異世界をスキルブックと共に

気のまま

ドワーフ

ドワーフ?
あの地球でよくファンタジーに出ていた酒好きで有名な?
俺は初めて見る小柄なおっさんに驚きながらジャックに問いかけた。


「恐らく間違いないと思いますよ。小柄で髭蓄えた風貌は個性的ですし何より女性にもドワーフの女性特有の立派な髭が見て取れます。十中八九ドワーフでしょう」


俺にはドワーフの特徴は分からないがジャックがここまで断定するなら間違いないのだろ。
そうこうしているうちに無事に召喚が終わった。
さてどういう経緯でゴブ朗達に回収されたのだろうか?
取り敢えず一番年上っぽい男性に事情聴取だ。


「初めまして俺はケンゴと言います。いきなりで申し訳ないけど生前の事を教えて貰えるかな?」
「儂の名前はゴランという。儂らは諸事情でドワーフの国、グランデルグ王国を抜けこのフルネール大森林で集落を築き酒や鍛冶を生業として周囲の他の集落や他の種族と協力して細々と暮らして居った」


なんてことだ、周囲に他の集落や他の種族がいたのか。
全然気がつかなかった。
これは今後交流等で会う楽しみが増えたな。
しかし話した感じゴラン達はいたって普通の一般人だ。
何故ゴブ朗達に殺されたのだろうか?


「ある日突然集落の外にゴブリンやウルフのような魔物達、中には人間も混ざった奇妙な集団が現れた。その中の人間がいきなり「ここは今からケンゴ様が統治する国の領土となる。ケンゴ様の事を知らぬ愚物共、降伏すれば苦しませずに殺してやる。抵抗すれば抵抗したことを後悔するように殺してやる。さあ選べ」と言い出した。その時は儂らはケンゴ様が誰かも知らないし無抵抗に殺される訳にもいかなかったのでゴブリン達に抵抗を試みたのだが結果は見ての通り1人残らず殺された」


あいつらいったい何をやってるんだよ・・・
俺はその場で頭を抱えた。
ゴランの話を聞く限りゴブ朗達がゴラン達の集落を特段の理由無く襲い略奪したことになる。
これじゃあオルド達が以前やっていた山賊となんら変わらない。
いやどっちを選んでも殺すしか言っていないから山賊より達が悪い。
俺はいつの間に暴君になってしまったのだろうか?
ゴブ朗達は拠点内だととても優秀で良い奴だ。
なんで外部の者達には厳しいのだろうか?


「ご主人様は何をそんなに悩まれているのですか?」


俺がさらに頭を抱え蹲っているとそうジャックが問いかけてきた。
いやうちの拠点のゴブ朗達がやらかしたことについて頭を悩ましているのだが・・・


「そのゴブ朗という方は魔物なのですよね?」


ああそうだがそれが何かあるのか?


「ええ、魔物が力を蓄え自らの拠点の周囲の集落を襲い縄張りを広げていくのは普通のことですよ?今回それがドワーフの集落だっただけのことです。しかも確かに一度は殺しましたがご主人様の力で蘇生までしている。悩まれる理由が見当たらないのですが何か他に問題があるのですか?」


それを聞いて俺は驚愕した。
これが普通だと?
いや確かに俺は生前の地球で考え方を基本としている。
だがこれは人間が中心の考え方だ。
この世界で魔物として産まれ魔物として育ったゴブ朗達からしてみれば俺の考え方のほうがおかしいのか?
いや違うな、言葉が通じないからと俺の意思をきちんと伝えていなかったのが悪かったのか・・・
ああ、これは落ち込むな・・・


しかもさっきから何か似たようなことがあったような気がしていたがそうか思い出した。
エレナだ。
エレナの考え方もどちらかと言うと魔物寄りの考え方をしている。
あの子は外部の人間にもの凄く厳しいからな。
最初召喚した後にゴブ朗達に任せたのは失敗だったな。
完全に影響を受けている。
途中やっぱりゴブ朗先輩は間違っていなかったとか言っていたし間違いないだろう。
俺はジャックの言葉にさらに深く頭を抱える事になった。
取り敢えず今晩お姫様救出作戦を練る時に俺の考え方を一度皆に話すかな。
俺はそう区切りをつけゴラン達に向き合う。


「今回の件は本当に申し訳なかった。突然集落を襲撃され訳も分からず混乱したことだろう。全て俺の責任だ。希望があれば集落まで送り届けるし元の生活が送れるように尽力しよう」
「いえ、出来れば儂らもここの拠点に置いて欲しいのだが、無理だろうか?」


ん?どういうことだ?
襲撃した奴と同じ拠点に居ることになるぞ?
恨み辛みとかないのだろうか?


「儂らに恨みは一切ない。むしろあの時襲撃してきた者達が言っていたことが正しかったのだと今ではよく理解出来る。ケンゴ様のことを知らぬ儂らが愚かだったのだ」


いやいやその考え方はおかしいだろう。
ゴラン達は訳も分からず殺されたのに急にゴブ朗達に理解を示すとはどういうことだろうか?
しかも俺の事をいきなり絶対視しすぎている。
これはまさかスキルのせいなのか?
以前から殺した相手でも問題なく会話が成り立っていたしゴブ朗達も最初から言うことを聞いてくれた。
この拠点で俺の事を敬ってくれるのは殆ど従属化のタトゥーが入っている奴らだ。
あぁそうか、ゴブ朗達があのような行動に出るのはこのスキル、いや俺のせいか・・・
恐らくこの従属化や召喚スキルは従属と言うよりは隷属に近いものなんだろう。
無条件で主人に恭順しその主人の為に行動を起こし主人の為に死んでいく。
あぁどうしてこんなことになってしまったのだろうか。
俺は拠点を見渡すように視線を巡らせ後その場で項垂れた。



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