異世界をスキルブックと共に

気のまま

お祭り

翌日アルカライムの街は小さなお祭り騒ぎになっていた。
リングフォードさんが主催し無事に住民が帰還できたこと、有名な黒の外套をの拠点の壊滅とメンバーの殲滅が出来たことによる治安の向上を祝う祭りだ。
結局昨日のランスさんの件は黒の外套と関係がなかったらしい。
そして今回殲滅の立役者となった人物は領主であるリングフォードさんに表彰され、今や時の人となっている。
今もその人物は広場にいる俺の視界の先で大勢のご婦人達に囲まれ揉みくちゃにされている。
そう、今回表彰されたのは俺ではない。
揉みくちゃにされているのはいつの間にか冒険者ランクがD級に昇格していたモーテン達だ。
俺はいまだF級だというのにいったいどんな手を使ったのだろうか?


「それにしても本当に皆楽しそうにしてますね」


俺は周囲を見渡しながら隣に座る人物に話しかける。


「はい、皆がこうして笑っているのも全てケンゴ殿が黒の外套の殲滅や行方不明者の救助に尽力してくれたおかげです。本当に有り難うございました」
「いえいえ、本当に偶然が重なっただけですので気にしないでください」
「それでもケンゴ殿が助けてくれた事には変わりありません。それにしても手柄を全て彼らに譲って本当に良かったのですか?」
「ええ、構いませんよ。私は目立つのが苦手ですし、彼らも救助や殲滅にもちゃんと参加しているので手柄を貰う資格は十分にありますよ。それに彼らは一応私の部下になるので彼らが有名になると私にもメリットがあるんですよ」
「そうなんですか。ケンゴ殿は色々と考えているんですね。私も何かお礼をしたいのですが何かお役に立てることはありますか?」
「本当に気にしなくてもいいですよ。今回アンナちゃんを助けたのは自分が助けたかったので動いただけです。特に見返りを求めているわけではないので気にしないでください」
「いいえ、そういう訳にはいきません。私共を野党から助けて頂いたお礼もしていませんし、今回はさらに私の願いでアンナを探しに行って貰っています。そして何より私がケンゴ殿の為に何かしたいのです。何か私がケンゴ殿お役に立てることはないでしょうか?」
「そうですか。ではお願いしたいことが2つあります。実は先日奴隷を購入しましてその子らに商売の手ほどきをして欲しいのが1つ、その後もしその子らが商店を開くことがあればその支援をお願いしたいのが1つです。可能でしょうか?」
「そのようなことでよろしいのですか?」
「はい、実は奴隷を購入したのはいいのですが解放までの期間が短く、さらにまだその子らも年若くこのまま解放するのは憚られたので何か手に職があればもう奴隷に落ちることもないかと思いザックさんにお願いしようかと思いましたが駄目でしょうか?」
「いえいえ、問題はないです。まさかお願い事ですら他人の為にするとは本当にケンゴ殿らしいですね。わかりました、私ザックが不肖な身ではありますが誠心誠意その願いに当たらせて頂きます」
「そこまで気を張らなくていいですよ。いずれ私が作った物もその子らに扱わせるかもしれませんがその時もどうぞよろしくお願いしますね。」
「ケンゴ殿が作った物ですか・・・いったいどうなるのか想像も出来ませんね。わかりました、それまでにケンゴ殿の創作した物を売り捌けるぐらいのレベルに育ててみせます」
「よろしくお願いします」


そういうと俺はザックさんに挨拶をし席を離れた。


今俺は再びあの奴隷商へと来ていた。
今回黒の外套の拠点で得た収入とリングフォードさんからの謝礼で得た収入で追加の奴隷を買う予定だ。


「いらっしゃませお客様、あれから購入した奴隷の具合は如何でしょうか?」
「皆しっかり働いてくれてとても助かっているよ」
「それは重畳、これからも当店をご贔屓にお願いします」
「ええ、それで今回は以前見せて頂いた奴隷を購入したいと思って来店したのですがまだ彼らはいますか?あと新しく入荷した人とかはいますか?」
「はい、この間と変わらずにいますよ。ただ申し訳ありませんが今の時期ですと追加の人材は厳しいので入荷はまだ一時先になりますのでご了承ください。では彼らを連れて来ますね」


その後俺は土木、服飾、鍛冶、石工のスキル持ちを購入し拠点へと連れ戻った。




拠点に戻ると事前に奴隷を購入し戻ることを伝えていたからかオルド達が広場で待っていた。
俺は後ろで驚いている奴隷達をオルドに預け早速本日予定していた仕事に移る。
まずはこの間ダンジョンで得た魔石から蟻とモグラとワームを5匹ずつ。
そしてあのダンジョンのボスだったミノタウロスを召喚する。
改めて見てもミノタウロスは大きい。
こんな大きい牛男をあんな小さい2人が倒したなどと未だに信じられない。
だがこいつはもうこの拠点の一員だ。
これから材木を運んだりと力仕事が多くなるので今後役に立ってくれることだろう。
取り敢えずこいつらは拠点に残っていたポチに任せよう。
最近拠点に関しては丸投げばかりだが皆から不満が出ないか心配だ。


次はランカ達にザックさんの元で商売の手ほどきを受けることを伝えた。
何故かランカたちはこの拠点を出ることを渋っていたがいずれ俺が作った物やこの拠点で生産した物を売って貰う予定だと伝えたら目を輝かせ承諾してくれた。
先ほどザックさんの元に行くことを伝えたら死んだ魚のような目をしていたのにもの凄い変わり様だ。
未だにこの子らの思考回路は理解ができない。


最後はこの間の戦闘で等級が10級と9級の奴らがレベル上限に達していたので強化する予定だ。
いつも通り召喚した奴らは問題ないのだが問題はマリアとリンだ。
召喚した奴らは10等級ならLVの上限は10で打ち止めなのにマリアとリンは既にLV20を超えている。
どういうことだろうか?
召喚した奴らとこの世界の住人は成長のシステムが違うのか?
マリアとリンは従属化もしていないので強化出来るのかもわからない。
取り合えず考えても分からないのでマリアとリンがLV上限に到達してから考えよう。


その後俺は拠点での仕事を終え自分の寝床へと向かった。
目の前の少しづつ建ち始めた住宅部を見ながら今後のことを考える。
これからどうしようか?
スキルブックの強化のためダンジョンを攻略したいが俺が攻略してしまうとダンジョンが機能しなくなる。
そうなるとそこでの収入を当てにしていた人やそこの物資を利用している街などに被害が出てしまうので行くのが憚られる。
そうなると現状もうこのアルカライムで出来ることは少ない。
さらに魔力を奪っていた黒の外套の事も気になる。
王都に行くか・・・
俺はさらに今後の事を考えながらその日は寝床で夜を明かした。

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