異世界をスキルブックと共に

気のまま

武器店の夫婦

俺たちは冒険者ギルドを出ると買い出しより先に守衛所に向かった。
冒険者証も作成したので入街の本手続きをするためだ。
忘れて奴隷にでもなったら堪らないので憂いは早急に処理しておく。


「ん?なんだお前達か何か用か?」
「はい、冒険者証が用意できたので本手続きを行いに来ました」
「なんだと?もう出来たのか?ちょっと見せてみろ」


俺は守衛の人にカードを渡す。


「本物のようだな、いったいどうやったんだ?冒険者証は発行に最低1日はかかるから本手続きの期限は3日あるんだぞ?お前らが今まで来た奴らの中で最速だ」


ん?冒険者証発行に1日もかかるのか?リアナさんは15秒で持ってきたぞ?優秀すぎる。
間違いなく最速は俺たちじゃなくリアナさんだ。


「まぁ何にせよ約束通り持ってきたんだ、本手続きをしてやろう。ようこそアルカライムへ。お前らを歓迎しよう」


良かったこれで問題はなくなったな。


「あぁそれと最近この街で行方不明になる奴が多いから気をつけろよ、情報も少ないから何でもいいから何かわかったら教えてくれ」


あれ?問題はなくなったんだよな?
俺は余計なことを言った守衛を睨みながら街の繁華街に向かった。


繁華街に着くとそこは人と物で溢れていた。
街道沿いにはいろんな屋台が並びその奥にはさらに沢山の商店が並んでいる。
これは買い出しだけでも一苦労しそうだな。
俺は辺りを見渡しながら軽いため息を吐いた。


俺は早速エレナと2手に分かれ買い出しを始める。
エレナに服の買い出しを頼み、俺は食料の担当だ。
もちろん俺に服のセンスを要求されても答えられないからこの配役になった。
俺は取りあえず店で目につく種が取れそうな野菜や果物を買い漁った。
見たこともない物が多くほとんど鑑定に頼りながら購入していった。
保存食として堅いパンや干し肉なども購入している。
残念だったのが植物の苗関係が一つもなかったことだ。
どうもそれを専門に育てている村に買い出しに行かないと厳しいらしい。
最後に調理しやすいように包丁関連や鍋などの調理用具も買った。
これで拠点の皆も少しは旨いものが食べれるだろう。
そんなことを考えながらふと視線を上げるともう既に日が暮れそうになっていた。
拙い、早く合流地点に行かないとエレナに怒られる。
俺はエレナと合流するために駆け足で目的地に向かった。


合流地点には既にエレナが待っていた。
これは拙い絶対に怒られる。
俺はエレナの様子を伺いながら声をかけた。


「ごめん、時間に遅れたね。待った?」
「いえ、私も今さっき来たところです」


あれ?怒っていないな・・・まさかこれが神の幸運スキルの効果か・・・
俺はスキルの効果に驚きながら最後の目的地である奴隷商の所に連れて行って貰うべく話掛けようとしたら・・・


「あの、ケンゴ様大変厚かましいお願いなのですが、実は一カ所行きたい場所があるのですが寄っていってもよろしいでしょうか?」


なんだ行きたい場所があったのか、幸運スキルは相変わらず働いてなかったな。
だがなんでもっと早く言わなかった、もう日が暮れるぞ?
奴隷商は明日行けば良いし早く日が暮れる前に移動しよう。
俺は日が暮れてしまう原因が自分にあることを誤魔化しながらエレナの後を追った。


着いた先は武器店だった。
そうか、ついにエレナも土ショートソードを卒業したくなったのか・・・
ごめんな、今まで土を持たせてて・・・
俺は感傷に浸りながらエレナの後に続き店に入った。


店に入り辺りを見渡すと店の中一面に武器が飾られいた。
剣や槍、斧等数多くの種類が置いてある。
凄いな、この壁に掛かっている斧とか誰が振り回せるのだろうか?
俺の身長ほどもある大きな斧を見上げながら鑑賞しているとエレナがカウンターの横から奥に入ろうとしていた。
おいおい、いくら人がいなくても奥の居住部分に勝手に入るのは拙いのではないか?
俺が注意しようと近づくと・・・


「こんばんわ、ヘレンさん今お忙しいですか?」


ヘレンさん?誰に話しているのだろうか、こちらからは全然見えない。
するとカウンターの奥から小さな女の人が出てきた。


「あぁ?うちは今日はもう店閉まいだよ!うちの武器が欲しけりゃまた店が開いてるときに・・・ってエレナちゃん!?エレナちゃんなのかい!?」


そういうとヘレンさんらしき小人はエレナに突進していった。
なんだろう、この町の挨拶はまず体当たりから始めるのだろうか?


「あぁ!エレナちゃん無事で良かった!!しかしなんで連絡の一つも寄越さなかったんだい?それに私達がどれだけ心配したと思っているんだい?もう一ヶ月も何も連絡がないしギルドに言っても一向に探そうとしないから旦那と一緒に探しに行く話をしていたところだったんだよ!!だけど本当に無事で良かった」
「ヘレンさん・・・本当にご心配をお掛けしました。手紙を送ろうと思ったんですが中々難しくて・・」
「あぁいいよそんなこと!エレナちゃんが無事に帰ってきてくれたんだ!それだけで十分さ!!そうだ!!あんた!あんた!!エレナちゃんが帰ってきたよ!!」


するとカウンターのさらに奥から何か崩れる音と共にもの凄い勢いで走ってくる音が聞こえた。


「何処だ!?エレナちゃんは何処にいる!?」


目の前に現れたのは2メートルを超える程の大男だった。
大男は辺りを見渡しエレナを見つけたのだろう、もの凄い勢いで突進しヘレンさんごとエレナを抱き上げてしまった。
俺がその突進式挨拶に戦々恐々としていると、大男が急に泣き出した。


「ぐぅぅぅ エレナちゃん無事でよがった!!本当によがった!!俺は一ヶ月も連絡がないからもう駄目かと・・・」
「あんた!!碌でもないことは言わないよ!!」


ヘレンさんが大男の腕を叩く、うん、いい音が鳴った。


「うぐっ  すまねぇヘレン。 だがほんとによがった」
「あの・・アドロフさん・・苦しいです・・・」


ようやくエレナは大男から解放されたが恐らく一時動けないだろうな。
大男が突進したとき凄い音がなったしな。


「それでエレナちゃん今まで何処で何をしていたんだい?」
「実は森の探索をしていた時にグレーターベアに襲われて・・・」
「「グレーターベアだって!?」」
「はい、それで怪我をしてしまい危ないところをある方に助けて頂いて・・・その後もその人の元で療養していたのでヘレンさん達に連絡ができなかったんです」
「それで怪我はもう大丈夫なのかい?」
「はい、その人に傷も残らぬ程綺麗に直して頂きました。」
「ならその人はエレナちゃんの命の恩人だ!何かお礼をしなきゃいけないね!それでその人は何処にいるだい?」
「はい、今こちらに一緒に来て頂いています」
「「?」」


ヘレン夫婦は辺りを見渡し俺を探しているようだがどうも見つけられないようだ。
俺は朝の失態を繰り返さないため少し離れて声を掛けた。


「初めましてケンゴといいます。怪我の療養の為とはいえ長くエレナさんを引き留めご心配をお掛けしたこと誠に申訳ありませんでした」


俺が急に話しかけたせいか夫婦が目を見開き驚いている、大丈夫かな?


「あんた!!いったい何処に隠れていたんだい!!ビックリするじゃないのさ!!驚かすんじゃないよ!!それにあんたがエレナちゃん恩人だね?エレナちゃんを助けてくれて怪我まで治してくれたんだ、
連絡の1つや2つで文句なんか言わないよ!!あぁ今日は本当にめでたい!今日は腕に頼をかけてご馳走を作るよ!!」
「おぉ!!なら俺はとっておきの酒を出すぞ!!兄ちゃん呑めるよな?」
「はい、ですが私も参加してよろしいのですか?」
「あぁ!かまわねぇ!あんたにお礼をしなくちゃなんねぇし今日は祝い事だ!!朝まで呑むぞ!」
「ではご相伴に与ります」


その晩俺たちはエレナの帰還を祝い遅くまで語らい飲み明かした。

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