異世界をスキルブックと共に

気のまま

戦後

「そんなに焦ってどうかしたんですか?」

「その魔道具関係で魔力が無くなると廃人になると言ったな?最近王国では行方不明者が多数報告されている上に怪しい魔力の売買などが巷で流行していると聞いている。更に売買の後魔力を売った人間が無気力になることも報告に上がっている。これが全て帝国の仕業だとしたら早急に手を打たねば手遅れになる」


確かにそれは少し拙そうだな。行方不明は問題だし無気力な人間が増えればそれだけで色々と衰退していく。

恐らく黒の外套がやっているのだろうが中々手広くやっている。

俺も町の街道を歩けば遭遇率は100%だしな。

アルカライムにも街の内部に拠点が沢山あったし王都も含めギルドマスターや領主も知らない抜け道すら作っている。

人材に関してもジャックのような有能な人材もいるしそういえばお姫様を助け出した王都の拠点の一つが大きな商会の屋敷だったな。

思い返すだけでも結構思い当たることが多いしこれは本当にどうにかしないと拙そうだ。

そもそもこの魔纏着は黒の外套が作っていることは間違いないが本当に帝国が主導で行っているのだろうか?

もしかしたら黒の外套が作って帝国に流しているだけかもしれないし他の組織が主導している可能性もある。

後でジャックに聞いてみるか。


「それでこの後はどうするんですか?」

「戦後処理が終わり次第早急に王都に帰還する。問題は捕虜達だが遅れるようなら各将軍に任せて私だけでも先に帰還することになるだろう」

「その案件は総司令が一人帰還することでどうにかできるものなんですか?」

「いや、私だけではどうにもならん。だが今王都はこの決戦に負けたときのことを考慮して多くの人間が外に避難している上に王都を纏める人間が不在だ。陛下がいない今少しでも早く私が戻る必要がある」

「他に誰か任せられる人はいないんですか?」

「カインが残っていれば王都が揺らぐことなど無いのだが……」

「カイン?何方ですか?」

「王都の冒険者ギルドのマスターだ。普段は表に出てこないがいざというときは頼りになる男だ」


ああ、カズコちゃんの上司か。

カズコちゃんがあれだけしっかりしているから上司の方も期待出来そうだ。

アルカライムのマスターであるクリフォードさんも優秀だしな。

それにしても上に立つ人間は色々と大変そうだな。

俺がレルドのような立場になったら心労で死んでしまうんじゃないだろうか?

うちの拠点では一応俺が王様ということになっているけどゴブ朗とかジャックみたいに皆を引っ張っていける奴が上に立った方がいいと思う。

駄目でも絶対に役職にねじ込もう。

俺が纏める国とか崩壊する姿しか想像できない。

本当どうにかして欲しい。


「私も副ギルドマスターであるカズコさんなら面識がありますよ。あの人は王国に危機が迫っていようと最後の人が避難できるまで王都を離れそうにないので残っているんじゃないですか?」

「おお、カズコ殿を知っているのか!確かにカズコ殿なら確実に残っているか……急ぎ連絡を取ろう」


おい、カズコちゃんは殿を付けるのに俺は何で未だに貴様呼ばわりなんだ?

まぁあの風貌を思い出すとそう呼びたくなる気持ちも分からなくもないがな。

そういえばカズコちゃんは通信する魔道具持っていなかったか?

あれがあれば態々手紙を鳥で運ぶ必要が無くなるのだが……


「以前カズコさんが通信の魔道具を所持していたと記憶しているのですが総司令はその類いの魔道具は持っていないのですか?」

「伝心の水晶のことか?あれは魔力の場所を記憶して使用する物だ。移動するときは使えん」


それは残念。

魔力の場所を記憶するとか俺達が使った転移門の仕組みに少し似ているな。

しかしこうなると尚更携帯電話が恋しい。

まぁ俺達は念話があるから不便はないがこれ開発したらメチャクチャ売れるんじゃないか?

だが電波の仕組みが今ひとつ分からない。

どうにか魔力で表現できないだろうか……?


「では私はこれから戦後処理と急ぎ手紙を書かねばならない。細やかだがこの後少し勝利を祝い酒を出す。貴様も飲んでいけ」


酒!?それは有り難い。

この世界に来て酒はあまり飲む機会が無かったからな。

アドロフさんと飲んだぐらいか?


「総司令少し待ってください」

「なんだ?あまり長く話している余裕はないぞ?」

「いえ、タダではないですが王都まで送りましょうか?」

「何?王都まで送るだと?貴様がか?」


この人俺達がどうやって来たか覚えていないのだろうか?


「いえ、総司令もご存じだとは思いますが私達は転移門を持っています。それを王都まで繋ぎましょう」

「そんなことが可能なのか?」

「ええ、あまり長い時間繋いでおけないので送るのは少人数になりますが」


嘘だ。今のとこ制限があるとは聞いていない。


「それが本当なら助かるが……何を要求するつもりだ?」


そうだな、取り敢えずタダじゃないと言ってみたが欲しいものがない。

そもそも今回の戦争に参加したのもエレナが第三王女を欲しがったからだ。

第二王女達を助けたときの貸しもあるし今回も貸しにしておいて後でゴブ朗達に相談するか。


「特に今は思い浮かばないので貸しという形でお願いします。ですが総司令の許容範囲を超えるような無理難題をお願いするつもりはありませんよ」

「その言葉本当だろうな?貸しにするのは構わないが無理な要求は断るということで良いのか?」

「ええ、それで大丈夫です」

「そうか、ならその条件で決まりだ。どれくらいで準備できる?」

「今日はもう直に日も暮れます。私達もアンデットの移送があるので明日の早朝には王都まで繋げますよ」

「それは上々、こちらも急いで準備を整えよう。人数は10人程いけるか?」

「いえ1000人ぐらいいいですよ」

「貴様……なら何故さっきは少人数と言った?」


ごめん。とっさについた嘘だったからそんなに細かく決めていないんだよ。


「この軍にとって少人数ということですよ。私達もあの数のアンデットの移送を行うので魔石の関係から総司令を送る際に少し人数が減るかもしれないので一応頭に入れておいてください」

「わかった。ではまた準備が整い次第連絡する」

「わかりました」


レルドはそういうと各所に指示を出しながら天幕の方へと歩いて行った。


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