異世界をスキルブックと共に

気のまま

王都への道中

あれから一週間経った。
俺は1人松風と名付けた馬に乗り優雅に異世界の景色を楽しみながら王都への道を緩やかに進んでいた。
はずだった・・・
だが現実は1人寂しく馬車の中で揺られている。
何故こんなことになったんだ・・・・・
拠点で王都に行くことを告げたところまでは順調だった。
だがエレナがさも当然のように旅支度を始め一緒に同行すると言い出した。
転移は俺が行かないとマーカーを打ち込めないので俺が行くのはしょうがないが何故エレナが着いてくるんだ?
旅の間は娯楽も少ないし日中移動しかない。
しかも食事に関しては拠点での食事に比べかなり質素になる。
絶対拠点に残って生活していた方がマシだ。
ほら前回みたいに何かあったら絶対に呼ぶから!
だがエレナは頑なに着いてこようとする。
どうやら前回ダンジョンでエレナの制止を振り払いリンを助けに穴に潜った事が良くなかったようだ。
元々あまりなかった信用が完全になくなったらしい。
そうこうしているとエレナは念話で援軍を呼んだのかゴブ朗達が現れた。
その後はもの凄い勢いで皆で俺を説得しだした。
ゴブ朗達の言語は相変わらず分からないがエレナの発言から同行者がいなければ王都行きすら実力で阻止するらしい。
わかった、わかったから後ろで熊五郎を威嚇に使うのを止めて欲しい。
だが俺はここでエレナの同行を認める振りをしつつ俺側の援軍を念話で要請した。
そうマリアとリンだ。
彼女らはまだ拠点に来て日が浅く従属化もしていないのでそこまで俺に関して執拗に着いてこようとは
思わないはずだ。
しかも助けたときの恩がまだ生きている筈なので俺の方に加勢してくれるはずだ。
そうこうしている間にマリアとリンが走ってくるのが見える。
これでこの不利な状況も覆せる!
俺はその時は本気でそう思っていた・・・
だが俺は間違っていたんだ。
全てはこいつらの手のひらの上で踊らされていただけだった。
到着したマリアとリンは最初は俺の擁護してくれているように見えた。
だが話題が王都に行く際の危険性を問う段階になると急に手のひらを返したようにエレナ派に成り代わった。
しかも自分達も一緒に行くと言いだし同行者が増える始末である。
駄目だ、この拠点には俺の味方は1人もいない・・・
俺は天を仰ぎ見ながら全てを諦めた。


そして現在馬車に揺られている状況に至る。
この馬車の御者はエレナが務め両サイドをマリアとリンが馬に乗り固めるという布陣である。
マリアとリン馬に乗れたんだな・・・
俺は異世界の1人優雅な旅行に別れを告げながら王都へ移動を続けた。


今回他の村や町を経由せずに王都への移動を行っていたが道中は実に順調であった。
しかし夜になり野営をする際、俺は少しの間アルカライムと拠点へと戻っていた。
アルカライムへ戻るのはアンナちゃんの具合を確認するためだ。
魔力が一度完全に枯渇しているので何か後遺症のようなものが出る可能性がある。
髪の毛も相変わらず白髪が大部分を占めたままだが一週間様子を見た結果特に変わった様子はなかった。
一応ザックさんや商売の手ほどきを受けているランカには引き続き経過観察をお願いしている。


拠点に戻る理由は拠点開発に関して要望がいくつか出たからだ。
一番驚いたのが蟻とモグラの合同開発した地下空間だ。
俺が整地したときに地盤を固めていたのが功を奏して崩落の危険がない地下空間が我が拠点の地下に広がりつつある。
要望の1つはその地下空間の壁や柱の補強だ。
さらに蟻が主導でその地下空間でキノコ栽培が始まった。
お試しに蟻が用意したキノコを食べたオルド達が是非量産したいということで今やこぞって元農民達が地下で作業をしている。
次はハニービーの卵が孵化し出した。
これはバトルビー達が女王がいないので何処かから盗んできたやつだ。
ゴブリンの出産はまだだというのにハニービーはかなり卵から孵るサイクルが短いようだ。
俺はこの幼虫たちの中に女王がいることを願いながら従属化を行っていった。
最後の要請は我が拠点での住宅区と生産区の視察と俺の家の視察だ。
俺の家の視察?
要請を聞いたときは俺の寝床を何かするのかと思ったが住宅区に行ってみるとそこには見上げるほどの大きい家が建ち始めていた。
他の家と比べても数倍は大きい。
何かの会合に使うのかと思っていたらどうやらこれは俺の家らしい。
止めてくれ。
俺は1人身だぞ?絶対に持て余す。
掃除も大変だろうし俺は狭い所が好きな派なんだ。
出来ればこのまま小さい箱形の寝床でひっそりと生活していたい。
だがそんな事は言えるはずもなく俺はヨシュアの自慢気な顔を死んだ魚のような目で見つめていた。
さらに生産区では石工、服飾、鍛冶、そして俺の魔道具を生産する工房が建築され始めていた。
各奴隷の職人達はまさか自分の工房が持てるとは思っていなかったようでかなり興奮しているようだ。
これが建築し終われば我が拠点で初めての物資の生産が始まる。
今から考えても楽しみだ。
俺は思いを膨らませながら野営の夜を過ごした。


翌日再び王都への道を走らせているとついに遙か先に王都らしき影が見えてきた。
俺は無事に何事もなく王都にたどり着ける事を神に感謝し今日中に王都に入れるようにエレナに少し速度を出すように指示する。
すると俺の気配察知に引っかかる集団があった。
こんな何もない場所でこの集まり方・・・ザックさんが襲われていたときに似ている。
おいおい神様、今し方感謝したばかりなのにこれはないんじゃないだろうか?
俺は神様に愚痴りながらその集団の方に向かうよう指示を出した。



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