異世界をスキルブックと共に

気のまま

冒険者ギルド4

俺はそのカードを手に持ち詳しく見てみる。
一見何の変哲もないただの冴えない薄い板だ。
まだ冒険者証の方が見栄えが良い。
街へは転移を使えば簡単に入れるが今回はせっかく入手した魔道具を通路の確認がてら使ってみることにした。
まず俺は召喚した黒の外套が言っていたようにこのカード型魔道具に魔力を通してみる。
するとカードが自動で行き先を示すように少し動きだした。
カードに引っ張られながら城壁沿いを移動しているとカードが城壁のある一点を示し震えだした。
俺はそのことに少し疑問に思いながらも城壁に近づくとカードが少し発光し目の前の城壁が少し薄くなった。
恐らくこのまま城壁を通り抜ける事が出来るのだろう。
いや、地下通路じゃないじゃん。
俺は既にいなくなった黒の外套にツッコミを入れながら城壁を潜った。


城壁を潜った先は人目に着かなさそうな奥まった路地裏だった。
これはたとえ穴が空いてても気づく人は少なそうだな。
俺は見たこともない路地で迷子になりながら冒険者ギルドに向かった。


冒険者ギルドに入るといつもと変わらない風景が広がっていた。
ただ違うことは少し窶れただろうかギルド内にある酒場のカウンターにザックさんが項垂れて座っていた。
俺が声を掛けようとしたときこちらに気づいたのか席を立ちこちらへ駆け寄ってきた。


「ケンゴ殿!!娘は!アンナは見つかりましたか?私達はあれから街の中を一晩中探したのですが痕跡一つ見つけられずもうどうすればいいか分かりません。何かしらの痕跡だけでもいいのです。何か見つけることは出来ませんでしたか?」


ザックさんはかなり参っているみたいだな。
早くアンナちゃんを見つけて保護した事を教えて安心させてあげよう。


「ザックさん落ち着いて聞いてくださいね」
「はい・・・・まさかアンナはっ・・」
「はい、アンナちゃんは私が無事に保護しました。安心してください。とても元気にしてますよ」


それを聞いた瞬間ザックさんは先ほどまで重そうだった瞼を驚くほど見開き周囲を何度も見渡しだした。
目的の物が見つからず表情はかなり焦っている。


「何処にっ!!アンナは何処にいるんですか!?」


ザックさんは余程我慢が出来ないのか声を張り上げながら掴みかかってきた。
まぁあんな可愛い一人娘がいなくなったのだ気が動転してしまっているのだろう。


「ザックさん落ち着いてください。現在ちょっと問題があってアンナちゃんはここにはいないんですよ。だけど安心してください。アンナちゃんは確実に保護し今はエレナが面倒見ているので大丈夫です。恐らく問題が解決すれば今日中に会えますよ」
「そうですか・・・ケンゴ殿取り乱して申し訳ありませんでした。娘のことが心配で寝ていなかったものですから少し興奮してしまったようです。それで不躾な質問かと思いますがその問題というのは解決出来そうなんでしょうか?」
「はい、解決には少しある人の手を借りる必要があるのですが恐らく大丈夫だと思いますよ。なんやかんや言ってもいつもなんとか動いてくれますし」
「そのある人とは何方ですか?」
「クリフォードさんですよ」




俺は今いつも通りリアナさんに仲介を頼みギルドマスターの部屋を訪れていた。


「それで僕に話しがあるらしいけど何の話かな?」
「そういえば聞いた話なんですが黒の外套の一味への襲撃は失敗したそうですね?」
「君は僕にケンカを売りに来たのかな?」
「いえいえ違いますよ。クリフォードさんがこの街の黒の外套の隠れ家を襲った時、中はもぬけの殻だったんじゃないですか?」
「あぁその通りだ、一応襲撃前に下調べはしたけど君が僕に手の込んだ悪戯をしたんじゃないかと本気で疑ったよ」
「それはすみませんでした。けれどこの街の隠れ家の情報は本物ですよ。ただそれがクリフォードさんの所から漏れたのが原因です」
「僕から漏れる?それはどういうことかな?」
「ギルドに内通者がいるんですよ。表に居る受付の子の1人がそうですね」
「君は僕のギルドに裏切り者いると言うんだね?」
「はい、そうですね」
「嘘をついているようには見えないね。ただそれが本当だとしたら一大事だ。情報の出所はいつも通り内緒なのかい?」
「はい、内緒です。信じる信じないはクリフォードさんに任せますよ。それと最近この街で行方不明の人が居るのは知っていますよね?」
「もちろん、僕の方でも捜査を行っているよ。けど誰1人見つかるどころか痕跡すら残っていない。まるで神隠しだね」
「実はその神隠しに私の知り合いが巻き込まれましてね、それを捜査していたらクリフォードさんの襲撃から逃れた黒の外套と出くわしまして、後をつけて隠れ家まで行くと今まで行方が分からなかった人達が捕らわれていましたよ」
「なんだって!!それが本当ならすぐに救助に向かわないといけない!!緊急依頼を発動する案件だ。事が事だ今回はさすがに内緒にするとかは言わないよね?」
「落ち着いてください、そこにいた黒の外套は全て殺しましたし捕らわれていた人も全員無事に保護していますよ」
「それは冗談じゃないんだよね?何か証明する物はあるのかい?冗談なら今回は本気で怒るよ?」
「いえいえ、本当ですよ。これをどうぞ」


俺はそういうとエレナから預かった生首をクリフォードさんの前に出す。


「これは・・・?」
「これは黒の外套の一味の首ですね、一応あと50個程ありますよ」
「50か・・・一応証拠としてこちらに譲って貰うことは可能かな?」
「いいですよ。これからもクリフォードさんとは良い関係を築いていきたいですしね。後で出す場所を教えてください。あと2つ程お願いがあるのですがよろしいでしょうか?」
「君が僕にお願い?内容にもよるけど何を言われるのか今から恐ろしいね」
「そんなに難しい事じゃありませんよ。1つ目はこれを調べて欲しいんですよ」


そういうと俺は手のひら大の丸い黒球をテーブルに置く。


「これは?」
「今回行方不明者が大勢出た原因です。黒の外套がこれの為に魔力を多く保持している人を誘拐しその人達から魔力を奪いそれに貯蓄していました。恐らく他の街でも行方不明者が出ていたら原因は同じですよ。ただ問題なのがこれの使用用途が不明なんですよ。また自分の知り合いに被害が出ても困るのでその使用用途をクリフォードに調べて欲しいんです」


その話を聞いた瞬間途端にクリフォードの顔が険しくなる。


「その話は本当かい?それが本当だとしたらこの国どころか各国にとって重要な話になってくる。黒の外套はいろんな国で活動しているからね。しかもこの国でも王都を含め各街で似たような行方不明者が何人か出ている話は僕も聞いている。その原因究明の手がかりを君は僕に手渡すのかい?この情報を欲しがる輩は星の数ほどいると思うけどね?」
「ですからクリフォードさんに渡すんですよ。クリフォードなら悪用せず必ずこの街や国の為に役立ててくれるでしょう?そうしたら僕の守りたい人達も回り回って危険が減るんですよ。それに私はクリフォードを信用していますしね」
「まさか君からそんなことを言われるなんて夢にも思っていなかったね。わかったよ、確かにこれは僕が預かった。早急にこの魔道具らしき物を究明し被害に遭う人が1人でも多く減るように努力することを誓うよ」
「ありがとうございます。あとこれは私からクリフォードさんにプレゼントです」


俺はそういうと薄汚れたカードを差し出す。


「これも何か黒の外套関係の物なのかい?」
「そうですね、実はこの街や王都には隠された通路があってそのカード型の魔道具を使えば簡単に外から出入りが出来るんですよ。」


それを聞きクリフォードさんが今度は驚愕したような表情をする。


「まさか・・・いや君がここで言うんだから本当なんだろうね。しかしなんていうことだ、まさかそんな通路があったなんて・・・拙いな、これは早急に調べて領主と相談する必要があるね」
「そこら辺は任せますよ。後もう一つのお願いなんですけど今黒の外套から助け出した人を保護しているんですが街に入れないんですよ。なんとかなりませんか?」
「なんだって!?それはどういうことだい?」
「今朝方街の守衛を通過して街に入ろうとしたら守衛長から止められて黒の外套の遺体や拠点にあった物を置いていかないと街には入れないと言われまして今保護した人が全員外壁の外で待ちぼうけをくらっているんですよ。どうにかなりませんか?」
「それは守衛の領分を大きく逸脱しているね。今外にいる人達は誘拐された被害者達だ。それを蔑ろにし、ましてはそれを助けた人から私財を奪おうとする行為はたとえ加害者から奪った物だとしても犯罪だ。許されるべきではない。僕は少し行くところが出来たから君はその被害者の所に行って待っててくれないかい?なるべく早く行くから」
「わかりました。よろしくお願いしますね」


そういうとクリフォードさんは早々に部屋を出て行った。
俺は初めて見たクリフォードさんの怒った顔に驚きながら言われたとおりにエレナ達と合流するために外に向かった。



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