異世界をスキルブックと共に

気のまま

出発前

「ご主人様、先程の交渉ですが第3王女の身柄を独断で交換可能とお伝え致しましたがよろしかったでしょうか?」


拠点に戻るなりいきなりジャックがそう問いかけてきた。
ああ、そのことか、
特に第3王女に拘りはないから全然構わない。
拠点の奴らで話し合って第3王女の身柄より拠点にとって価値のある物が出てきたならそちらに変更してくれ。
俺はそうジャックに答えながら全員無事に拠点に戻ってきた事を確認するため周囲を見渡した。
うん、大丈夫そうだな、
ちゃんと屋敷の周囲を警戒していた奴らも戻ってきている。
しかしいちいち拠点から王国に出入りするのに俺を経由する必要があるのは面倒だな。
どうにか出来ないだろうか?
後で雇った魔道具制作スキルの男に相談してみるか、
取り敢えず今日はもう遅いし明日色々やろう。
俺は周囲の皆に解散を促しながら自分の寝床へと戻っていった。


翌朝日の出と共に寝床を出た俺は早速ゴブ朗達拠点の各代表達に向けて打ち合わせをするために念話を飛ばした。
早めに念話でアポイントを取っておかないとゴブ朗達は直ぐに狩りに行ってしまうし、オルド達は拠点の強化のための仕事に取りかかってしまう。
そう、この拠点で特に役割を持たず暇を持て余しているのは俺だけなのだ。
俺が1人落ち込みながら広場に行くと全員既に集まってくれていた。
早いな、起床から移動を考えていても既に起きていないと集まるのは無理だ。
まさかまた俺が起きるのが一番遅かったのか?
まだ日も昇り始めたばかりだというのにこの拠点の朝は早すぎる。


「ゲギャギャ、グ、グギャギャ」


ああ、すまんちょっと待ってくれ。誰かに翻訳を頼まないと話が全く前に進まない、
昨日はジャックに頼んだし今日はエレナにお願いしよう。
ん?エレナがいない?珍しいなあいつが寝坊するなんて、後で起こしに行ってやるか。
しょうがないのでまたジャックお願いしていいか?


「はい、畏まりました」


そういうとまたゴブ朗が喋りだした。


「(それで主様よ、今日はいったい何の話があるんだ?)」


ああ、皆に相談したいことは2つ有るんだが、
まずは1つ目に今アルカライムでモーテン達のタトゥーを真似して身体にお前達のようなタトゥーを入れている人間が増えている件だ。
どう思う?


「(別に問題はないんじゃないか?俺達は主様に従属しているからお互いの存在が認識できるからな。只単に身体に似たタトゥーを入れた奴が増えた所で見分けが付かなくなることはないぞ?)」


ん?そうなのか?初耳だ。
だからあの時エレナ達は街民を気にしていなかったのか。
それにしても皆当たり前のような顔でこちらを見ているが何故誰も教えてくれないのだろうか?
俺のスキルなのに俺よりも拠点の奴らの方が詳しすぎる。


「(問題はそこじゃないと思うよ?確かに仲間とそれ以外は僕たちには見分けが付くけど他の人が見たら皆似たようなタトゥーしているように見えるんじゃないかな?恐らく主様はそこを話し合いたいんだと思うよ)」
「そうですね。恐らくそのタトゥーをした人間達が起こす問題やその事で周囲から一つの集団として認識や我々にまで悪いイメージが付く可能性をご主人様は懸念されているのだと思います」
「(だがそうだとしてもどうするんだ?主様が武力で無理に迎合することは禁止にした今じゃアルカライムの中の人間を止める手段はないだろう」
「確かにそうですね。対策としてはタトゥーを街民が入れる原因となっているモーテン達の評価を落とす方法がありますがこれはメリットよりもデメリットの方が大きいと思われます。現状最善は問題を起こす人間が出たらモーテン達に対処させるのが良いのではないでしょうか?」
「(でもそれだと後手後手になっちゃうよね。タトゥーを入れないように悪いイメージを植え付けようにも結局それだと主様が考えている問題に行き当たって本末転倒だし難しい問題だね)」


あれ?結構皆本気で悩んでいるようだ。
そんなに悩まないだろうと軽い気持ちで提案したのだがどうしよう、
次の本題が提案しづらい・・・


「(結局現状は問題は起こっていないんだから手の打ちようがないな。取り敢えずランカ監視をさせて様子見でいいじゃないか?)」
「そうですね。それで行きましょう。それで主様次の議題はなんでしょうか?」


ああ、良かった。なんとか纏まったようだ。
さて、次が本題だ。
今度あるナミラ平原の決戦に参加するためには本日中に王都を出発する必要があるのは皆知っているな?
そこで俺は松風に乗って王都を出・・・


「(却下だ)」


いやまだ最後まで言っていない。
せめて最後まで言わせて頂けないだろうか?


「(どうせナミラ平原まで護衛も付けず松風に乗って移動すると言うんだろう?昨日の会議で話したようにこれから主様は俺達の王になるんだぞ、いい加減に自覚を持って行動して欲しい。)」


いやだから護衛として松風を・・・


「(松風はまだまだ弱いよ。もし主様の身に何かあったら僕達はこれからどうすればいいのかな?もしかしたらスキルの効果が切れて死んでしまうかもしれないよ?)」


なんだと?それは考えたことがなかったな。
確かにこの内容は検証しようがないから否定もできない。
どうしよう、これが事実だったら俺は簡単に死ぬことができない。
文字通りこの拠点で生きる全ての者達の命を背負っていることになる。


「(主様よ理解してくれたか?俺達は主様の存在があってこその存在だ。だからせめて外出する際や何かするときは誰か俺達が安心できる者達を連れて行ってくれ。最初にこの拠点を出るときにそう約束しただろう?)」


ああ、確かにその通りだ。
最近ではずっとエレナ達が側にいたから忘れかけていた。
俺が間違っていたな。
わかった、ナミラ平原への移動はいつも通り誰か連れて行こう。
誰が付いてきてくれるんだ?いつもみたいにエレナ達か?


「(我が行こう)」


ん?誰だ?
俺は自分の事を我と呼ぶ人物を頭の中で探しながらその人物の方へ振り返った。



「異世界をスキルブックと共に」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く