異世界をスキルブックと共に

気のまま

襲撃4

集団に近づくにつれ全貌が明らかになってきた。
今回襲われている馬車はどうやら1台だけらしい。
馬車側の護衛もまだ数多く生きており馬車を守るために奮戦しているがかなり追い込まれているように見える。
その原因は襲う側の人数にある。
馬車の周囲には気配察知で確認出来るだけでも40人以上いる。
馬車1台を襲うには人数が多すぎるのではないだろうか?
取り敢えず助けた方が良さそうだ。
俺が馬車から出てこの間同様土魔法で野盗達を捕獲しようとしたら何故かエレナから待ったがかかった。


「この程度の相手にケンゴ様が出る必要はありません。私達で対処致します」


いや出る出ない以前に襲われている人がいるのだから皆で助けに行った方が良いのではないだろうか?
それに申し訳ないがエレナ達はぱっと見全然強そうに見えない。
人数差の問題もあるが可愛らしい女の子があんな厳ついおっさん達に向かっていくのはいろんな意味で心配だ。
お願いだから先に土魔法で捕獲だけさせて貰えないかな?
駄目?信用してない?
いやエレナ達の事は信用しているがやはり心配なものは心配だ。
お互い譲らない状況が続くがその間に馬車の周囲は切迫してきている。
しょうがない、妥協点としてもし誰かが怪我したら直ぐに俺が出るからな?
それを聞きエレナは直ぐに声を張り上げた。


「マリア!!リン!!聞きましたね?もしも相手から一発でも貰ったら後でゴブ朗先輩達にまた訓練をつけて貰いますからね!!覚悟して挑みなさい!!」
「「はい!!」」


エレナがそういうとマリアとリンが馬から下り野党に向かって飛び出していった。
少し顔が怯えているように見えるのは気のせいだろうか?
俺が先ほどの選択を後悔しかけた時2人が接敵した。


「ガァァァァァ!!」


馬車から気を引くためかリンがいきなり熊五郎並みの威嚇を野盗達に浴びせる。
いつの間に覚えたのだろうか?野盗達は完全に浮き足立っているが女の子があんな威嚇をしちゃ駄目な気がする。
そのままリンは目の前の男の首を刎ねた。
野盗達はいきなりの襲来と威嚇により全く動けていない。
その間にどんどんリンが野盗を切り伏せていく。
なんだろう、以前のミノタウロス戦に比べて格段に動きが早いように見える。
それにあれは・・・風か?
リンが周囲に風を纏いながらたまに敵を吹き飛ばしている。
さらに後ろからはマリアが弓と周囲に展開した氷で出来た矢を放ち確実に頭を吹き飛ばしていく。
2人共以前は魔法なんて使えなかった筈だが誰かに教わったのだろうか?
それに先ほど怯えた表情をしていた気がするが今ではいつも通り拠点で仕事をするような気軽さで動き回っている。
俺の気のせいだったのだろうか?
防御面に関してもマリアが補助しているのか相変わらず2人共死角からの攻撃も問題なく躱していた。
やはりマリアの予知は反則だろう。
あれに当てれるゴブ朗達がどうかしている。
そうこうしていると馬車の方からもこの襲撃をチャンスと見たのか多くの声が上がり野盗を押し返していく。
先ほどまで大勢いた野盗も今ではもう数える程まで減っている。
これは問題なく終わりそうだな。
俺はエレナの判断が正しかったことを確認し静かに用意していた角ミサイルを収納空間へと戻した。


あれからものの数分で野盗達は壊滅した。
今ではマリアとリンが殺した野盗を端から順に回収している。
いや戦果を回収するのは大事だが2人共完全に馬車を放置している。大丈夫なのだろうか?
そしてようやく馬車近くの死体を回収するため近づいて行った時馬車側から声が上がった。


「おい!!これ以上近づくな!!お前達は何者だ!!」


マリアとリンは一瞬顔を馬車の護衛達の方に向けたが直ぐに興味が失せたのか死体の回収に戻った。
いやいや、一応俺達は馬車を助ける為に野盗を襲撃したんだからね?
もうちょっと馬車に興味を持っても良いのではないだろうか?
ほら馬車の人達も相手にしてくれないからどうすればいいか戸惑っているように見える。
最近マリアとリンがだんだんエレナに似てきている気がする。
あの助けたときの初々しい顔が懐かしい。
俺は救助者の確認の為エレナに馬車に近づくように指示を出すのだがあからさまに嫌そうな顔をされた。
何故なのだろうか?


俺達が相手の馬車の近くに乗り付けると護衛達は剣を抜き警戒してくる。
そりゃ得体の知れない馬車が近づけばこうなるだろう。
俺は敵意がないことを示すため手を上げながら馬車を降り喋りかけた。


「あのー大丈夫でしたか?負傷者の方とかいましたらこちらに回復する手段がありますので教えてください」
「これ以上近づくな!!近づいてら問答無用で切り伏せるぞ!!」
「やはりこいつらも殺しましょう」


いつの間にか隣に来ていたエレナが恐ろしいことを言ってくる。
いや大丈夫、殺さなくて良いからちょっと落ち着いて欲しい。
もの凄い殺気を放ち始めたエレナを宥めながら相手の馬車を確認する。
相手の馬車はザックさん達の馬車に比べ一回りも大きく、さらに側面には家紋だろうか?わかりやすいように大きくエンブレムが刻まれている。
恐らくこれはどこぞのお偉い貴族様が乗っている馬車なのだろう。
護衛達も中にいる人物が余程大事なのか先ほどから一切警戒を緩めない。
護衛の人達も近づかないで欲しいみたいだしこれはこのまま帰るのが良策だろう。
関わるとやっかい事の匂いしかしない。


「わかりました。では私共はこのまま帰りますね」


俺は軽い挨拶をし再び馬車に乗るために踵を返す。


「待て!!お前達は何者だ!!襲ってきた奴らとは関係がないのか!?」」


近づくなと剣を抜く相手の質疑に応答する必要があるのかは甚だ疑問だが後々問題になると面倒なので一応答えとこう。


「旅の途中でたまたま通りかかった所襲われている馬車があったので加勢しただけですよ。それでは私はこれで失礼しますね」


そう返答し俺が足早に馬車に戻ろうとすると相手の馬車の中から声が掛かった。


「お待ちください」
「姫様!?出てきては駄目です!!危ないので直ぐにお戻りください!!」


呼び止められ振り返ると今まさに馬車を降りようとしている令嬢がいた。
姫様か・・・
俺は先ほどの護衛からの質問を無視し直ぐに馬車に帰らなかった事を後悔しながらその令嬢が下りてくるのを待った。

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