異世界をスキルブックと共に

気のまま

勇者3

「それにしても来てくれて助かった、勇者を捕まえたのはいいがどうしようか困っていたんだよ」

「勇者ですか?」


俺のその言葉にエレナが驚いたような表情をしながら足を固められて動けない勇者を見ている。

何か問題でもあったのだろうか?


「その男は勇者で間違いないのですか?」

「ああ、間違いないぞ。ステータスを確認したし話した感じから俺の同郷で間違いない」

「そうですか……ケンゴ様少々お待ちください」


エレナはそう言うと少し離れたところに移動した。

直ぐに険しい顔をして俯きだしたので恐らくゴブ朗辺りに念話で報告しているのだろう。

マメな奴だ。

しかし折角勇者を捕獲したというのにエレナのテンションはやけに低めだな。

期待していた勇者像と違うからガッカリしてしまったのかな?

あと5人いるらしいし残りに期待しよう。

俺がエレナが念話を終えるまで暇を持て余しているとマリア達が声を掛けてきた。


「あの……本当にケンゴ様なんですか?」


ん?ああ、お前達は偽装を解いた姿を見るのは初めてなのか。

自分ではあまり変わらないと思っているがやはり全然違うのだろうか?


「そんなにいつもと違って見えるか?」

「いえお姿はそこまで変わらないのですがその……雰囲気が違うと言いますか、圧迫感が凄いと言えば良いのか……」

「怖いか?」

「いえ、怖くはないのですが……」


そうか?リンなんてマリアより一歩退いてこちらを見ているぞ。大丈夫か?


「これがケンゴ様の本当のお姿です。滅多に拝見できないのですから怖がらずにちゃんと見なさい。」


俺がマリア達を心配していると念話を終えたのかエレナが戻って来た。


「ケンゴ様は私達とは存在自体が異なります。この事実を知っているのは極少数ですから他言しないように気をつけなさい」

「「はい!!」」


そうエレナが言うと先程まで二人とも怯えた視線をしていたが少し落ち着いた気がする。

だがちょっと待て、二人に存在自体が異なるとか変な事を吹き込むな。

俺は神様がちょっとやり過ぎてしまっただけで中身は普通の一般人だぞ?


「それでケンゴ様何か困ったことがあると言っていましたが何かあったのですか?」

「ああそうだった。勇者を捕まえたのはいいんだがどうやって気絶させようかと思ってな。何か良い方法はないか?」

「気絶ですか?殺すのではなくて?」


いやいや、さっき勇者だって言っただろう?

いきなり殺すとは物騒だな。


「一応こいつは勇者だからな。ここで殺したら何を言われるか分からないから取り敢えず連れて帰る予定だ」

「ですがアンデットはその勇者が操っていると聞いています。今後の為に殺しておく方が良いと思いますが……」


なんだ?今回はえらく勇者を殺すことに固執しているが何かあるのか?


「確かにアンデットは面倒だが少し考えがあるから今回は殺さない方向で頼む」

「そうですか……わかりました。リン!頼めますか?」

「はい!任せてください!」


エレナがそう言うとリンが勇者に近づいていく。

周囲の兵士達はまだ俺から視線を外せないのか此方を見て怯えたままだ。


「お?やっと解放してくれるのか?それにしてもあんた綺麗な人を連れてるんだな。俺にも分けてくれよ」


流石にここまでいくと少し呆れてくるな。

エレナ達は俺が分けるものではないしお前にやるつもりもない。

取り敢えず一度後悔して態度を改めろ。

俺がそう見切りをつけるとリンが勇者の側頭部に蹴りを食らわした。

蹴り!?

頭を蹴られたことにより足下を固定されてる勇者は吹き飛ばずに後ろに勢いよく倒れた。

そのせいで後頭部も地面に打ち付けているが大丈夫だろうか?


「ケンゴ様心配しなくても大丈夫です。リンは手加減スキルを持っているので殺していませんよ」


そうなのか?

だったらいいんだがもうちょっと穏便に気絶させられなかったのだろうか?

そんなスキルのことなど聞いていないからいきなり物凄い勢いで蹴りを頭に食らわしたときはどうしようかと思ったぞ。


「ひっ!」

「た、助けて……」


周囲の兵士達は唯一の希望であった勇者が倒れたことで完全に心が折れたのか皆我先に逃げ出そうと此方に背を向け走り出した。


「マリア、リン一人も逃がさないように」

「はい!!」


二人はエレナのその言葉に飛び出すように逃げ出した兵士を追って行ったがまだ強化が切れてないし大丈夫だろうか?

一応壁作って補助をしておこう。

まぁあんなに怯えているし返り討ちに遭うことはないだろうが念の為だ。

それにしてもこいつこれからどうしようか。

俺は気絶してアホ面を晒している勇者を見るが王国をこいつが主導で蹂躙したことは間違いない。

当人はゲーム感覚でやったことかも知れないが決して許されることではないぞ。

取り敢えずやることやったらレルドに引き渡すか。

裁くのであれば被害を被った王国がするべきだ。

被害者の家族や知り合いも他の街にいるかもしれないし憎しみをぶつける対象も必要だろう。

そうこうしているとマリアとリンが戻って来た。

お?以外と早かったな。


「はい、ケンゴ様が壁を作ってくれましたので無駄に追わずにすみました」

「ケンゴ様!それでこの男はこの後どうしますか?」


ああ、そうだった。


「そうだな、リンは蹴ったから大体わかると思うがそいつあんまりLVが高くないんだよ。だからちょっとお願いがあるんだがいくつかスキルを奪ってもらえないか?」

「え?いいんですか?」

「ああ、構わない。特に死霊使いというのを奪ってくれ」

「わかりました!」


リンはそう言うと再び気絶している勇者に触れた。


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