異世界をスキルブックと共に

気のまま

ミノタウロス

中央に鎮座するミノタウロスはぱっと見ただけでも身長が3メートルぐらいないだろうか?
筋骨隆々で片手にはアドロフさんとこの武器店で飾っていたような大きな斧を持っている。
いやあれは無理だろう。
あんな斧に当たったら死んじゃうよ。
ほんとにここE級ダンジョンなのだろうか?
もう帰らない?
俺は振り返りエレナに帰還を提案する。


「いえ、折角訓練にちょうど良い相手がようやく現れたのでこのままやらせましょう」


やらせる!?
まさかあんな厳つい牛男にこんな見た目可憐な少女達を嗾けるというのか?
スパルタすぎる。


「これぐらいの相手を倒せないようではケンゴ様の側で護衛の役割は果たせません。あの程度なら熊五郎やゴブ朗先輩なら瞬殺でしょう」


いつのまにエレナは自分を食べた熊を呼び捨てに出来るようになったのだろうか?
それにエレナは俺を護衛していたのか。
ゴブ朗の差し金かな?


しかし本当に大丈夫なのだろうか?
無理そうなら止めてもいいんだよ?


「「やらせてください!!」」


何故こんなにやる気に満ちあふれているのだろうか?
既に俺が少数派になってしまっている。
こうなってしまっては送り出すしかないだろう。
けど危なそうだったらすぐに回収するからね?


「「はい!!」」


そう言うと2人は広場に向かっていく。
いやマリアが戻って来たな。


「あの・・・この土ショートソードが悪いと言うわけではないのですが出来れば弓とか遠距離系の武器はないのでしょうか?」


それを聞きエレナが険しい顔をしている。
ごめんな、土持ってあんな厳つい牛男に挑むとか自殺行為だよな。
以前ホブゴブリンが弓を使っていたし今はゴブリンアーチャーだ、拠点に戻れば貸してくれるだろう。
俺が拠点で借りてくる旨を話す為マリアの方に向き直ると。
そこに既にマリアに弓を渡しているエレナがいた。
持っているなら先に言ってくれよ・・・


「ケンゴ様が用意した剣を捨て弓を取るのですから無様な戦闘は許しませんよ?」
「はい!心得ています!ケンゴ様の側に仕える者として恥ない戦いをお見せ致します」


俺の側にいて恥のない戦いとはいったいどんなものなのだろうか?
だんだん皆が力をつけていくのは嬉しいが何か変な方に向かっている気がする。
誰か相談できる人とかいないかな・・・


マリアは弓を受け取りリンと共にミノタウロスの所に向かっていった。
ミノタウロスは余裕の表れなのか中央を一切動く気配がない。
先に仕掛けたのはリンだった。
リンが身体強化を使いながらミノタウロスに迫っていく。
リンの動きに呼応してようやくミノタウロスが動き出した。


「ウボァァァッァァァ」


広場にミノタウロス雄叫びが響き渡る。
リンが雄叫びを浴びながら怯まずミノタウロスの左足を切りつけようとするが。


「リン!左上斧!!」


その声に応じてリンが切り付けようとした剣を止め勢いそのまま転がりミノタウロスの後ろに回避した。
その瞬間今リンがいた場所に戦斧が振り落とされる。
叩きつけられた戦斧は地面を割り凄まじい轟音を立てた。


「ウヴォァァァァァ」


戦斧が叩きつけられた瞬間動作が硬直したタイミングでミノタウロスの右目にマリアの弓矢が突き刺さっていた。
さらにリンが後ろに転がった後再びミノタウロスに跳ね飛び目を押さえているミノタウロスの脇腹を切りつける。


「グヴァァァァ」


チャンスとばかりにリンが再びミノタウロスに斬りかかろうとするが。


「リン!危ない!一度下がって!!」


リンは一瞬の迷いもなくその声に従い身を翻す。
その後を切り上げた戦斧が風切り音を立てながら通り過ぎた。


この2人は凄いな。
あのミノタウロス相手に圧倒している。
特にマリアの予知は非常に強力なスキルだな、余程のことがない限り攻撃が当たらない。
しかも自由に動き回っているリンも迷いもなくその指示に従って回避しその後の隙も上手いこと攻撃に変換している。
余程2人の相性が良いのだろう、
少しでも相手に疑問があれば成り立たない。


俺が2人の戦闘に驚いていると再びリンが駆けだした。
ミノタウロスに後2メートルと接近したとき・・・


「斧右から左なぎ払い」


その声に従いまだ戦斧は目の前に来ていないのにリンはその場で高く飛ぶ。
その後を先ほど同様戦斧が空振りし返す刀でミノタウロスが空中にいるリンへと斧を振るおうとしたとき
再びミノタウロスの残りの目に矢が突き刺さった。
ミノタウロスが苦しんでいる中、空中に飛んだリンはそのままミノタウロスの頭に剣を振り下ろす。
リンはその小さな身体からは想像の出来ないほどの膂力でミノタウロス頭をかち割った。
ミノタウロスは最後に断末魔の悲鳴を上げ、崩れ落ちるように地面へと倒れていった。
2人はそのままミノタウロスの死亡を確認するとすぐにこちらに戻って来た。


「いかがでしたか?」「どうでしたか?」


心配そうな面持ちでそう語りかけられる。


「2人共とても凄かったよ。強くなったね」


俺はそう言うと2人の頭を撫でる。
撫でられている姿を見ると2人は本当に年端もいかない少女に見える。
この二人が自分の何倍も大きいミノタウロスを討伐するなんて本当に驚きだ。
2人が頭を撫でられ気持ちよさそうにしていると・・・


「今回の戦闘はギリギリ合格点を上げましょう。あまり調子に乗らないように。拠点に戻ったら一度2人で熊五郎とゴブ朗先輩やポチ先輩などと組み手を行ってみなさい。先をいくら読もうが回避できない攻撃というものを教えて貰えますよ」


そんな攻撃があるのか・・・
俺はまったく当てられる気がしなかったんだが・・・
俺は2人を撫でる手を見るエレナの視線が痛かったので撫でるのを止めミノタウロスの死体の回収に向かった。


ミノタウロスを回収しさらに奥に進もうとしたのだが広場を抜けた先の少し開けた場所で行き止まりにあってしまった。
どうしよう・・・ミノタウロス部屋は外れだったのだろうか?
俺が辺りを見渡しながら他に入り口がないか探しているとエレナが何か淡い光を放つ水晶のような手のひら大の球を持ってきた。
ん?これを持てって?何かあるのだろうか?
俺がエレナから球を受け取ると球から何か魔力のようなものが身体に流れてきた。
なんだろう?暖かいな。
俺はそのまま受け取った石で暖を取っていたら数分後魔力の流れが止まってしまった。
魔力で光っていたのか先ほどまで淡い光を放っていた石も今ではただの黒い丸い石だ。
一体何だったのだろう?
すると突然脳裏にスキルブックが更新されましたと浮かんだ気がした。
俺は驚いて辺りを確認するが特に変わった様子はない。
あの石が原因かな?
俺は急ぎスキルブックを開いて確認すると新しく付与というスキルが増えていた。
初期値500と召喚並に高い、恐らく有用なのだろう。
だがlv10まで取得すると5000ポイントも消費してしまうので今はそこまで余裕がない。
しかしスキルブックは更新が出来るのか、これはなるべく更新していった方が良いだろうな。
俺はエレナに先ほどの石がなんだったのか問いただす。


「あれはこのダンジョンのコアです」


ダンジョンコア!?
あの壊したら駄目なやつか?
どうしよう・・・今床に転がっているのは明らかに役目を終えたただの石だ。
これは怒られるな・・・・


「大丈夫です、禁止されているのは破壊することだけですので問題ありません。元の場所に戻しておきますね」


それは屁理屈なのではないのだろうか?
ただやらかしてしまったのは確かなのでバレないことを願うしかない。


どうやらここがダンジョンの最深部のようで、そうこうしていると後ろからモーテン達が現れた。
俺達より遅れて来た事を悔しがっているようだ。
別に競争していた訳ではないのでそんなに落ち込むことはないだろう。
また機会があれば一緒にダンジョン攻略をやろう。
俺達はそのまま一緒に転移でアルカライムの外まで転移した。


街に入り早速ギルドに本日収集した魔物の素材を売りに行く。
拠点の開発が順調に進んでいるので早く職人を雇いたいのだ。
俺達がギルドの門を潜ると受付の前が何やら慌ただしく揉めている。
何事だろうか?
俺達が受付に近づいているとそこには見覚えのある顔がいた。


「早く!!早く探してください!!お金ならいくらでも出しす!!見つけてくれた人にはさらに謝礼も出します!!お願いです!!誰でも良いので助けてください!!」


そこにはザックさんが血相を変えて受付の人に迫っていた。
ただ事ではなさそうだ、いったいどうしたというのだろうか?


「ザックさん!!」


俺が声を掛けるとザックさんが振り返り俺を見つけた瞬間凄い勢いでこちらに駆けてきた。


「ケンゴ殿!!あぁ良かった、ようやく見つかった!!お願いします手を貸してください!!もうあなた方に頼るしか私達には方法がないんです!!お願いします!!」


かなり焦っているようだ、ザックさんらしくない。


「ザックさん落ち着いてください。いったい何があったんですか?」
「アンナが!!アンナが居なくなってしまったんです!!どれだけ探しても全然見つからない!!お願いします!!助けてください!!」


俺はそれを聞き目を見開き驚愕した。
アンナちゃんがいなくなっただと・・・?



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