異世界をスキルブックと共に

気のまま

ナミラ平原までの道中

俺は今マリアと共にポチに乗って王都の北の平原を駆けている。
ポチに乗って気付いたのだが、こいつもの凄く毛並みが良い。
もう触れているだけでサラッサラだし、抱きついてみたらポチのほのかな暖かさを感じながらフワッフワの毛に包まれてしまう。
後ろにいるマリアは以前から知っていたのか平然と乗りながらポチの毛で遊んでいる。
うん、気持ちはわかる。
落ちないために捕まっている毛すらサラッサラなのだ、流れる景色を楽しみながらついつい手先で遊んでしまう。
しかし何故ポチの毛がここまで気持ちいい物だと誰も教えてくれなかったのだろうか?
まさか拠点のやつらでこっそり堪能していたのか?
許せん。
俺は今晩はポチと一緒に寝ることを心に決めながら先程の魔道具制作スキルの男のやりとりを思い出す。


「名前ですか?あれ?言っていませんでしたっけ?」


ああ、確実に聞いていない。
拠点に到着するなり魔道具に夢中になり駆けだして行ったのはお前だ。
どうせそのまま忘れていたんだろう。
まぁお前以外にもオルドに任せている他の奴隷達の名前も確認していない俺も悪いんだがな。


「名前はアルバートと言います。奴隷になる前は王都の魔道具研究所に勤めていたのですが研究に夢中になりすぎてちょっとやらかしてしまいまして、奴隷に落とされてしまいました。ハハハ・・・」


やりすぎてっていったい何をやらかしたら奴隷まで落ちるのだろうか?
しかも労働期間が割と長くなかったか?
まぁ悪い奴じゃないから構わないんだがな。


「でも今では逆に奴隷になれて良かったと思っています。そのおかげでご主人様に会えましたし、こんな素晴らしい魔道具が数多く存在する拠点で働ける上にまさか私が伝説の空間移動の魔道具制作に携われるなんて、まるで夢のようです」


まさか気軽に頼んだ制作依頼が夢とまで言われるとは・・・
まぁ喜んでくれているようだし問題はないのだろう。
いずれランカ達の商売のために収納袋を改造しようと思っていたのだがそれもこいつに頼んだ方がいいのだろうか?
ちょっと相談してみよう。
俺が収納袋の改造の話をし始めた途端・・・


「収納袋の改造ですか?なんですかそれ!面白そうですね!!詳しく教えてください!!」


アルバートが俺に詰め寄るように質問してきた。
どうしよう、想像していたよりもかなり喰い気味で来たな。
実はランカ達、お前は会ったことはないだろうがアルカライムの街に俺が雇った奴隷達が今商売の勉強をしていてな、その連中に今後この拠点で生産した物を売って貰おうかと考えているのだが、毎回こちらの生産した荷物を届けに行くには距離があるし俺がいないと行って帰るだけでも1週間近く掛かってしまう。
そこで、この収納袋どうにか改造してこちらの荷物を向こうに届けられないかな?っと思ってな。
それと一応収納袋も俺が認識しているから盗まれても後を追えるだろうが出来れば防犯関係もなんとかしたい。
できるか?


「いいですね!いいですね!!実に面白いです!!これも先程の空間移動に関しての記述が応用できると思います。要は空間移動は場所を固定させてその間を行き来する物ですがご主人様はそれを収納袋同士で、しかも中身を行き来出来るようにしたいわけですよね?素晴らしい発想です!!なんで誰も今まで気付かなかったのでしょうか!?これが発明できればこの世界の物資の流れが変わりますよ!!」


わかった、わかったからそんなに鼻息を荒くして近づいてくるな。
それと防犯関係はどうだ?


「防犯関係でしたら以前から似たような魔道具が数多く販売されていますがそれでは駄目なのでしょうか?」


うーむ、駄目と言うわけではないのだがこの収納袋はあまり世に出すと良くないのだろう?
だとしたら既に一般に販売されて何かしらの対策がされているかもしれない魔道具よりも一から作った魔道具の方が安心できないか?


「確かに対策がされていることは否定できません。販売されている防犯の魔道具が無効化されてしまった事例は研究所に勤めていた時に何度か拝見してことがあります。わかりました、それも含めて作成を進めていきたいと思います。」


良かった。
だが空間移動の門と収納袋、それに防犯関係といろいろお願いしたが大丈夫か?


「ええ、問題ありませんよ。むしろこのアルバート一世一代の大仕事に胸が高鳴っているところです!!ご主人様が出発されたらすぐにでも設計に取りかかります!!」


そうかそうか、張り切ってくれているなら何よりだ。
それで作成に必要な物は何かあるか?


「はい、出来るだけ純度や等級が高い魔石を幾つかと魔力を通しやすい魔物の素材が欲しいです。あと試験用に幾つか収納袋を貸してください。」


収納袋に関しては人数が多くなってきたから予備で多めに作って倉庫に置いていたのを持って行ってくれてかまわない。
だが問題は魔石と素材だ。
最近狩りに関してはゴブ朗達に任せっきりだから素材とかに関しては全然わからない。
魔石はここ最近たまに7等級の魔石も取ってくるようになったからこれじゃあ駄目か?


「どうでしょうか・・・前人未踏の魔道具開発なのでどれくらいの魔石が必要かは私にも分からないんです。ですので試験用にも出来るだけ純度や等級が高い魔石が幾つか欲しいんです。」


そうか・・・ならゴブ朗達に相談するしかないか。
俺はその場で直ぐにゴブ朗とジャックに念話を送った。


「ゲギャ?」
「ご主人様どうかしましたか?」


ああ、実はいろいろと魔道具を作ろうと思ってな、それで純度や等級が高い魔石や魔力を通しやすい魔物の素材が必要になったんだがお前ら何か当てはないか?


「私はこの拠点に来たばかりですのでそこら辺は分かりませんね」
「ギャゲギャグ?ゲゲギャググギャ」
「ああ、ゴブ朗さんは(主様は何を言っているんだ?森の中央に行けばそんなのいくらでも有るだろうに)と言っていますよ。」


それは俺も少し考えたが森の中央部は俺達にとってまだ未踏の地だ。
ゴブ朗達の探索からわかるように森の中心に近づけばより上質な魔石は手に入るがその分リスクが跳ね上がる。
ゴブ朗達にそんなリスクを犯させる訳にはいかない。


「ギャギャグ、ギャギャゲググギャ。ギャギャググギャゲ」
「(気にするな、それが俺達の仕事だ。主様は俺達を信用して待っていろ)と言っています。」


あらいやだ、もの凄くイケメンなセリフが飛び出してきた。
そうだな、これから拠点が広くなるにつれ仕事を任せることが増えてくるだろうし、俺もゴブ朗達を信用して仕事を任せることを覚えないとな。
ゴブ朗、頼んだぞ?


「グギャゲ」
「これは・・・」


ああ、今のは訳さなくて良い。
それぐらいは分かるからな。
俺はこの後ナミラ平原に向かうから集めた素材等はアルバートに渡してくれ。
わかるよな?アルバート。


「ええ、魔道具制作スキルを所持している男ですよね?」


やはり名前を知らなかったのは俺だけか。
これからはなるべく皆の名前を覚えていかないとな。
ということだがアルバート、今の念話ちゃんと聞いていたか?


「はい、ゴブ朗さん達が素材を持ち込み次第作成に取りかかろうかと思います。それまでは幾つか設計図を書いて構造を練りたいと思います。」


ああ、頼んだぞ。
俺はポチたちとナミラ平原に出発するからまた何かあったら連絡をくれ。
俺はアルバートにそう伝えながらポチ達が待っているであろう広場の方に足を向けた。



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