異世界をスキルブックと共に

気のまま

決戦開始

「それでいつ頃戦闘は開始されるのですか?」


漸くゴブ朗達のテンションが落ち着いてきたので、俺達の配置される場所へと向かうように指示を出しながらガスタール将軍に質問した。
昼頃始まると言うことなのだが何か明確に開始の合図とかはあるのだろうか?
既に前方には大量の魔物で埋め尽くされた帝国軍が布陣しているのが見える。
右翼だけでも何万いるのだろうか?
これを全部処理するのは骨が折れるな。
どうゴブ朗達を補助しようか・・・


「これは一応国同士の戦争だ、最初にお互い降伏勧告がある。その後勧告に従わない意思を伝えた後に戦争が開始される。具体的に言えば勧告は間違いなく拒否されるのでこちらと敵の勧告者が陣に戻った時点で戦争の始まりだ。」


ほうほう、そんな決まりがあるのか。


「しかし帝国はこの決戦より前に数多くの集落や街を落としていると思うのですがそれは問題ないのですか?」
「帝国の軍が行っているのは侵略行為に等しいが帝国は一度こちらに攻め入る前にちゃんと降伏勧告を入れている。それに軍が街や集落を襲撃する際は降伏勧告を行っているはずだが現状は生存者が1人も確認出来ていないのでそれも不明だ」


なんだそれは、目撃者さえ消してしまえばやりたい放題じゃないか。
俺達なら転移で攻め入って根こそぎ奪った後転移で帰って行くから国は何に攻められているのかすら分からないぞ。
まぁそんなことはしないが。


「だが今回の帝国はやり過ぎだ。王女誘拐に我が王国民の惨殺そして供養するどころかその死体を利用して魔物まで作り出している。この事が各国に知れ渡れば非難は必至だ。恐らく帝国は我が国を滅ぼしその行為自体を消し去るつもりだろうがそうはさせない。我々が足止めしている間に国王も含め多くの国民が大森林を抜け獣王国へと逃亡する手筈だ。そしていつか必ず我々の無念を国王様が晴らしてくれるであろう」


王女達は逃亡するのか?
そんな話は聞いていないが・・・俺達が移動している間に事情が変わったのだろうか?
それにしてもやはりこの軍隊の主目的は足止めか。
昨日から敵が集まってくるにつれ士気が上がるどころか下がってきている気がして不思議に思っていたのだがこいつらは勝つ気がないのか。
中にはこれから御通夜にでも行くのかと思うほど意気消沈している者もいる。
そりゃ死地に向かうのであればテンションが下がるのは分かるがこの状況を見る限り嫌々従軍している者も多いんじゃないか?


「ガスタール将軍は勝つ気はないのですか?」
「総司令も言っていたように現状我々の戦力では勝つのは不可能だ。我々は王国のために少しでも多くの時間を稼がねばならん」
「ですが見る限り士気も低いようですしこのままだと無駄に死にに行くだけじゃないんですか?」
「確かに死地に向かうため士気は低いように見える。しかし皆家族を守る為にこの決戦に命を掛けて戦いに来ている。逃げ出す者がいないのがその証拠だ。あまり我が兵士達を愚弄するといくら貴君であろうと切り伏せるぞ?」
「いえいえ、そう言うわけではないのですが無駄に死にに行くぐらいでしたら出来れば皆壁の後ろに下がって欲しいのですが・・・」
「確かに敵は急に出来た壁に困惑しているだろうが壁が壊されたらどうするつもりだ?壁を守る事が一番時間を稼げるのではないか?」


うーん、あの壁はちょっとやそっとじゃ壊れないと思うが・・・どう言っても上手くいかない気がする。


「そうですね。それでしたら一応私達は第3王女に勝利を約束していますので敵を殲滅するように動きます。ガスタール将軍は壁を守り出来れば私達の邪魔しないで頂きたいのですが・・・」


俺がそういうとガスタール将軍は腰の帯剣を抜きこちらに向けてきた。


「愚弄すれば切ると言ったぞ?」
「いえいえ、勘違いしないでください。私達は本当に勝つつもりでいるんです。予定通り私達が第1陣で全滅したらガスタール将軍は作戦通り指揮を執ってください」
「たった100強の人数で本当に万の軍勢を相手にするつもりなのか?」
「ええ、そのつもりです」
「そうか・・・もし本当に貴君らの力で帝国を退けられたら私が可能な限り貴君らの願いを叶えてやろう。魔物の素材が欲しいのだろう?」


おっ!報酬は第3王女から貰えるから別に良いのだが、貰えるのなら貰っておこう。
俺達がそう打ち合わせをしていると中央軍から馬に乗った集団が敵の方へと向かっていった。
ああ、あれが例の降伏勧告を行う集団か。
もうすぐ決戦が始まるな。


「ええ、特に魔物の魔石が欲しいので口利きよろしくお願いします。ではもうすぐ決戦が始まるので早速一つ私達の力をお見せしますね」
「何をする気だ?」
「まぁ見ててください」


俺はそういうと念話で合図を送った。
すると戦場に一つの歌声が響き渡った。
初めは皆何事かとざわついていたが次第に皆歌に耳を傾け出している。
ああ、これがサラの歌声か。
初めて聞くがなんて綺麗な歌声なんだろうか・・・
それにさすがユニークスキルだ、聞いているだけで少しづつ力が身体の奥底から力が沸いてくる気がする。
サラの声量も凄いが本当に拡声器を作っていて良かった。
そうこうしているとサラが歌い終わった。
1曲しか聴いていないが名残惜しささえ感じてしまう。
だがしょうがない、病み上がりだからまだあまり長く歌わせられないからな。


「皆さん!!私の大好きな、私達の大好きな王国を守ってください!!お願いします!!帝国に負けないで!!」


急に歌を歌い終わったサラが拡声器を付けたまま兵士達に向け喋り出したのだがあれ?そんなセリフ打ち合わせにあったっけ?
俺が首を傾げていると突然・・・


「「「うおおおおおおおおおおおおお!!!」」」


大地を揺るがすほどの雄叫びが戦場の中に響き渡った。


「まさか歌姫が出てくるとは・・・」


どうだ?驚いただろう?
これで下がっていた士気もある程度は回復しただろう。
さて、俺も一丁やるか。
俺は歌で暖まった心と身体を解しながら戦場へと向かった。



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