異世界をスキルブックと共に

気のまま

守衛長

あれから動けるまでアンナちゃんが回復するのに結構な時間がかかった。
やはり魔力が枯渇すると体力的に回復していても身体のダルさが残ったり身体を動かしづらかったりするようだ。
さらにアンナちゃんは一度魔力が0になった後遺症か髪の大部分が白く変色してしまっている。
あんなに綺麗な桃色の髪の毛だったのに勿体ない。
もう元には戻らないのだろうか?取り敢えずは様子見だ。
俺は少し離れて横になっているアンナちゃんに手を振ると元気そうな笑顔と共に手を振り替えしてくれた事を確認し先ほどから行っている作業に戻る。
そうアンナちゃんと共に積み重ねられた人達の治療を行っているのだ。
アンナちゃんを治療している最中に気づいたのだが、どうやら他の人もまだ辛うじて生きているようだ。
俺は急ぎ鑑定で診断し同じ魔力枯渇だと分かってからは年齢が低い子や体力がなさそうな人から順に治療を行っている。
大方半分くらい意識を取り戻しつつあるがまだ動ける人は少ない。


俺は治療を行っているとエレナが収穫物の報告と先ほど召喚しておいた黒の外套からの情報収集の結果を報告してくる
なんだろうエレナもそうだが後ろに控えるマリアやリン、ゴブ朗たちですら少しよそよそしく感じがする。
襲撃の際に怒鳴ったのが原因だろうか?
あの時は気が立っていたんだ。
謝るからどうか許して欲しい。


エレナからの報告によるとこの広場にかなりの資材があったらしい。
各武器や各防具、貨幣に食料、さらにいくつかの魔道具まであった。
恐らく王都に戻ると言っていたので街にある拠点からめぼしいものを持ち運んでいたのだろう。
これで我が拠点の物資も少しは充実するだろう。


黒の外套の一味からの情報ではどうやらアンナちゃん達は魔力を回収するために集められたらしい。
この拠点にある魔道具を使い事前に魔力を測定し魔力の数値が高かった者を集めこの黒い球のような魔道具で魔力を吸い取り貯蓄するようだ。
使用用途はこいつらにもわからないらしい。
王都の支部長からの命令らしく知りたければそいつに聞くしかない。
さらに疑問に思っていたことだが街からの脱出経路も判明した。
アルカライムもそうだが王都にも専用の地下通路が幾つか存在しているらしくいつでも出入り出来るとのことだ。
おいおい、街もそうだが王都の警備もザルすぎる。
地下通路は普段魔道具で偽装しているらしく黒の外套のメンバーが持つカード型の魔道具で出入り出来るらしい。
この拠点にも4つあったので後で試してみよう。
取り敢えず俺は王都の隠れ家の場所と分かる限りメンバーの名前を書かせこいつの首を落とすように指示する。
こいつらは今回絶対許されないことをやった。
召喚し仲間に加えるつもりは一切ない。
俺はエレナに連れられて行くそいつを尻目にそのまま治療を続けた。




翌朝、俺達はようやく街へと帰還し始めた。
中には歩きづらそうな人もいたが拠点の近くに馬と馬車が何台か発見できたのでそちらに乗って貰い移動している。
さらに出発前にはゴブ朗達も拠点へとこっそり送り返した。
捕まっていた人もそうだが街の人達に見られるとパニックを起こす可能性があるのでなるべく穏便に行くため申し訳ないが拠点待機である。


それから半日ぐらい歩いただろうか?
ようやく街が見えてきた。
行くときはそんなに遠くに感じなかったのだがあの時はかなり焦っていたのだろう。
俺達はそのまま街に着くといつも通り守衛の列の最後尾に並んだ。
待っている最中は以前と同様にアンナちゃんが相変わらず俺の膝の上ではしゃいでいる。
あぁ癒やされる。
俺がアンナちゃんに童話を聞かせていると守衛の方から血相を変えて走ってきている人物が見える。
どうしたのだろうか?


「おい!お前ケビンか!?」
「あぁ、久しぶりだなハンジ!今日は酒は飲んでないのか?」


どうやら守衛は俺が助けて連れてきた男の1人と知り合いみたいだ。


「お前!!急にいなくなりやがって俺がどれだけ心配したと思ってる!!何処行ってたんだ?」
「実は俺な、黒の外套の一味に捕まって死にかけてたんだわ そしたらそこの馬車の上に居る人が颯爽と助けに来てくれてな。ホント命拾いしたぜ。あ、あとこの周囲に居る人全員俺と同じような境遇だから探している人いるんじゃねーのか?」
「黒の外套だと?それは本当か!?俺が手に負える案件じゃねーな。おいあんた!ちょっと守衛長呼んでくるからここでちょっと待ってろ」


なんだろう、もの凄く面倒くさい事になりそうな気がする。
大体こういうときは神様の幸運は絶対に仕事をしない。


少し待っていたら守衛の方から今度はかなり大柄な男がこちらにやって来た。


「俺がこの街の守衛長をやっているランスというものだ。この人達を助けたと言うのはお前か?」


なんでこの人はこんな威圧的にこちらを見てくるのだろうか?
俺、何かしたかな?
俺の膝の上にいるアンナちゃんが怯えるから止めて欲しい。


「そうですね。一応治療したのは私ですね」
「お前が黒の外套を倒せるようには見えないな。どうやってこの人達を助け出したんだ?」


なんだろう、助けられた人の帰還を喜び祝うだけでは駄目なのだろうか?
ゴブ朗達のこともあるしあまり多くは話せない。


「黒の外套の隠れ家に行って黒の外套を殺しその隠れ家にいた人を助けて来ただけですよ」
「巫山戯ているのか?どうやって黒の外套の隠れ家の場所がわかった?中にはどれだけの人数がいてどんな物が置いてあった?そしてその隠れ家の場所は何処だ?全て答えろ」
「お断りします。だけど中には50人くらい黒の外套の人達がいましたよ」
「・・・・そいつらはどうしたんだ?」
「全て殺しましたよ」
「証拠はあるのか?」


そう言うのでエレナに馬車からメンバーの生首を出して貰った。
後で街の拠点襲撃に失敗したクリフォードさんへおみあげにするため残してある。


「本物のようだな・・・それだけか?」
「いいえ、50コ程ありますよ」
「ではそれを全てここに置いていけ、後隠れ家にあった物も全部だ。調査に使う。置いたらもういって良いぞ」
「お断りします。では皆、全員街に入ろうか」
「おい!!待て!!俺はここに全て置いて行けと言ったぞ!?」
「いったい何の権限で人の私財を置いて行けと言っているんですか?」
「俺はここの守衛長だ!!街に入る怪しい物を検査する義務がある!!俺が認めなければ街に入ることは出来ないぞ!!わかったら言われたとおりに置いていけ!!」


なんでここまで黒の外套に固執しているのだろうか?
怪しさしかない。
やはり神の幸運は死んでいる。
というかやっかい事を運んできてないか?
俺は神の幸運への信頼度を地の底に落としながら答える。


「えぇ分かりました。では街に入るのは諦めましょう」
「なんだと!?」
「入れないのは私だけですよね?この人達は元々ここの住人ですし救助を待ち望む家族が居るはずなので早く家に帰してあげたいのですがよろしいですよね?」
「くっ!いや駄目だ!!怪しい人物が連れてきた人間だ、身分の証明もされない限りはこの街には入らせない」
「本気ですか?この人達は被害者ですよ?街に入れないとここでキャンプすることになりますがここは人目に着きます。助けられた人達が守衛に拒絶され街に入れないとすぐ噂が広まりますよ?大丈夫ですか?」
「ぐ・・・うるさい!!俺が入街を認めないと言ったら認めない。俺は入街の条件をちゃんと出しているんだ。それをお前が拒否するのが悪い。この人達はお前に巻き込まれているだけだ、可哀想にな。気が変わったらいつでも言え。俺に謝罪し黒の外套と拠点にあった物を置いていくならいつでも入れてやる。それじゃここで周りに恨まれながら気長に待つんだな、ハハハ」


そういうとランスはそのまま門の向こうへと消えていった。
やはり面倒事だったな・・・
さてどうしようかな?
俺は街を囲む外壁を見ながら一つのカード型の魔道具を取り出した。

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