異世界をスキルブックと共に

気のまま

決戦準備10

今俺の目の前には一定の距離を取って手合わせの為に相対している2人がいる。
周囲には壁が問題ないと分かり落ち着いたのか多くの兵士達が見物に来ているのが見える。


「おい!聞いたか?あのガスタール将軍が本気で手合わせをするらしいぞ?」
「ああ、将軍に手合わせをしてもらえるなんて羨ましいが真剣での手合わせをだろ?俺なら御免だね。まだ死にたくない」
「だがあの娘は誰なんだ?犬型の獣人だからさっきの魔物騒動の奴らなんだろうがまだかなり若いじゃないか。20いってないだろあれ」
「そもそも何で手合わせをするんだ?魔物に関わる者だから見せしめか?綺麗な子なのに可哀想に」
「でも王家のメダルを持ってるって話じゃねーか。だったら見せしめじゃねーだろ」


周囲の兵士達が各々話しているが色々と話が錯綜して情報が統一されていないようだ。
それにしても真剣で手合わせをするのか?
一歩間違うと死ぬ可能性も有る、大丈夫か?
俺がそんな不安を抱きながらマリアを見ていると総司令の男が話始めた。


「これから我が国のガスタール将軍と我が妹が雇った援軍の一員であるそこの獣人の娘が手合わせを行う!制限はなし、どちらかが降伏をするまで続けるものとする。またお互い相手を殺す事は許さん!正々堂々と我が軍に実力を示せ!双方準備はいいか?」
「いつでも」
「ええ、始めてください」
「それでは双方構えろ!」


その声にガスタール将軍が腰の剣を抜き、マリアが弓に矢を番えた。


「始め!」


その総司令の男の合図と共に2人が同時に動き・・・出さない?
あれ?確かに合図は出たよな?


「どうした?その番えた矢を放たないのか?」
「貴方こそ全力でとお願いしたにも関わらず何故向かってこないのですか?もう始まっていますよ?」
「そちらの実力を見る手合わせだ、私が動き一合も打ち合わないまま終わっては意味がないだろう」
「そうですか、ではお言葉に甘えて先に攻撃させて頂きますね。何も出来なかった事を後悔してもしりませんよ?」
「強気だな、さぁお前の力を見せてみろ」


ガスタール将軍がそういうとマリアの周囲に異変が起こりだした。
水だ。
マリアの周囲を徐々に目に見えるほどの水量の水が円を描くように回り始めている。
それにしても凄い量だ。
時間が経つにつれどんどん増えているぞ。
空気中の水分を集めて水に変えたとしても限界はある。
それに周囲が乾燥している感じはない。むしろ湿気が多い気がする。
いったいどういう仕組みだろうか?
後で聞いてみよう。


「素晴らしいな!貴女も魔法を使えるのか!だが水を出してどうする?ウォーターボール程度なら私を倒すことはできぬぞ?」
「お気遣い有り難うございます。ですが大丈夫です。もう終わりました。」
「なんだと?どういう・・・」 


マリアがそう言葉放つとガスタール将軍の言葉を遮るようにマリアの周囲にある水が空中へと物凄い勢いで集まりだした。
既に空中に3メートル程の球状の水がある。
マリアはこの水をどう使うのだろうか?
俺がそんな疑問と共に水球を見つめていると突然水球が弾けた。
テント前の広場周辺にゲリラ豪雨のような雨が音をたてて降り注ぐ。
周囲の兵士達は突然の大雨に大慌てだ。
そりゃあそうだ、さっきまで晴れていたし、今も雨は降っているが上を向けば太陽が明るく照している。
俺も慌てて癖で傘を探すがここは異世界だ、あるわけない。
俺は今度傘を作る事を心に決めながら今は諦めてマリアが作った雨に打たれることにした。
それにしてもやはり雨に打たれると寒いな。
ん?寒い?
いや先程までなんともなかったのに寒いのはおかしくないか?
それによく見ると吐く息も白くなってきた。
ああ、これがマリアの作戦か。
俺はマリアの作戦を理解しガスタール将軍の方を見る。
やはり雨に濡れて着ている服や鎧も重くなり、更にこの寒さで体温を奪い見るからに動きが遅くなっている。
そういえば以前氷を飛ばしてた気がする。
マリアの奴うまいこと考えたな。
俺がマリア作戦に満足しながら次の一手はどう動くのか期待しながら2人を見ていたらガスタール将軍の目の前に突然地面から1本の氷の棘が突き出した。
将軍は慌てて棘を回避しようとするが身体が思うとおりに動かないのか棘が触れるギリギリの所で漸く後ろに跳んで回避することに成功した。
おいおいマリア、あれもし回避がもうちょい遅れていたら将軍の腹に穴が空いている勢いだぞ。
殺したら駄目なのを忘れたのだろうか?
俺がそんな事を考えていると将軍に動きがあった。
将軍が後ろに跳んで回避したのは良いのだが着地地点にも氷の棘が突き出し、それを回避しようとした先に突き出した氷の棘を回避できず棘は将軍の足に突き刺さった。
将軍が氷の棘が突き刺さった足を庇うように体勢を崩すと更にそこに周囲の地面から動きを阻害するように複数の氷の棘が突き出す。
将軍が足を庇いながら回避しようとした瞬間マリアが空中に展開した氷の矢の1本が将軍の肩に食い込んだ。
将軍が痛みを堪えながら視線を上げマリアを見るとそこには周囲に複数の氷の矢が展開しており、更にはマリアの頭上に一本の特大の氷の槍が今にも将軍に振り下ろされようとしていた。
マリアも弓を構えているが頭上の槍のインパクトが強すぎて全然視界に入らない。


「どうしますか?降参するのであれば解除しますよ?」
「ああ、参った。私の負けだ」


将軍が負けを認めた瞬間先程の寒さが嘘のように暖かさが戻って来た。
将軍は肩と足を負傷したようだが大丈夫だろうか?
それにしてもマリアは恐ろしいな。
魔法も凄いがなによりやはり予知が怖い。
回避した先の先まで既に手を打っているとかどう回避しろと言うんだ?
ガスタール将軍は体勢を崩しただけだが俺なら確実に転ける。
そして転けた先には・・・
ああ、考えるだけで恐ろしい。


「さすがは妹の雇った援軍の一員と言うことか。ガスタール将軍を無傷で倒すなど思いも寄らなかったぞ。そして貴様はあの娘より遙かに強いと言う話だ。ははっこれは期待出来そうだ。我が妹に感謝為ねばならないな」


いや待て待て。
俺はマリアよりは弱いと思うぞ?俺が得意なのは逃げる事ぐらいだ。


「まだ貴様の名前を聞いていなかったな。名は何という?」
「私はケンゴと言います。取り敢えずうちのがやらかした将軍の怪我を治してもいいですか?」
「貴様は回復もできるのか?それは助かる。将軍は我が軍の要の1人だからな。私はレルドだ。レルド・ガスファリウス・ヴィ=エスネアートだ。このナミラ平原での総指揮を任されている。覚えておけ」


ああ、大丈夫だ。レルドの部分は忘れない。
そもそもなんで王族はこんなに名前が長いのだろうか?不便じゃないか?
俺は今まで会った王族の名前を思い出しながらガスタール将軍を治す為にテント前の広場へと移動した。



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