異世界をスキルブックと共に

気のまま

お姫様2

「エスネアート王国とグラス帝国は昔からお互いの領土を巡り争っていました。ここ最近はある程度の軍を派遣してお互い領土付近で睨み合い続けている状況が恒常的に繰り返されているのが現状です。ですが最近勇者召喚を成功させたグラス帝国がこれからの勇者への支援とそれに伴って現魔王の力に対抗するため過去の魔王の魔石の欠片を集めその力を利用するのでエスネアート王国が保有する魔王の欠片を寄越すように要求してきたのです。」


ほうほう、確かに帝国が魔王の魔石を集めようとしていることは聞いたことがある気がする。


「グラス帝国の言い分には魔石の魔力を利用する方法を開発したとの事ですがその情報開示はなされていません。一方的に勇者召喚を成功させた帝国の技術力を信じろと圧を掛けてきているのが現状です。ですがエスネアート王国としては勇者の支援ならまだしも魔王の魔石の利用方法も分からないのに無闇に封印を解除しグラス帝国に渡すわけにはいきません。それをグラス帝国に伝えたら現魔王討伐のために国を挙げて協力関係を築かないといけないときにその和を乱すような行為は看過できない、もしかしたらエスネアート王国は現魔王の手に既に落ちているのではないか?と在らぬ疑いまで掛けられ先日いきなりグラス帝国が我が領土に攻め込んきて戦争に発展してしまいました」


凄い勢いで説明してくれたが話を聞く限りどうも帝国が調子に乗っているだけじゃないのか?
エレナを見るがどうも似たような印象を受けたようだ。


「それであなたたちはそんな状況で何をしていたのですか?まさか逃げだそうとしていたところを襲われていたのですか?」


違った一番調子に乗っているのは間違いなくエレナだ。


「馬鹿にしないでください。私はこの国が滅びる時まで逃げることなどありません。戦端の状況が思わしくなく我が軍の不利な状況が続いていたので近隣の領主に軍の派遣を要請に出ていたのです。運悪くその帰り道で賊に襲われてしまいましたが・・・」
「エスネアート王国の軍隊はそこまで弱いのですか?それに本当に運悪く襲われたのでしょうか?馬車1台に対して40人以上で囲んでいましたよ?馬車に貴方が乗っているのが分かっていて襲撃したと考えるのが妥当でしょう。」
「軍隊に関しては決して著しく弱いとは思えません。我が軍は日頃から練兵を続け来たる日に備えていました。しかし今回グラス帝国の軍隊が異様でした。勇者召喚で士気が上がっているのは分かりますが軍の中に黒い魔力を纏う凄腕の部隊がおりその部隊に攪乱されていること、そして魔物が・・・スケルトンやゾンビ等の魔物が何故か戦列に加わり我が軍を圧倒していました。これが我が軍が劣勢になっている原因です。どうにか対処する方法を考えなければなりません。それに私が故意に襲われたと言うのであれば他に援軍の要請に出ているお姉様達が気になります。早く城に戻らなくては・・・」
「貴方が急いで戻ったところで既に襲われているのであれば結果は変わらないと思いますよ?」


いやこれは少し言い過ぎじゃないだろうか?
お姫様泣きそうだぞ?
前から思っていたのだが何故エレナは拠点の仲間以外には冷たいのだろうか?
明らかに人の気持ちと言う物を慮っていない。
今は拠点のメンバーも似たようなとこもあるが生前会う人全部にこんなこと言っていたら完全にぼっちだぞ。
そういえば以前カスミちゃんがあんなに優しかったエレナちゃんが冷たくなったとか言ってたな、
何か原因があるのか?
今度拠点に戻ったらカシムに聞いてみよう。


「それで貴方は私達に何をさせたいのですか?」
「王都から北西に5日行った先にナミラ平原という場所があります。7日後にはそこで我が軍の総力を挙げた決戦が行われます。あなた方にはそこで我が軍の戦力として参加して頂きたいのです」
「それに参加したとして私達に何かメリットがあるのですか?」
「参加して頂くだけでも報酬は用意しますが戦果を上げて頂ければそれに応じて私が用意できる物に限りますがあなた方が望む物を用意致しましょう」


すると珍しくエレナが少し考慮しだした。
何か欲しいものでもあったのだろうか?
言ってくれれば俺が用意するのに。


「それでは報酬として貴方を貰いましょう」


ん?
一瞬エレナが何を言い出したのか理解出来なかったのは俺だけではないだろう。
周囲を見ても皆若干首を傾げているし言われた本人に関しては思考が停止しているように見える。


「それはどういう事でしょうか?」
「言葉の通りですよ。貴方の全てを貰います。貴方の身体の肉や血の一滴まで、そして心や魂さえも我が主に捧げて頂きます。その代わり帝国を蹴散らすだけの力を与えましょう」


今度はどこの悪魔のセリフだろうか?
最近エレナは変な凄みが出てきているな。
お姫様は目を見開き驚いている。
俺は特に魂まで欲しいと思ったことはないが今のとこお姫様に会ってから俺はほぼ空気だ。
それにこの子はどこぞの村娘ではなく王女だぞ?
いなくなったりしたら周囲に与える影響とか大きそうだが大丈夫だろうか?


「それは本気でしょうか?」
「何を本気と確認しているのでしょうか?貴方を貰うと言ったことですか?」
「いえグラス帝国を蹴散らすと言ったことです」
「ええ、本気ですよ。その代わり貴方は頂きますし私達が用意する部隊を前線に配置して貰いますが」


お姫様は少し考え直ぐに答えを出した。


「わかりました。その条件を飲みましょう」
「姫様いけません!!貴方はこの国になくてはいけない人物なのですよ!?しかもこのような得体の知れない人物の言うことを真に受けてはいけません!!」
「確かに信用するには時間が足りませんが条件が達成できなければ従わなければ良いだけです。それに現状あの部隊や魔物の軍勢を倒せる手段がまだ見つかっていません。もし本当にこの人達が帝国を撃退できるとして私の命一つでこの国が救えるのなら安い物です」
「ですが姫様・・・」
「もう決めたことです。貴方もエスネアート王国の仕える者の1人なら国の事を考え行動しなさい。それと彼らに私のメダルを渡しますので用意してください」
「・・・わかりました」


そういうと護衛の1人は馬車の中に戻り一枚の手のひら大のメダルをエレナに手渡した。
もう完全にエレナが我が拠点の代表だと認識されているなこれは。


「これは?」
「そのメダルは私と王家を示す家紋が入っています。そのメダルは王家が後ろ盾になることを証明する物です。このエスネアート王国であれば何処に行ってもそのメダルを見せれば一定の支援を受けられます。それを見せ明日から行われる行軍に参加してもいいですし、直接ナミラ平原に行って軍に参加しても構いません。その場合7日後の期日に遅れないようにお願い致します」
「わかりました。では私達は直接ナミラ平原に向かうとしましょう。少しやりたいこともありますし」
「では私達も城に急ぎ戻らないといけないのでこれで失礼致します。この度は助けて頂き誠に有り難うございました。必ずお礼をさせて頂きますので戦争が終結したら是非我が城においでくださいませ」


そうお姫様は言うとこちらに頭を下げ馬車の中に戻っていった。
余程急いでいたのか直ぐに馬車は見えなくなった。
護衛達の大部分は遺体の回収や負傷者の手当などするために置いていっている。
手当は手伝わなくても良いのかな?
俺は馬車が走り去った方を見ながら取り敢えず今回の事を確認するためにエレナに話掛けた。



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