異世界をスキルブックと共に

気のまま

決戦準備2

生産区に来てみると工房がいくつか出来上がっており、その中でも鍛冶工房の前に何かを囲んで人だかりが出来ていた。
何かあったのかな?
近づいて行くと徐々にその何かがはっきりと見えてきた。
熊五郎だ。
だがいつもの熊五郎ではない。
何だろう全身の至る所に装具を付けており、なんだかいつもの2割増しぐらい大きく見える。
どうやら周囲を囲んでいる人達は熊五郎に装具を取り付けているみたいだ。
よく見るとドワーフが多いようだが熊五郎の頭とか背中の方とか手が届くのだろうか?
俺がそんな疑問を持っているとこちらに気付いたのか熊五郎を囲んでいる集団の中からゴランがこちらに歩いてやって来た。


「ケンゴ様、おはよう。ここに来てくれたということはジャック殿に頼んだ言づてを聞いて頂けたのだろうか?」


ああ、そうだが熊五郎を囲んでお前らはいったい何をしているんだ?


「今は熊五郎殿の武具の調整をしている所だ。今度この拠点のを巻き込んだ戦争があると聞いてな。儂らドワーフ一同微力ながらハンクの手伝いをしておるところだ。」


ハンク?誰だそれ。


「ん?ハンクはご主人様が雇ってきた男ではないのか?今あそこで熊五郎殿の爪を取り付けているこの鍛冶工房の主だ。」


ああ、ハンクは鍛冶スキルの男の名前か。
最近雇った皆も拠点にも馴染んできているしこれは一度奴隷達の名前を把握しないといけないな。


「それはそうと少しケンゴ様に頼みたいことがあるのだが良いだろうか?」


なんだろう?俺に出来ることであればなんでも手伝うぞ。


「今熊五郎殿に装着している武具の表面にケンゴ様の魔法でコーティング出来ないだろうか?」


コーティング?どういうことだ?


「いや儂らも長年鍛冶に携わってきたがケンゴ様が作ったこのショートソードに勝る武器は見たことがない。この硬度、切れ味、さらにグリップや重量までどれをとっても素晴らしい。ただ難点なのが見た目が只の土の剣ということぐらいか・・・だがケンゴ様はこれをものの数分で作れるという。だったらこれを応用して儂らの武具を補強出来ないかと思ってな。」


ほうほう、それは面白そうだな。


「今熊五郎殿に付けている武具は極力重量を抑えて動きやすい物にしておる。ケンゴ様の作る物は硬するのでこの武具の関節部以外の表面を薄くコーティングして欲しい」


わかった。
取り敢えず出来るかどうか分からないから足の部分から始めていいか?


「ああ、よろしく頼む」


俺はその返事を聞くと直ぐに熊五郎の足を覆っている装具に土魔法で薄くコーティングを始めた。
土魔法で浮き上がらせた土がまるで意思を持った生き物のように少しづつ熊五郎の足に集まり出す。
今回は初めてのコーティングということでいつも通り土と少しの砂鉄を混ぜ極力硬くなるように念入りに固めてみた。
結果は表面を土でコーティングしたせいか装具の見た目が茶黒くなってしまった。
俺の魔法が終了したのを見計らって突然ドワーフたちがコーティングしたばかりの装具へ攻撃をし始めた。
全力フルスイングだ。
大丈夫なのだろうか?
何度か装具に武器を叩きつけて満足したのか熊五郎を囲んでいたドワーフたちは方々へ散っていった。


「さすがケンゴ様だ。見てみろこの鉄の剣を。何度か叩きつけただけで既にかなり刃こぼれしている。しかも熊五郎殿に付けた武具にはかすり傷一つ着いていない。ハハッ、本当に凄いな!!こんな凄い防具がこんな簡単に出来るならこの拠点での儂らの仕事がなくなるな!!」


おいおい、仕事がなくなるというのにえらく機嫌が良いな。
それに俺が毎回コーティング出来るとは限らないし建築関係や生活関係でも金属は使うだろう。
恐らくお前達の仕事はなくならないぞ?


「ああ、分かっている。だが武具関係でケンゴ様の武具に劣る物を作り続けるというのはやはり鍛冶職としてはなにか寂しいものがあってな。儂らは昔からこの手で大地から鉄を取り武具を作り続けてきたがやはり魔法には敵わんか・・・」


そんなことはないんじゃないか?
劣ると思うなら超える努力をすればいいし、魔法の方が優れているのであれば取り入れればいい。
それじゃあ駄目なのか?


「魔法を取り入れるだと?確かに儂らは魔法が使えんからその発想はなかったな。そうか、儂らが使えんなら誰か使える奴に協力を求めれば良いのか。そう言えばここには魔道具を作れる男もおったな。ハハハッなんじゃ面白くなりそうではないか」


おいおいアルバートは今転移門の制作に忙しいから協力を頼むのは後にしてやってくれ。
魔法に関してはこの拠点なら魔物勢も使える奴が増えているから使えそうな奴は引っ張ってきて良いぞ。


「おお、助かる。いずれ必ずケンゴ様の剣を超える武具を作ってみせるから期待していてくれ。それと他にも相談があるんじゃがいいか?」


相談?良いぞ、何でも言ってくれ。


「武具が完成した後熊五郎殿を借りたいのだが良いだろうか?」


ん?熊五郎を?何かするのか?


「ああ、儂らが住んでいた集落に酒造りの資材を取りに行きたいのだが道中が不安でな。熊五郎殿を護衛として借りたいのだ」


酒!?お前ら酒が造れるのか?


「ああ、儂らとドワーフと言えば皆鍛冶を生業とし酒を飲むのが生きがいだ。この拠点は素晴らしいがいかんせん酒がない。ないなら儂らで作ろうかと思ってな。良いだろうか?」


もちろん!是非造ってくれ!
まさかここに来て酒が手に入るかも知れないとは・・・
ハニービー達から蜂蜜が取れたら蜂蜜酒とかも造れるのだろうか?
考えるだけでテンションが上がる。


「それともう一つヒルダが魔力ポーションを造るのを手伝って欲しいと言っていたぞ。うさ吉殿からの依頼らしいが決戦までに数が足りないようだ」


ヒルダ?魔力ポーションからいって恐らく錬金スキルの女性だろう。
そうか今は魔力ポーションを造っているのか、後で足を運ぶか。
了解した。
んじゃこれで要件は済んだから俺は次に行くから後の事は頼むな?


「何を言っているんだ?まだ熊五郎殿のコーティングも足しか終わっていないし他の奴らの武具もまだまだ沢山有るぞ?」


なんだと・・・
よく見ると先程散っていったドワーフ達が各々手に武具を持ちこちらに向かってきている。
俺はいったい幾つコーティングを施さなくてはならないんだ?
俺は良い笑顔でこちらに向かってくるドワーフ達を見つめながら今晩ポチに包まれて眠ることを諦めた。

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