異世界をスキルブックと共に

気のまま

王都のギルド2

その男女の言葉を聞いた冒険者達の動きは早かった。
俺達は元々囲まれている状況に近かったがそれが急速に密度を増し狭まった感じだ。


そして何故か俺はその包囲の外にいる。
皆俺に気付いていないのか視線すら向けてくれない。
これはギルドに入ったときから皆俺には気づいてなかったのだろう。
前から思っていたがこの隠密スキル少し働き過ぎなんじゃないだろうか?


すると冒険者達に動きがあった。
後方にいた奴隷達に襲いかかったのだ。
拙いな、今日雇った奴隷達は戦闘を行えるようなスキルが無い。
このまま捕縛されてしまうかと思ったがやはり予知持ちのマリア達の動きの方が一足早かった。
襲いかかる冒険者達を左右でマリアとリンが吹き飛ばし牽制している。
あぁリンに吹き飛ばされたのはスキルを奪われているな、可哀想に。
吹き飛んだ後自分の体調が何処かおかしくなっているのが分かるのだろう自分の身体を手探りで確認している姿が見える。
すると護衛達と少し離れた場所で炎が吹き上がった。
一気にギルド内の温度が上がる。
それを見た男女や冒険者達は目を見開き驚いていた。
そうエレナが炎を纏い出したのだ。
髪が炎のように巻き上がりエレナの周囲が高温からか歪んで見える。
いや毎回エレナはギルドで炎を使うが火事とか大丈夫なのだろうか?
それにほら冒険者達だけじゃなくてうちの奴隷達も驚いているから少しは加減をして欲しい。


「これはどういうことか説明して貰えませんか?」


エレナの怒気に気圧されたのか若干包囲が下がりつつある。


「貴方はエレナちゃんっていうのよね?貴方がさっき言っていたケンゴ様はどこにいるのかしら?」
「話になりませんね。私は説明を求めているのですよ?何故私がケンゴ様の所在を貴方に教えなければならないのですか?」
「そのケンゴ様に指名手配が掛かっているからよ」


!?


指名手配?俺が?
最近お姫様を助けたりアルカライムでは黒の外套の殲滅に一役買ったりとなるべく人のためになるように行動している俺に指名手配?
なんでだ?
全く心当たりがない。
俺がそう1人パニックになっているとさらにエレナが男女に問いかけた。


「ケンゴ様に指名手配が掛かるなど何かの手違いではないのですか?罪状はなんです?あまり適当なことをすると後悔しますよ?」
「罪状は洗脳と誘拐、嫌疑として強姦や殺人などがあるわね。少額ではあるけど懸賞金も掛けられているし黒の外套と繋がりがあるという噂もあるわよ?」


なんだと・・・?
確かに殺した相手を召喚し拠点で扱き使っているから洗脳と誘拐、そして殺人は当てはまらなくはないが強姦は完全に冤罪だ。
誰だそんなこと言い出したの。


「それは完全に冤罪ですね。そもそもケンゴ様に罪を問おうするなどそれ自体が烏滸がましい、誰がそんなことを言い出したんですか?私はその人の方が怪しいと思いますよ?」
「指名手配は身分が証明されている冒険者ギルドの職員から出されているわ。これが嘘ならその職員は首を刎ねられるわね。でも貴方の証言は参考にならないわよ、洗脳されたエレナちゃん?」
「私が洗脳されていると言うのですか?冗談は顔だけにしてください」
「あら言うわね?でも指名手配の内容に既に貴方は洗脳されたとあるわよ?」
「巫山戯た事を」


ああ、これは拙いな。
こちらは無罪を証明できる手段がない。
だが無闇に捕縛されるわけにもいかない。
俺が捕縛されれば拠点の奴らは黙っていないだろうしそれにお姫様との約束も守れなくなる可能性も出てくる。
しかも俺達が行かないとナミラ平原での決戦は敗色濃厚だ。
どうしようか?
俺が考えている間にもエレナは男女に斬りかかりそうだしマリアやリンの方も吹き飛ぶ被害者が増えている。
取り敢えず一度話してみるか。


「はいはーーい、ストップストップ!!ギルド内で暴力沙汰は御法度だよーー!!」


俺は取り敢えずクリフォードさんの真似をしながらこの騒動を止めようと試みた。
決して巫山戯ているわけではない。
急におかしな制止が聞こえたせいか皆こちらを振り返ってくれている。
よし!上手くいったな。
俺は皆の視線を浴びながら話掛ける。


「どうも皆様こんにちわ、私がくだんの件のケンゴでございます。私の身内がご迷惑をお掛けして大変申し訳ありません。少し大事になっていますが何方か詳しく話を聞かせて頂けませんか?」
「貴方いつからそこにいたの?」
「初めから居ましたよ?」


それを聞くと男女の人は先ほどよりも目を見開き驚愕したような表情を見せた。
周囲を見渡しても似たような反応だ。
お願いするからフリーズせず誰か説明して欲しい。


「それで私に掛けられた罪状や嫌疑について話したいのですが貴方に話せば良いですか?」


俺は男女の人にそう問いかける。
あとエレナ、熱いからもうちょっと温度を下げてくれ。


「ええ私で構わないわ。それで素直に捕縛されてくれる気になったのかしら?」
「いえいえ申し訳ないですが今は捕縛されるわけにはいかないんですよ。ですから少しお話をしようと思っています」
「話?いいわ、聞くだけ聞いてあげるわよ」
「有り難うございます。ではまず貴方の名前をお聞きしてもよろしいですか」
「あら、私としたことがごめんなさいね。私はカズコって言うの、よろしくね」
「はいよろしくお願いしますね。ではまず初めにその指名手配の内容は冤罪だと主張します。次に黒の外套と繋がっているという嫌疑ですがカズコさんはアルカライムで黒の外套が殲滅された事はご存じですか?」
「ええ、知っているわ。アルカライムの英雄モーテンとその仲間が殲滅した件よね?」
「はい、実はそのモーテン達も私の部下で殲滅も私と一緒に行ったんですよ。これはアルカライムのギルドマスターであるクリフォードさんが証明してくれますよ」
「それは本当なのね?」
「ええ問い合わせてみてください」


そういうとカズコさんは受付にいた女性に何か言付け数分後その女性が何か水晶のような物を持ってきた
何かの魔道具だろうか?
カズコさんが魔力を流し少し弄っているとその水晶から聞き慣れた声が聞こえてきた。


「もしもし?いったいどうしたんだい?カズコちゃんの方から連絡してくるなんて珍しいね?」
「久しぶりねクリフォードちゃん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど良いかしら?」
「いいよいいよなんでも聞いてよ」


相変わらずフランクな男だな。
しかもお互いちゃん付けで呼ぶとは仲が良さそうだ。


「ケンゴちゃんって知ってる?」


するとクリフォードさんはいきなり声のトーンを下げながら話し出した。


「何かあったのかい?」
「いえこっちではケンゴちゃんが指名手配されててね。今目の前にケンゴちゃんがいるんだけど冤罪だっていうのよ。どう思う?」
「その罪状は?」
「洗脳と誘拐あと嫌疑で強姦と殺人さらに黒の外套と繋がっているってとこね」
「多分それ冤罪で間違いないと思うよ」


有り難う、クリフォードさん貴方を信じて良かった。


「どういうこと?」
「僕はアルカライムでのことしか知らないけど彼はアルカライムだけでも住民を野盗から救ったり黒の外套から誘拐された住民を救ってくれているよ?それに黒の外套のアジトや抜け道等の情報も隠さず教えてくれたしさらに黒の外套が暗躍している原因である貴重な魔道具も提供してくれたよ。あと彼と関わった住人、武器店や奴隷商等評判はかなり良いしね、悪い噂はアルカライムでは一切無いよ」
「それは嘘ではないのね?」
「僕がカズコちゃんに嘘をつくと思うかい?確かに気配もなくて素性も知れないし嫌みも言うし顔もぱっとしない男だけど悪い人間じゃないと思うよ。もしなんだったら彼の身の証明はこの僕とアルカライム領主が連名で証明するよ」


一言も二言も多いがカスミちゃんと揉めたことも隠してくれているし本当に頼りになる。


「それほどの男なのね?わかったわ有り難うクリフォードちゃん。また今度一緒に飲みに行きましょう」
「うん楽しみにしているよ。あと王都にも黒の外套の抜け道があるらしいから後で教えて貰うといいよ」
「ええ、わかったわ、それじゃまたね」
「うんじゃあまた」


水晶での通信を着るとカズコさんがこちらを振り返る。
先ほどのような剣呑な雰囲気が無くなっている。
さすがクリフォードさんだ。
これで交渉もしやすくなる。
俺はカズコさん向き直り話掛けた。



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