異世界をスキルブックと共に

気のまま

奴隷商

ギルドマスターの部屋を出た俺は受付の前にエレナを迎えに行った。
さすがにもうカスミちゃんは離れていることだろう。
だが俺の期待を裏切るように受付前に行くと人だかりが出来ていた。
今度は何事だろうか?


「なんでわかってくれないの!?あの男は危険なの!!あの男の側にいるといつかエレナちゃんが大変なことになるよ!!もう二度とあの男と関わらないことを約束して!!」
「あなたも何度言えば理解するんですか?ケンゴ様以上の存在などこの世界にはいないんですよ?それを危険などと巫山戯た事を・・・・もしもケンゴ様聞かれでもしたらどうするつもりですか?殺しますよ?」


あぁ怖い、
いつも通りエレナのセリフは俺には恐ろしく聞こえる。
本当はもっとオブラートに包んで話してると信じたい。


「はいはい、いい加減にエレナもその辺でやめて次に行くよ?」


俺は人だかりに近づきながら声をかける。


「ッ!!」
「ケ、ケンゴ様・・・まさか今の話を聞いていましたか?」
「いや、今来た所だから。何の話をしてたの?」


触らぬ神に祟りなしである。


「いえ、他愛のない会話をしていただけですので気になさらないでください」
「そう?じゃ次に行こうか」


俺たちはそのまま集まっていた人をかき分けギルドの入り口に向かった。
すると目の前に俺たちを阻むようにカスミちゃんが飛び出してきた。


「エレナちゃんから今すぐ離れて!!」
「カスミ!!あなたは本当に・・・」


カスミちゃんには1回声を掛けただけなのにもの凄い嫌われようだ。
何かあったのだろうか?


「エレナは少し下がっていて。それでカスミちゃん、急にエレナから離れろとはどういうことかな?」
「あなたが危険だからです。このままだとエレナちゃんが不幸になることはわかりきっています!!」
「根拠はあるのかな?俺はエレナを不幸にするつもりはこれっぽっちもないよ?」
「ッ! 私の勘です!!あなたは何か隠しています!!そんな怪しい人の側にエレナちゃんを置いてはおけません!!」
「話にならないね。カスミちゃんは私に根拠のない難癖をつけている上にエレナの気持ちを蔑ろにし自分も気持ちを押し通そうとしているよね?なんでそんな人の話を私達が聞かなければいけないんだい?」
「・・・ですがあなたは絶対に危険なんです・・・・」
「そうだね、危険かもしれないし危険じゃないかもしれないよ?エレナ私は危険か?」
「いえ、危険ではありません」
「ほらね?人によって感じ方は違うしまず私達に話を通したいのであれば次は私達が納得するだけの根拠や理由を用意してから話にきてね?」
「お前がエレナちゃん何かしたんだ!!あんなに優しかったエレナちゃんが私にこんな冷たいはずがないの!!」
「それも根拠のない言いがかりだね?」
「ッ!!もういい!!いつか絶対にエレナちゃんお前から取り戻してやるからっ!!」
「そもそもエレナは君の物じゃない気がするが・・・次回会えるのを楽しみにしているよ」


そういうとカスミちゃんは涙を流しながら走り去っていった。
悪いことをしたかな・・・
カスミちゃんはエレナのことを思って行動しているのはわかるんだが、俺がエレナに危険な事をする予定は今のところ特にない。
カスミちゃんももう少し人の話を聞くとエレナとの関係も改善すると思うんだけどな。
まぁあの様子だとまたいずれ現れるだろうし次回はなんで俺を警戒しているのかもう少し話を聞いてみよう。
俺はカスミちゃんが走り去っていった方を見ながらギルドを後にした。




ギルドを出た後俺はエレナの案内のもと奴隷商の所に来ていた。
目の前には他の建物と変わらない普通のお店がある。
イメージとは違うが奴隷商は法律でちゃんと守られた普通の商売らしい。
取りあえずどんなものかわからないので入ってみよう。


店に入ると机とテーブルがあり奥にステージがある簡素な作りだった。
俺が辺りを見渡していると奥から1人の男が出てきた。


「いらっしゃいませお客様。本日のご要望をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「奴隷の購入と下見に来ました」
「畏まりました。ではどのような奴隷をご希望ですか?」
「街を作る際に必要なスキルや技能を持った人材を探しています」
「畏まりました。見繕って参りますのでこちらで少々お待ちください」


店主はそう言うと奥に消えていった。
取りあえず俺たちはどんな人材が来るのか期待しながら待っているとステージの方から7人程の人種が端から順に現れた。
中には尻尾が生えた人も居る。
あれが獣人だろうか?気になる。


「お待たせしました。端から建築、土木、鍛冶、錬金、服飾、農耕、石工のスキル、技術を持つ人間です。金額は金貨5~12枚で全て借金奴隷になります。どうぞごゆっくりご覧ください」


うん、出来れば全員購入したい。
だが俺の全財産は山賊から押収した金貨12枚と銀貨と銅貨が少々在るだけだ。
昨日買い物で金貨3枚消費して残り約9枚ほどしかない。
使いすぎたかな?
一家族が1ヶ月金貨3枚あれば十分暮らしていけるらしいからかなりの量を購入している。
まぁ必要経費だからしょうがないか、今回は購入は1人だけで我慢しよう。
俺は端から順に鑑定を掛けながらじっくり選んだ。


そして俺は建築のスキルを持つ男性を購入することに決めた。


「この人族の男性を購入ということでよろしいですか?」
「はい、お願いします」
「ではこの男性の購入金額は金貨6枚となります。借金奴隷ですので現在の最低賃金から1年程の労働となりますがよろしいですか?」
「労働期間が決まっているのですか?すみません、実は今回初めて奴隷を購入するもので、申し訳在りませんが奴隷について少し教えて頂けませんか?」
「これは配慮が足りず申し訳在りませんでした。まず奴隷には2つの種類があります。借金奴隷と犯罪奴隷です。2つとも名前の通り借金を払えず奴隷になった者、犯罪を犯し奴隷になった者を指します。2つの違いは返済がお金かそれとも刑期かという事だけです。借金奴隷は購入された金額の倍額を購入者に支払うことで開放されます。ですが実際賃金が払われる事は少ないので労働中は1日の最低賃金で雇われている状態になりその労働賃金が購入金額の倍額に到達すれば解放されます。次に犯罪奴隷は犯した犯罪の重さで奴隷になる期間が決まりその期間を満了することで解放になります。基本的には犯罪奴隷の方が奴隷期間は長くなります。又両奴隷を購入後は奴隷の衣食住の保証と税金の支払い義務が生じますのでお忘れなきようお願い致します。以上ですが何か質問はありますか?」
「いえ、大丈夫です。ありがとうございました」
「では再度お尋ね致します、この男性の購入金額は金貨6枚となります。借金奴隷ですので現在の最低賃金から1年程の労働となりますが購入されますか?」
「はい、購入します」
「御購入ありがとうございます。それでは契約を結びますのでこちらの部屋にどうぞ」


部屋に入ると既にテーブルには契約書が用意されていた。


「それではこの契約書を読んで頂き署名をお願い致します。主に奴隷の保証や税金、権利について書かれています。その後奴隷紋を刻む際に血を一滴ほど頂きますのでよろしくお願い致します」


契約書を読むが言われたとおり奴隷について無難な事が書かれていた。
俺は署名し言われたとおり血を用意するためナイフを取り出した。


「それではこちらの男の背中に奴隷紋がありますのでそちらに血を一滴お願い致します。その後奴隷紋とパスがつながりましたら奴隷契約は終了です」


パスとはなんだろうか?
俺は取りあえず奴隷紋に血を垂らす。
するとホークの雛たちと従属契約をしたときに感じた繋がりのようなものを感じた。
これがパスか。


「パスは確認出来ましたか?それではこれで奴隷契約は終了です。今回当店で購入して頂きありがとうございました。またのご利用をお待ちしております」


そういうと店主は深く頭を下げている。
これはもう帰っていいのかな?
俺はエレナと建築スキルの男を伴い出口に向かった。




だが店をでる瞬間何故か後ろ髪を引かれた気がした。
いったいなんだろうか?
後ろを振り返るが部屋を出て未だに頭を下げている店主がいるだけだ。
気のせいだろうか?最後に辺りを見渡し店を出ようと思った瞬間一つの扉が目に入った。
なんだろう?あの扉が異様に気になる。
俺が扉を見ていると店主が声をかけてきた。


「お客様は直感系のスキルをお持ちですか?」


どういうことだろうか?


「いえ、持っていませんよ」
「それは失礼致しました。たまに感が良い方が同じ反応をするので確認したかっただけですので」
「そうですか、それであの扉には何かあるんですか?」
「特に隠している訳ではないですがあの向こうには訳あり奴隷が収容されています」


訳ありか・・・・気になるな。


「少し見せて頂くことはできませんか?」
「かまいませんよ。よろしければ御購入もご検討ください」


俺は店主に連れられその扉を開いた。
開いた瞬間鼻刺すようなツンとした刺激臭がした。
これは汚物の匂いか?
俺は眉間に皺を寄せながら周囲を確認した。
すると部屋には2つの檻ががあった。
手前の檻には獣人の子供だろうか?15~16歳ぐらいの男女が6人収容されていた。
だがこの子達は全て身体の一部、手や足、目等が欠損していた。
これが訳ありか・・・
さらに奥の檻には2人の女性?が収容されていた。
だがこの2人は手前の檻より酷い。
手や足、目や耳に至るあらゆる場所が切り削ぎ落とされていた。
しかも常に放置しているのか汚物に塗れ所々肉も爛れ腐っている。
あまりにも状態が酷い。


「この2人は呪われているんですよ」


呪い?まさかこの世界にはそんなものがあるのか?


「どういうことですか?」
「この金髪の娘の方は触れるとスキルがなくなります、完全になくなるので以後使用することはできません。さらにそこの水色の髪の娘は死を運んできます。この娘に死ぬと言われた者は全員死んでいます。例外はありません。一応動いたり声が出せないように「処理」していますが危険なので余り近づかないでください」


ふむ、呪いか・・・
鑑定を掛けるが特に変わった所はない、いや金髪の子のスキルが多いのが異常か?やたら種類が多い。
俺はこっそりスキルブックを開き鑑定をLV10まで取得する。
最近拠点の収穫で日に500ポイント以上貯まるからポイント消費をあまり気にしなくなったな。
森に居る魔物は枯渇しないのだろうか?
俺は拠点に帰らないといけないことを思い出しつつ2人に鑑定をかけた。
すると先ほどはステータスに記載されていないことが表記されていた。


ユニークスキルか・・・





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