異世界をスキルブックと共に

気のまま

終戦

「そんなに呆けてどうかしたんですか?」

「ああ……まさか本当に帝国に勝利できるとは思っていなくてな。夢でも見ているようだ」

「大袈裟ですね。私はちゃんと始めに勝利に導くと約束しましたよ?」

「そうだな。本当に貴様には感謝せねばならん。そして貴様を連れてきた妹にもな」

「気にしなくていいですよ。私達は約束を守ってもらえればそれで十分ですから」

「そうはいかん、貴様は我が国に取って救国の英雄だ。王都に帰還次第国を上げて盛大にもてなそう」


そう俺に語りかけてくるレルドは本当に嬉しそうだ。

だがこちらも本当に勘弁してほしい。

俺が王子に、しかも国を上げてもてなされるだと?

その姿を想像するだけで胃が痛くなってくる。

今回もモーテン達に変わってもらえないだろうか?

俺は遠い目をしながら勝利に沸く王国軍を見渡した。


あれから戦況は一方的だった。

前方に王国軍、後方には突然現れた壁。更に中央には恐ろしい魔物の軍団が暴れており、頼みの高ランク冒険者や勇者の不在も重なり帝国軍は早々に戦線を維持できなくなっていた。

決め手は中央をゴブ朗達が分断しているせいで帝国の右左軍で情報が交換できず昨日無傷だったガスタール将軍率いる王国右軍に圧倒されていた左軍に救援を送れなかったことだろう。

あとは順次制圧されていき帝国は王国に敗北した。

帝国軍自体もアンデットを抜いてくるとは思っておらず油断していたことや後方の壁のせいで撤退できないことが焦りに繋がり本来の力を十分に発揮できなかったことも要因の一つだろう。

今回はなんとか帝国を退けることができたがこれから王国はどう動いていくのだろうか?

現在帝国兵の多くを王国の捕虜とすることができたが帝国が進軍してきた場所にあった街や集落は壊滅しているし王女も最後まで発見することができなかった。

帝国も6万の兵士を失ったが王国も帝国との国境付近の復興にはかなりの時間が掛かるだろう。

そもそも今回の帝国が戦争を仕掛けてきた理由はなんだ?

本当にあのアホ勇者の言うとおりに魔王の魔石奪取とアンデット軍作成の為だけに国を滅ぼそうとしたのか?

まだ俺が知る限り何も行動を起こしていない今代の魔王より質が悪い。

こんなんじゃ他の国も帝国に協力なんてしないだろうし一致団結して魔王討伐なんて夢の又夢だ。

だがまぁ今考えても何もわからないし今後もう少し外の情報を集めるようにするか。

取り敢えず今俺がやらないといけないことは王都での祝いの席を別の奴に押しつけることと目の前に何万もいるアンデット達の処理か……

周囲を見渡すと王国軍が勝利に酔いしれている後方にはまだ何万ものアンデット達が静かにこちらを眺めている。

うん、ただ動かずに立っているだけだが存在しているだけで精神的に良くないな。

その証拠に勝利を祝い合っている王国軍は一切アンデット達の方を見ていない。

そりゃあれだけ苦戦した相手がまだ何万も近くに生き残っているんだから目を背けたい気持ちも分からなくはない。

俺も一刻も早くあのアンデット達をどうにかしたいのだが既に使い道が決まっている。

一体残らず拠点に連れ帰り戦闘職じゃない住人のLV上げに使う予定だ。

この数があればかなりの人数を進化又は強化できるはずだ。

この提案にはゴブ朗達も満場一致で賛成してくれたしな。

それに魔石も取り出さないといけないが一気に全ての魔石を取り出すのは不可能だ。

有り難いことにアンデット達は一度死んでいるので食事などの消費する物はなにも必要ない。

拠点に連れ帰ったら地下で大人しくしていて貰おう。

デメリットはリンが拠点から動けなくなることだな。

まぁそこら辺はリンが外出する際地下を完全に閉ざしアンデット達を閉じ込めてなんとかしよう。

あんまり知能も高くないだろうし出てくることはないだろう。


「ところであのアンデットはどうするつもりなんだ?」


俺がちょうどアンデットについて考えているとやはりレルドも気になるのか俺にそう声を掛けてきた。


「約束通り全て私達が貰い受けますよ」

「確かに魔物に関して貴様に全てやると言ったが……まさか悪用するつもりではないだろうな?」


失礼な、悪用ではなく有効活用と言ってもらおう。


「大丈夫ですよ。悪用するつもりなら既に王国兵に襲いかかっていますよ」

「貴様は何を考えているかわからんからな。怪しいところだが今回は我が国を救ってもらった恩がある。今回は見逃すがもし王国にアンデットを嗾けてみろ、その時は私が貴様の首を刎ねてやろう」


だからそんなことしないって、アンデットを嗾けるぐらいならゴブ朗達を嗾けたほうがよっぽど効率が良い。


「そこら辺は信用してください。それとこの魔道具は知っていますか?」


俺はそう言いながら一つの魔道具をレルドへと差し出す。


「これは……なんだ?見たことがないな」

「それは魔纏着という魔道具で使用すると黒い魔力を纏い一定時間自己を強化出来る代物ですよ」

「なんだと?ではこれが帝国の黒い魔力を纏う集団の正体か。これを研究すれば我が軍も帝国に対抗できるかもしれんな」

「ですが問題は作り方にあります」

「問題だと?」

「ええ、その作り方は簡単です。魔力が強い一般人から魔力を抜き取りその魔道具に貯蓄するだけです。もちろん魔力が抜き取られた人間は廃人と化し廃棄されます」

「なんだと……帝国はそのようなことを……」

「その行為自体問題ですが更に問題なのが帝国はそれを他国で行っていることです」

「なんだと!まさかっ!」

「その通りです。エスネアート王国でも平然と行われていましたよ。私が知ったのもアルカライムでその作成を阻止したからです」

「なんということだ……いったい帝国はどこまで……おい!!急ぎ鳥を用意しろ!!この事は早急に陛下に知らせねばならない。勝利の報告と共に急ぎ知らせるぞ!!陛下には申し訳ないが早急に王都に帰還してもらう」


そういえば王様は獣王国に念の為に逃げ出していたんだったな。

戦争も二日で終わったしまだ獣王国に着いていないんじゃないか?

それにしても突然レルドが焦り出したが何かあるのだろうか?

俺は焦る顔で指示を飛ばすレルドを見ながらその理由を質問した。


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