を倒せるとは到底思えません」


実際かなり弱かったからな。

他の奴等が強くても間違いなくあいつが足を引っ張りそうだ。


「ケンゴちゃん、言うのは構わないのだけどそれを証明することはできるの?」

「それは難しいかもしれません」

「あら、そこまで言っておいてそれはどういうことかしら?」

「証拠は彼次第だからですよ。彼が証言を断りアンデットメイカーを使わなければ証明できません」


日本出身なら問い詰めても黙秘権とか言い出しそうだしな。

勇者だから拷問もしなさそうだしどうしても証明は難しい。

あのアホ勇者が素直に話してくれたらいいのだが……


「そうね、でもその勇者のユニークスキルを調べれば証明できるんじゃないかしら?本当にアンデットメイカーだったらケンゴちゃんの言うことは信用できるわ」

「それも不可能ですよ。どうやって調べるつもりですか?ギルドに置いてある魔道具ではユニークスキルは表示されませんよ」

「確かにユニークスキルなどそんなもの聞いたことがないな」

「ならケンゴちゃんはどうして勇者のユニークスキルがアンデットメイカーだと分かったの?」

「私もユニークスキルを持っているからですよ」

「何?まさか貴様も勇者だったのか?」


何故そうなった。

あのアホ勇者に会うまでは勇者が羨ましいと思っていたが今はあのアホと同じ職業とか全力で遠慮したい。


「違いますよ。ユニークスキルはこの世界では認知されていないだけで普通に持っている人はいますよ。スキルは凡庸なのに凄い才能を持った人を見たことありませんか?」

「そう急に言われてもな」

「私は心辺りがあるわよ?ちょっと前まで王都にいた歌姫がそうじゃない?彼女の歌はスキルにない力強さがあったわ」


おっ、流石カズコちゃん。鋭いな。


「正解です。その他にも呪い子と呼ばれる子もそうですよ」


俺のその言葉にカズコちゃんが驚いたように目を見開きこちらを見てくる。


「呪い子はユニークスキルが認知されないだけで今まで冷遇されてきました。カズコさんはご存知ですよね?」

「まさかそんなことをが……いや確かにそれだったら辻褄が……だったら今まで私達は……」


あれ?返事がない。

それに何だか考え込んでしまったが教えたのはまずかっただろうか?


「そのユニークスキルは皆勇者みたいに強力なスキルなのか?」

「そうですね、皆種類は違いますが通常のスキルにない独特でとても強力なスキルばかりですよ」


『予知』とか『強奪』なんて使いようによってはかなり反則的なスキルだしな。


「貴様のユニークスキルはどのようなものなんだ?」

「内緒です」


俺のユニークスキルは人には説明し辛い。

そもそも教えるメリットがないから教えないんだがな。


「そうか、まぁいい。だがこれで尚更貴様が言った勇者とアンデットの関係が証明できなくなったな」


それはもうしょうがない。

信用してくれないならそれまでだ。


「そういえば貴様は戦場でアンデットの操作権を奪ったと言っていたな?あれはどういうことだ?」

「勇者がアンデットメイカーで作ったアンデット達を死霊使いというスキルで操っていたのでそれを奪っただけですよ」

「スキルを奪った?」

「ええ、うちの仲間にはスキルを奪えるユニークスキル持ちがいるんですよ。これはカズコさんもご存知ですよね」

「え、ええ、そうね。あの時の猫型の獣人の子ね」

「知らんな」


まぁ戦場ではゴブ朗達の印象が強かったからな。


「それでその肝心の勇者は保護していると言っていたが何処にいるんだ?」

「勇者は私達の拠点にいますよ。アンデットを移送したときに一緒に連れて行きました」

「貴様、何故捕まえた時にこちらに勇者を引き渡さなかった?」

「特に勇者について聞いていなかったので倒した私達が確保しただけですよ、確か倒した奴は成果として貰っても問題ないんですよね?」

「普通の兵士と勇者を一緒にするな。捕虜にした勇者を殺したとしたら国際問題になるぞ」


確かにアンデットを作り使役した事実がないと勇者は攻めてきた帝国に従軍していただけだ。

いやちょっと待て、参戦して攻めてきたんだから殺されてもおかしくないだろ。

証明できないがこいつのせいで沢山の人が死んでいるしな。

確かに捕虜にした勇者を理由もなく殺せば問題だろうが帝国の兵士は誰も勇者の行方を知らないだろうし最悪投石にでも当たったことにしとけばいいんじゃないか?

まぁ俺はこの世界の勇者事情は分からないし後で何か言われると面倒だから引き渡すだけだがな。


「では勇者はどうすればいいのですか?」

「此方で引き取ろう。今は難しいが陛下が戻り次第城に連れてこい」

「見返りは?」

「貴様……良かろう、貴様が望む物をやろう。それほど勇者を確保したことは大きい」

「わかりました。では王様が戻り次第勇者をこちらに連れて来ますね」

「ちょっと待って、さっきから気になっていたのだけどそもそもレルドちゃん達はどうやって移動しているのかしら?ケンゴちゃんの力と言っていたけれど……」

「転移門を使ったんですよ」

「転移門?あの伝説の?」

「ええ、実は……」


俺はそう言いながらカズコちゃんの疑問に答えた。

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