異世界をスキルブックと共に

気のまま

冒険者ギルド3

目が覚めると目の前にテーブルがあった。
そうか、昨日久しぶりのお酒に酔い潰れてそのまま寝てしまったのか。
俺は二日酔いのせいか痛む頭を片手で抱えながら周囲を見渡す。
女性2人の姿が見えない。
どうやらヘレンさんとエレナはどこか別の場所で寝たようだな。
アドロフさん?アドロフさんは床で寝ている。もの凄いいびきだ。
俺はこの音で起きたと言っても過言ではない。
皆が起きるまで少し片付けでもするかな・・・
俺は椅子を立ち上がりまずはアドロフさんを部屋の隅に引きずることから始めた。


一時したらヘレンさんとエレナが起きてきた。


「あんた!!こんなところでいつまで寝てんだい!!さっさと起きな!!」


ヘレンさんがもの凄い勢いでアドロフさんを蹴飛ばしているが大丈夫だろうか?
だが肝心のアドロフさんは永眠したように微動だにしていない。
さらにエレナも見慣れた光景なのかそのまま朝食の準備に取りかかっている。
なんだろう?これがアドロフ一家の日常なのだろうか?
恐ろしすぎる。
いつかエレナが結婚する時がきたら旦那さんに床でだけは絶対寝るなと忠告しよう。
俺はそう心に決め静かに朝食が出来るのを待った。


俺はエレナが作った朝食に舌鼓を打ちながら昨日の事を思い出していた。
ヘレンさんが作った豪勢な食事にアドロフさんのお酒、とても美味しかった。
それにエレナとの関係もわかった。
どうやらヘレン夫婦は以前冒険者をしていたらしくエレナの父親のカシムと一緒にパーティを組んで冒険していたようだ。
カシムの死に際にも立ち会ったらしくカシムの魔石を剥ぎ取りお守りとして持たせていたのもアドロフさんだった。
エレナの事は生まれた頃から知っているらしく、カシムが死ぬ前から娘みたいに思っていたとのことだ。
突然カシムが死んだ後はエレナを引き取り成人まで一緒に暮らしていたらしい。
成人後はエレナは父親同様冒険者になり家を出たがかなりの頻度で帰ってきていたみたいだ。
エレナにとっての実家はここなんだろうな・・・
そう呟いたら急にヘレン夫婦大声で泣き出した時は驚いた。
エレナはとても愛されているようだ。
これはカシムに教えてやらないとな・・・
俺は喜ぶカシムの顔を想像しながら食べ終えた食器を片付ける為に立ち上がった。


その後俺たちはヘレン夫婦にまた遊びに来ることを約束し家を出た。
取りあえず奴隷商の所に行くことは決まっているがその前に俺たちは冒険者ギルドに向かった。
以前穴だらけだった掲示板の確認とダンジョンの情報を仕入れる為だ。


ギルドに着き早速中に入るともの凄い喧騒が聞こえてきた。
何処が騒がしいのか見渡すと掲示板の前にもの凄い数の人が群がっていた。
昨日の2倍以上いるんじゃないか?
しかもあの中に入って依頼票を選び掴んで来るのか・・・
うん、無理だな。
俺は早急に依頼選びを諦め受付でダンジョンの情報を仕入れることにした。


受付には何人かの見目麗しい女性が座っていた、よくこんなに綺麗何処を集められたものだ。
俺は感心しながらある人物を探すために周囲を見渡す、
よし今日はカスミちゃんはいないようだな、よかった・・・


「エレナちゃん!!」


本日も又エレナがカスミダイブで吹き飛んでいった・・・
俺は次もカスミちゃんが俺のほうに飛んで来ないこと、そしてエレナの冥福を祈りながら受付に並んだ。


受付嬢に選んだのはもちろんリアナさんだ。
この人を選んでおけば間違いないだろう。


「おはようございます、ケンゴ様。本日のご用件はなんですか?」
「今日はダンジョンについて知りたくてきました」
「ダンジョンですか?この街の周辺のダンジョンの事でよろしいですか?」
「はい、どのような物があるのか教えてください」
「わかりました、この街にはE、B、A級のダンジョンがあり定期的にスタンピードが起きないように各冒険者がダンジョンを攻略しています。さらにダンジョンは最深部にダンジョンコアという核がありますが余程の事がない限り破壊は禁止されています。何故かというとダンジョンから取れる魔石や素材、宝物などは街の産業や生活に活用されておりコアが破壊されるとこれらが全て取れなくなるからです。各ダンジョンの明細はそこの本棚にある本に記載されていますので攻略にチャレンジする際は必ず確認していくことをオススメしています。またE、B級は最深部まで攻略されていますがA級は未踏破なので危険度が高く攻略はオススメ致しません。ケンゴ様はまだ登録仕立てのF級なので行かれるのならE級からお試ししてはいかがでしょうか?」
「わかりました、少し情報を確認して考えます」


うん、わかりやすい。相変わらず優秀だ。次回もまたお願いしよう。


「あっそれとギルドマスターからケンゴ様が来たら話を聞きたいから呼ぶようにと言われているのですがお時間を少し頂けませんか?」


ん?なんだろう?俺何かしただろうか?
俺は考えても何も浮かばないので取りあえず肯定の意思表示をする。


「ありがとうございます。ではギルドマスターに話を通してきますので少々お待ちください」


俺はリアナさんを待つ間振り返りエレナを探すが未だカスミちゃんを引き剥がすことに難航しているようだった。
さすがに可哀想なので手を貸そうとエレナに近づこうとしたら。


「お待たせしました」


いやだから全然待っていない。
先ほど階段の方に歩いて行かなかったか?
俺が振り返った瞬間全力で走ったのだろうか?それにしても早すぎる。
俺はリアナさんの早さに驚愕しつつ促されるままリアナさんの後についていった。


その部屋は机以外ほとんど何もない部屋だった。


「おはよう、ケンゴさん急に呼び出して申し訳ないね?」


俺が部屋に入るとすぐにその机の前に座る男が話掛けてきた。


「いえいえ、こちらも特に急ぎの用事は在りませんでしたから。それで私に話したいこことは何でしょうか?」
「まずは昨日のグレーターベアの話について詳しく聞かせてくれるかな?森の外周部に出たというなら一大事だしね?」


何がそんなに一大事なのだろうか?


「話すも何も森の外周部でエレナさんが熊に襲われていたから助けただけですよ?」
「簡単に言うね?詳しい場所はわからないかな?それとなにかグレーターベアが出た証拠はあるかな?」
「この街から東に3日向かった先に村があると思いますがそこからさらに東に2日行くと熊が使っていた巣穴がありますよ。それと証拠はこれで良いですか?」


そういうと俺は袋から熊の毛皮を出した。
するとクリフォードが目を見開き毛皮を見ている。
そんなに欲しいのだろうか?穴空いてるよこれ。


「それはアイテムボックスなのかい?」
「いえ違いますよ。他の方からも聞かれましたがこれは私が作ったちょっと見た目より多く物が入るただの収納袋ですよ」


するとクリフォードはさらに眉間に皺を寄せ睨んできた。
なんなのだろうか?怖いからやめて欲しい。


「それが本当ならグレーターベアより大事件だよ。君はその収納袋の価値を理解しているかい?アイテムボックスというスキルは召喚された勇者しか持ち合わせていないスキルだ、だが誰もそれを再現しようとしなかったと思うかい?現在勇者のアイテムボックスを復元又は類似品を作ることは不可能だということはこの世界の常識だ。その常識を覆す物を君が持っている、しかも君が作った?にわかには信じられないね?」
「別に信じて貰わなくても結構ですよ。それにいろいろ教えて頂きありがとうございます。これからはあまり人前で多用しないようにしますね」
「多用しなくても使えばその存在が世間に知れるのは時間の問題だと思うけどね?伝説の空間魔術が使われているの誰が見ても一目瞭然だ。それが知られればどんな手を使っても手に入れたいと思う輩も多いだろうね?」
「ご忠告ありがとうございます」
「それに僕が誰かに話すとは考えないのかい?」
「考えませんね。メリットが少ないですし」
「へーなんでそんな考えに行き着いたか教えて欲しいものだね?」
「お断りします」


なんとなくこの人にはあまり多くを話さない方がいいような気がする。


「それは残念だね、それとこのグレーターベアの毛皮だけどなんで穴だらけなのかも教えてくれないのかい?」
「はい、お断りします」


これは俺がビビって角ミサイルを乱射してしまった黒歴史だ、墓まで持って行く予定だ。


「そうかー、なら最後に一つだけ、僕はこの街が大好きだ。この街に害を為す輩は何人たりとも許すつもりはないからね?」
「覚えておきます」


俺はそう言うと頭を下げ部屋を出た。

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