異世界をスキルブックと共に

気のまま

勇者(仮)

やはり平原は上から見ると集団が軍を離れて行くのがよく見えるな。

全員馬に乗っており結構な速度で移動している。

しかし全体を確認するのに毎回スカイダイビングを行っていたら俺の身がもたない。

好きなときに上から俯瞰して見える魔道具とか作れないだろうか?

それにしてもなんでこの集団は軍から離れて行くんだ?

恐らくゴブ朗達が怖かったんだと思うが勝手に持ち場を離れたら逃げ延びても何か罰則とか受けるんじゃないのか?

まぁ死ぬよりは良いかもしれないが少し逃げるのが早すぎる。

取り敢えず本人に聞いてみるのが手っ取り早いか。

俺はその集団と並走できるよう集団の近くに転移した。


「あの……本当に逃げ出しても大丈夫なのでしょうか?」

「ああ?いいんだよ。俺はこんな所で死ぬわけにはいかないからな」

「そうですね……」

「それにしても何なんだあの化物達は。あんなのがいるなんて聞いていないぞ?」

「それは私にもわかりません。予定ではアンデットの軍だけでエスネアート王国を滅ぼすことが出来るはずだったんですが……」

「ちっ!その王国さんは本当に魔王の手下になっちまったんじゃないのか?あんなの人間がどうにかできるレベルじゃないだろ」

「確かにあの声に強さどれをとっても異常でした。本当にエスネアート王国は魔王と手を組んでしまったのでしょうか?」

「俺に聞かれてもわからねぇよ。そう言えば今回S級冒険者が来てたらしいがそいつはどうしたんだ?」

「エッジ様のことでしょうか?初日に左軍に配置したまでは報告があるがその後消息不明です」

「くそっ、役に立たないな。俺のアンデットを囮にするからさっさと帝国まで戻るぞ。あの化物を相手にするにはまだLVが足りない」


ふむふむ、LVにアンデットか……これは当たりだな。

俺は早速その集団の進行方向に壁を出現させた。

走ってる馬の足を土魔法で急に束縛したら落馬して万が一にも勇者が死んだら大変だからな。


「な、なんだこの壁は!」

「おい!この壁王国の魔法使いが出してる奴に似てないか?」

「くそっ!まずいぞ!転回して別の道に抜けるぞ!」


おいおい、ピンポイントで壁が出てきた時点で捕捉されていることぐらい分からないのだろうか?

逃げるんじゃなくて警戒した方がいいと思うぞ。

それにしてもやはりスキルや魔法は便利だな。

魔法は俺の考えた通りに発動してくれるしまさか俺が馬と並走できるほど早く走れる日が来るとは思ってもみなかった。

最近は必要に応じてしかスキルは取得していないがいずれ落ち着いたらスキルブックの中身を少しづつ取得していきたいな。

俺はスキルの便利さを改めて実感しながら転回した集団を囲い込むように新たに壁を出現させた。


「くっ!完全に囲まれたか!」

「全員警戒!魔纏着を展開しろ!!」


ほう、その魔道具は魔纏着っていうのか。

俺の目の前で勇者を護衛している兵士達が黒い魔力を纏いだす。

お前らそれがどうやって作られているか知っているのか?

俺は兵士達が動き出す前に地面をぬかるみへと変え捕獲しようと試みるが恐らく勇者であろう人間以外乗っていた馬を足場に抜け出してしまった。

そうか、魔纏着で強化していることもあるだろうが他に足場があれば抜け出せるのか。

次回から気をつけよう。

だがまぁ勇者(仮)を捕獲できたから良しとしようか。


「くそっ!なんだこれ!おい!お前ら俺を助けろ!!」


周囲の兵士達は未だにぬかるみに嵌まり続けている勇者を助けようと右往左往しているがまさか平原にぬかるみがあるなど夢にも思ってもいなかったのだろう、ロープ等の長物もないしぬかるみの深さも分からないから手の出しようがない。

もうさっさと捕獲してしまうか。


「ぐ、ああああ。痛い、痛い、痛い。何なんだよこれ。何が起こってるんだよ!!」


俺が勇者(仮)が嵌まったぬかるみを硬化したらやはり硬化した地面が固すぎたのか悲鳴をあげ始めた。

すまないな、もう少し我慢していてくれ。

周囲の兵士達も勇者(仮)を救おうと硬化した地面を剣で掘ろうとしているがエッジ達が強化してもどうにもならなかった固さだ、折角の剣が無駄になるぞ?


「おい!早く助けろよ!!」

「申し訳ありません、ですが地面が固すぎて掘ることができません」

「くそっ!本当に役立たないな」

「この壁や地面を見るに敵の魔法使いが近くにいるはずなのでその魔法使いを倒せばこの拘束は解けるかと思います」

「だったらその魔法使いをさっさと倒せよ!!お前ら俺の足がどうなってもいいのか?」


それにしてもさっきからこの勇者(仮)の言動が少し気になるな。

鎧と兜で風貌が確認できないがエッジの言うとおり成人している感じがしない。

学生だろうか?

取り敢えずこのままだと状況が悪化しそうだし姿を見せるか。

俺はそう決めると隠密を解き勇者(仮)に鑑定を掛けながら勇者(仮)一行に声を掛けた。


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